表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
moderato.  作者: 奏多
5/56

#5 音大生

「………OLさん、ですよね?」



突然かけられた言葉に、しばし驚いてから口を開く。



「突然びっくりした」


「あ、すみません(笑)落ち着いてるし、OLさんかなぁ〜って」


「……まぁ、間違ってはないよ」


「よかった〜!これで実は政治家です!とかだったら怒られますもんね〜」



人懐こく微笑む彼に愛想笑いをして、静かに肘をカウンターにのせた。



きっと彼に会社のことを話しても、

『すっげ〜、一流じゃないですか〜!』

ぐらいの返答しか返ってこないだろう。



「………ラフマニノフ、好きなの?」



話題を着メロにふった。仕事の話に戻すことなく、その話題にのってきた。



「あ、やっぱり聞いてましたよね」



意外に雰囲気読む奴なのかも。


派遣のコらより年下ぽいのに。



「うん、あれピアコンの2番だよね」


「ご存じでした?もしかしてクラシック………」


「……実はわりと得意だったり。あなたも?」


「まぁ…。俺、音大生なんです」



照れたように頭をかくと、カクテルを差し出した。



出されたカクテルを一口飲むと、爽やかな甘さが口の中に広がった。



「……おいしい」


「ありがとうございます!」



はにかみながらまた笑うと、ゆっくりとカウンターの中の椅子に腰掛けた。



「で、どこの音大?」


「あっ、青葉ヶ丘音大です」


「えっ、あのヨーロッパみたいなとこ?」



向かいに座る彼に聞くと、微笑んで頷いた。




私立青葉ヶ丘音大とは、かなり多くのプロの演奏家を輩出している、入るのも在籍するのも難しい、リッチな大学だ。


純白の壁にかかるツタの葉。

美しい鐘の音を響かせる、背の高い時計台………。



「本当はあの外観、ちょっと恥ずかしいんですけど」


「何科?」


「ピアノ科です。指揮科と迷ったんですけど、やっぱり楽器にしました」


「あ〜だからピアコン!」


「はい。今度弾くんで……」



そこで一度、会話が止まる。



沈黙を破らないよう、静かにグラスに唇をよせる。




「……………お名前、聞いていいですか?」


「人に聞くときは、まず自分から」


「あ、そーでした(笑)俺、千崎優也です」


「え、もしかして、千崎病院と何か関係ある?」



近くに建っている私立病院の名前を思わず出すと、少し笑って彼は言った。



「……………いや、全然関係ないですよ」


「そっか〜……」



彼とそこまで親しくない私は、彼のその微妙な表情の動きに、気付くことができなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ