#53 初めてのキス
「……うぇっ?!」
しっ、しまった……雰囲気ぶち壊しじゃん……………
「すいません、なんかタイミングおかしいですけど、言っちゃいました」
「はぁ………」
「……あぁ〜っ、本当はもっとムードあるときに言いたかったのにー………」
そう言って、真っ赤な顔で頭をかく彼。
雑誌とかに載ってる、『こんな風に告白されたい♪』とかいう特集では、まず取り上げられないだろうこの状況。
思いがけない突然の告白に、頭がついていかない私は、ただあわあわしていた。
と、急に優也は真剣な顔を私に向け、口を開いた。
「好きです。気がついたらずっと香帆さんのこと考えてて…。香帆さんと、もっと一緒にいたいです」
どうしよう、嬉しすぎる………。
私だけが、気になってるのかなって思ってた。
優しくしてくれてるのも、やっぱり客だからなのかなぁ〜なんて。
でも……優也の真剣な目を見たら、これが冗談なんかじゃないことぐらい分かる。
「こんなこと言ったら引かれるかもしれないけど………正直、香帆さんを俺だけのものにしたいです。俺だけ見ていてほしいし、俺だけに甘えてほしい。……さっき泣いてた奴に言われても、説得力ないと思うけど………」
そんなに綺麗な目で見つめられながらそんなこと言われたら、誰だって頭がボーッとしてくる。
優也以外の人に同じこと言われたら、正直引くと思う。
もともと独占欲強い人は苦手だし。
けど………自分が好きな人だからなのかな、逆にそんな言葉が嬉しく感じる。
「………しも……」
「えっ?」
「…ぁたしも………優也に私だけ見ててほしいよ……?」
「え…っ、それって………」
赤い顔で慌てる優也。
自分が言った言葉でそんなに動揺されたら、こっちまで恥ずかしくなってくるじゃん……///
「優也が好きだょ……?………だから、私のものでいてほしぃ…」
最後の最後に、何でこんなに可愛くない言葉が出てくるんだろう……。
こんな自分が嫌だ。
なんだか視界がぼやけてきて、思わず目をつぶると、急に抱きしめられた。
「ゆっ、ゆーや?!」
「……香帆さん、反則です………///何なんすか、可愛すぎなんですよっ////」
肩ごしに、優也が照れてるのがわかる。
なんで優也はそんなに良い風にとらえてくれるんだろう。
おそらくトマトみたいに真っ赤になっているだろう優也が堪らなく愛しく思えて、自分から優也の腰に腕を回した。
…や、やっぱり恥ずかしいかも………///
「…俺と一緒にいてください」
「………うん」
その日私たちは、薄暗い店の床で、初めて唇を重ねた――――……。




