戦い終わって
ハクは祭壇の前でアカネを優しく抱き上げている。
アカネの髪は、血のような赤い色から、昔のような美しい若草のような緑の色に戻っていた。
アカネがゆっくり目を開ける。
アカネの透き通るような緑の瞳の目が、ハクを見上げる。
「・・・ハクお兄ちゃん?」
静かな声音だった。
ハクは微笑みながら、アカネの顔を見つめている。
アカネが目を覚ましたことに気づいたヴィオーラが、飛び跳ねるように駆け寄り、満面の笑みを浮かべながらぎゅーっと二人に抱きついてくる。
アカネはそんなヴィオーラの頭を、ゆっくりやさしく撫でていた。
呂尚は魔王とピエールさんに倒された蚩尤を傍で見ていた。
斬血丸の解呪でかなり体力を消耗したのか、まだ足元がおぼつかない状態だったが、腕を組み感慨深そうにしていた。
「昔の全盛期のオレと仲間ですら倒せなかった蚩尤が、まさかくたばるとはなぁ。あの時に散った仲間もこれで浮かばれるかなぁ」
呂尚が数百年前に蚩尤と対峙したときは、呂尚の仲間の道士数十人がかりで、多数の犠牲を払いながら術式の終了までなんとか足止めをしただけだった。
それをたった二人で・・・あっという間に・・・
「蚩尤の首を一刀両断かよ。ただ者じゃないとは思ってたけど・・・パねぇな『天地剣聖』」
丸太のような蚩尤の首は、鮮やかな切断面で斬られている。あまりに滑らかなので心底肝が冷える程だ。
剣の技量においては、天にも地にも並ぶ者無しという、ピエールさんの二つ名の由来を思い出す。
「剣技は勇者グロウリオンをも超えると聞いていたが、これを見たら納得出来るな。しかし・・・まさか料理人をやっているとは思いもよらなかったがなぁ」
当のピエールさんは魔王の前にいた。
「私の娘を助けてくださり、ありがとうございマース」
ピエールさんが、魔王に向かって深々頭を下げる。
「顔ヲ上ゲテ下サイ。ミリハ私ノ愛弟子。師トシテ当然ノ事ヲシタマデデス」
魔王は少し照れくさそうにしている。
そこにミリが飛び込んでくる。
「お父さんもマオさんも、ものすごーーーーーーく強かったかな!みんなに自慢できるかな!」
ミリは、にぱーっと笑う。
アオイは、少し離れた場所から、その光景を見ていた。
「・・・感謝はしてるよぉ『魔王』」
どこか悔しそうだった。
「ピエールさんってば・・・料理も出来て、しかもあんなに強くて・・・かっこ良すぎだよねぇ」
クリスティナは、顔を真っ赤にしていた。
ほてった顔に手のひらを当ていやんいやんしている。
クロクロは姉のそんな姿を見ながら、くすくすと珍しく笑っていた。
ドランはいつもの様に、ピエールさんが破壊した蚩尤の武器の破片を集めている。
「この合金はすごいのぉ・・・ここが魔力を・・・ほうほう・・・ここがこうなって・・・うほほほほほほほほほ」
うん・・・碌な事にならない事を保証しよう。
精霊王達は、何故か筋トレを始めていた。
まぁ3日で飽きるだろう。
オールタイム血に飢えたエルフ娘、アカネが元に戻りました。




