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勇者はいってます。  作者: 夢見創
七章目 大騒ぎ、縦横無尽
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強すぎる二人

 蚩尤は目の前の美しい少女に、なにか危険を感じたのか、躊躇なく武器を大きく振りかぶり攻撃を仕掛ける。

 だが魔王は左手だけで、その攻撃を難なく受け止める。


 蚩尤は華奢な少女が自分の攻撃を片手で受け止めるという、そのあり得ない事象に4つの目を見開き驚いている。


「コチラカラモ行クゾ」

 魔王は右手に魔力を集め、それを蚩尤の腹部に叩きつける。

 重機でたたきつけられたような、やたらと重い音とともに、蚩尤が7、8メートルほど後ろに吹き飛ばされる。

 倒れることはなかったものの、蚩尤の顔は苦悶に歪んでいる。

 魔王の魔力を叩きつけられた部分は、黒く焼け焦げ血がとめどなく噴き出していた。


 蚩尤は自分の目の前の少女が、尋常ではない敵であることを認識する。


「フム・・・硬イナ」

 魔王が蚩尤を見据えながら呆れるように言う。


「私も戦いマース」

 ピエールさんが、音もなく魔王の横に現れる。

 ピエールさん手には何時もの包丁ではなく、斬血丸が握られている。


 魔王は頷く。


 そして魔王とピエールさんは、ツーマンセルで蚩尤の懐へと飛び込んでいく。

 魔王の手には、いつのまにか黄金の杖が握られていた。


 魔王は杖に膨大な魔力を乗せ、蚩尤に叩きつける。

 蚩尤はその攻撃を召喚した盾で防ごうとするが、力負けをして盾ごと弾き飛ばされる。


 ピエールさんは斬血丸を、卓越した剣技で操る。

 あまりにも剣速が早いため、剣筋がまったく視認できない。きらめく光が見えるだけである。

 きらめく度にライトレイピアでも傷一つ付かなかった蚩尤の武器が、まるで大根か牛蒡のように綺麗に切断され破壊されていく。


 蚩尤は六本の腕に次々に武器を召喚し必死に対抗するが、魔王に武器を弾き飛ばされ、ピエールさんに武器を斬られ、次々に失っていく。

 二人の勢いを止めることは出来ず、蚩尤はじりじりと後ろに下がっていく。

 たった二人だけで、ハク達が五人がかりでも敗北した相手を圧倒している。




「強いとは思ってましたけど・・・」

 クリスティナが二人の戦いをみて驚愕している。


「世界最強の一角『魔王』と、人類史上最強の剣士『天地剣聖』だからな」

「ですわね」

「やっぱりぃ?」

「じゃなあ」

 クリスティナ以外の連中は、彼らの正体に気づいていたらしい。

 ただ全員痺れが取れず、床にイモムシのように這いずったままなので格好はついていない。


「えー気づいてなかったの私だけ?」

 クリスティナは、まだ痺れが取れず動けない体のまま悔しがっていた。



『・・・ヤッパリ気付カレテイタノジャナ』

 モブ化している彼らの声を聞いて、魔王は心の中で思っていた。



 蚩尤は、魔王とピエールさんから距離を取るように、後方に跳ねるように飛び退る。

 そして着地と同時に、瞬時に魔法陣を展開する。

 武器が駄目なら魔法、戦法としては至極当然かもしれない。


『がぁ!』


 蚩尤の唸りとともに魔法陣が発動し、現れた無数の火炎弾が魔王とピエールさんに向かって放たれる。



 魔王は、その火炎弾にむかって、ただ手を前に向けただけだった。


 魔王の前に、虚ろな闇の(あぎと)が現れる。

 蚩尤の放った火炎弾は全て、その闇の顎に食われ虚空に飲み込まれていった。


「魔導ノ頂点タル我ニ、魔法ガ効クモノカ」

 魔王は静かに言う。



 蚩尤は気づく、魔王と共にいた剣士がどこにもいない。



「遅いデース」

 ピエールサンの声が蚩尤の真横から聞こえる。


 次に蚩尤が見たものは、自らの鮮血と眼前に迫ってくる床であった。


 そして蚩尤の視界は闇に飲まれ、再び光を見ることはなかった。



 ピエールさんは、チンという涼やかな音とともに、斬血丸を静かに鞘に収める。



 その横には、首を斬り落とされ倒れ伏した蚩尤の姿があった。

圧倒的である

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