表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
moderato.  作者: 奏多
55/56

#55 春

季節は変わり、優也は4回生になり、私も新しい部下の指導に忙しくなった。




私が大学生だった頃は、4回生といえばもう回りの大多数が就職の内定をもらってて、例に漏れず私も黒いリクルートスーツとパンプスで勝ち得た憧れの会社での新しい生活に、思いを馳せていた。




たしか内定もらってからも、のんびりしていればよいものを、語学を磨くために外国一人旅とかいろいろ忙しくしてたっけ。




しかしやっぱり音大だからなのか、優也だけに限らずどこかのほほんとした空気を保っていた。




相変わらず仕事の帰りに優也の店に行き、閉店までしゃべる。




前と違うのは、そのあと手を繋いで私の家まで送ってもらうようになったこと。




「香帆、最近忙しそうだね。ちゃんと寝れてる?」




付き合うようになってから、優也は私のことを『香帆』と呼ぶようになった。




呼び捨てで呼ばれるたびに、ひそかに胸がドキドキしてるの、気づいてないでしょ。




「ん〜……今新入社員の指導が大変なんだよねー。仕事自体はそこまでなんだけど」


「そっか。香帆はすぐ無理するんだから、たまにはしっかり休まないとダメだよ?」


「うぅ〜……でもなぁー…」


「……香帆に何かあったら、俺が困る」




一気に顔が火照るのがわかった。




甘い言葉をかけられると、どうしていいのかわからなくなっちゃう。




たぶん優也のことだから、無意識に言ってるんだろうけど……。




「ゆっ、優也こそ、ちゃんとピアノ弾いてる?」




話を無理矢理変えると、それに気づいているのかいないのか、のほほんとした笑顔で答える。




「まぁ、相変わらずかな〜。大悟と泉は就職希望だから、音楽事務所とかレコード会社とか回って内定もらってるみたいだけどね。圭佑は実家の楽器会社に永久就職内定してるし、遥はピアノの先生やるんだってさ」




やっぱり音大出だとそういう就職先になるんだ。



なんか未知の世界。



でも………優也は?




「優也は、どうするの?」


「え?………うーん……まだ考え中、かな」


「えっ、そうなの?早めに決めないと、あとで困っちゃうよ」


「うん…………そだね」




このとき、私はこれからも当然優也はずっと私のそばにいると、信じて疑わなかった。




優也がこのとき何を考えていたのか、頭の固い私には全く予想だにできなかった―――…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ