最強・・・出撃
「まだか!呂尚!」
ハクが叫ぶ、もうそんなに長くは蚩尤を止めていられない。
致命傷は受けてはいないものの、クロクロ達の体力は徐々に限界に達しようとしている。
一人ドランが元気だが、あれはたぶん何か違う生き物だ。
「まだだ!もう少し耐えてくれ!」
呂尚が、汗を滝のように流しながら答える。
祭壇の前ではアカネは激しく身悶えているのが見える。
アカネも必死で抗っているのだ。
ハクは連続で光の銃弾を撃ち込む。
だが、やはり魔力の渦に阻まれ蚩尤には着弾しない。
これでは、時間稼ぎにもならない。
『ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおお!』
蚩尤が再び雄叫びをあげる、空気がビリビリと振動する。
一瞬、その声に当てられクロクロ達の動きが鈍る。
蚩尤は六本の腕を振り上げたかと思うと、旋風のように腕を回転させ、接近攻撃をしていたクロクロ達四人を一気に弾き飛ばす。
四人が体勢を整える前に、蚩尤を中心に東方圏独特の魔法陣が展開される。
「これは・・・」
クロクロが青ざめる。
「全方位魔法だ!」
ハクが術式を瞬時に読み取る。
精霊王達がハク達を守るように、あらん限りの防御魔法を使う。
エンは火柱、カイは水球、フウは旋風、ヘキは土壁、アンは闇穴、メイは光翼。
様々な属性の防御陣が出現する。
蚩尤はそれを見ながら邪悪な笑みを浮かべる。
次の瞬間、蚩尤の魔法陣が発動し、巨大な電撃がうねるように部屋の中を暴れまわる。
精霊王達の防御魔法はその圧倒的な力にあっけなく破壊され、ハクとクロクロ達は衝撃で壁の近くまで吹き飛ばされていた。
電撃が当たったのか、ハクを含め全員が痺れ動けなくなっている
精霊達も床に倒れ伏している。
ドランもさすがに電撃はキツいのか、同じように動けなくなっている。
そういえば、精霊王達がドランだけ守っていなかった気もする。
蚩尤は、動けなくなったハク達にはもう興味がなくなったのか周りを見回す。
そして、岩陰に隠れている二人の少女に気づく。
蚩尤はにたーりと笑うと、二人にゆっくりと近づいていく。
口からは、たらたらと涎を垂らしている。
その事に気づいたミリが恐怖に顔を歪ませる。
ヴィオーラは、何が起こっているのか分かっていないのか、きょとんとしていた。
「・・・くっ・・・二人になにをする気だ?」
ハクが、必死でもがき体を起こそうとするが、全身が痺れて動けない。
このままでは二人が・・・
「動け!僕の体・・・あの糞野郎・・・ミリに危害を加えたら、だだじゃおかない・・・・」
動けない我が身を呪いながら、アオイが厭忌の目で蚩尤を見ていた。
ふっと、蚩尤の前に美しい人影が降り立った。
美しく可憐な少女・・・魔王だ。
魔王が岩陰にいる二人の少女を守るように立ちふさがり、蚩尤の行く手を阻んでいる。
「我ガ弟子達ニ、手出シスルコトハ我ガ許サヌ」
魔王が凛とした表情で、蚩尤と対峙する。
ピエールさんは、その光景をじっと見ていた。
「呂尚さん。アカネさんの儀式はどのくらい進んでマース?」
「斬血丸の・・・呪いは・・・アカネちゃんから切り離した。後は・・・斬血丸が再び取り憑かないように・・・封印する・・・だけだ」
よほど強い呪いだったのだろう、呂尚は息も絶え絶えになっている。
祭壇の前のアカネも力尽き気を失っていた。
「じゃあアレは私が戴いても大丈夫デースね」
ピエールさんは、ひょいと縄を飛び越えると、祭壇の前で気を失っているアカネに無造作に近づいていく。
そしてアカネが握っていた斬血丸を、おもむろにガシっと握る。
「・・・なにを・・・やってるんですか・・・?」
呂尚が突然の事に驚く。
いまの斬血丸は、アカネから切り離され、次の宿主を探している状態だ。
うかつに触ると斬血丸の呪いが振りかかる。
ピエールさんは、その声を無視し、アカネから斬血丸を取り上げると、鞘から躊躇なく斬血丸を抜き放った。
ピエールさんの頭の中に斬血丸の声が響く。
『我は斬血丸、我に血を捧げよ、さすれば汝に力を与えん』
「うるさいデース。あなたは私におとなしく従えばいいのデース」
ゴッとピエールさんから斬血丸に怒気が送り込まれる。
『ぴぃぃいいいぃいいい!は・・・はい、貴方は僕のご主人様ですうぅうううう』
斬血丸は目の前にいる人間には、絶対に逆らえないことを悟った。
あまりの恐怖に、我から僕に変わっている。
ピエールさんが、斬血丸を正眼に構える。
「私の娘に危害を咥える者は、容赦しまセーン」
最強のお父さんが出撃する。
斬血丸、ピエールさんの下僕となる
ちなみに斬血丸で肉をさばくと、いい感じに血抜きされます|ω=)




