#9 快晴
「優也、そろそろレッスン終わる?」
「あーそうだね。じゃあみんなでご飯いこ!」
廊下に突っ立っていた私の耳に、学生の会話が聞こえる。
まずい。ここにいたらバレる……!
と思ったが、時すでに遅し。
「……あれっ……あのー、優也に何か用ですか?」
団体の一人が私に気付いて、声をかけてきた。
「え、いや、あの……」
「あっ、もしかして、優也のカノジョさん?」
「うわ、ちょーキレイ……やるねー」
勝手に話をすすめていく彼ら。
早くとめなくては!
「あの、私は……」
「……………何やってんの?」
背後から聞こえてきたのは、昨夜聞いた彼の声。
レッスンが終わり、ドアを開けた彼が、ドアの前でたまっている私たちを見回した。
「おー、優也!今から飯食いに行くから誘いにきたけど、お前カノジョ来てんなら、いーや!」
「だから、私は……」
「カノジョ?」
不思議そうな顔をした彼が、私のほうにゆっくり顔を向けた。
「えっ、香帆さん!?」
「なに、カノジョじゃねーの?」
「ばか。昨日ケータイ拾ってもらったんだょ」
なんかこの状況だと、私が彼に一目ボレして大学まで押しかけたみたいじゃん。
「………」
「あ、そういや昨日の天気予報、はずれちゃいましたもんね。わざわざ大学まで来てくれたんですか?」
「た、たまたまよ。たまたまこっちに用が……」
嘘モロバレだ。
昔から嘘が苦手な私に、彼は温かい笑顔をむけた。
「よかったら、昼ご飯一緒にどうですか?どうって言っても、学内で食べるだけですけど」
「…………」
就職してから、一人で食べることに慣れていた。
しかし誘ってくれた手前、断れない。
「いいよ」
彼と友達に囲まれ、外に出た。
覗くだけのつもりだったのに、帰れなくなってしまった。




