#45 矢野くん
前回から今回にかけて出てくる矢野くんとは、優也の友達の指揮科の矢野圭佑くんです。だいっぶはじめのほうで出したキャラなんで、お忘れの方がいても仕方なぃです(笑)。 ちなみに今回出てくる斎藤さんとは、矢野くんのカノジョの斎藤泉ちゃんのことです。
「…私……に?」
真面目な顔がヤケに大人びていて、年甲斐もなく焦った。
斎藤さんゴメン〜。
「何でしょう?」
「実は……優也のことで」
へ。
「優也…のこと?」
「はい。……あいつの部屋、行ったことあります?」
な、何なのその直球な言い方〜っ。
いやぁ…実際あるんですけど……君らくらいの年だったら、そっち系のほうに繋いでいくんじゃ……?
「…あります、が、そんなヤマしいことは……っ」
「本棚見て、何か思いました?」
そんな冷静に返されると、慌てた私がバカみたいじゃないですか……。
これじゃどっちが年上かわからない。
「本棚……?」
「はい。例えば……ピアノとは関係なさげなもの、とか」
「あー……そういえば、やけに指揮棒とかスコアとか置いてあるなぁ〜…と」
そう。
あの日に感じた疑問は、やっぱりどこかで引っ掛かっていた。
ピアノ科なのに、スコアがあんなに大量に並んでいたこと。
指揮科や管弦楽科の人なら、なんとなくわかるけど……。
やっぱりピアノ科の人もスコア見たりするのかなぁ、なんて思って、優也には聞けないままになっていた。
「そう…ですか………」
「やっぱりピアノ科でも見るもんなんだね!まぁ優也はオーケストラも好きみたいだし、スコアも見たりするのかも」
オーケストラの曲が好きだったら、やっぱりスコアにだって興味が湧くにちがいない。
ピアノ曲で好きなのがあったら、自分で楽譜を買ったりするのと同じように。
そうやって軽く話す私の前で、矢野くんはすごく真剣な顔で黙りこんでしまった。
「あのー…矢野くん…」
「香帆さん。今から俺が言うことは、あくまで『過去』です。でも、やっぱり香帆さんには知っておいてほしくて……。けど、これは俺の勝手な判断ですから、聞くか聞かないかは香帆さんに任せます」
あまりに真剣な顔でこっちを見つめてくるから、さすがに私も笑っていられなくなった。
沈黙が訪れ、店内の微かなざわめきがやけに大きく耳に響く。
私が知っておくべき、こと?
優也のことで。
それとスコアとがどう関係あるんだろう。
私は思い切って、口を開いた。
「……何―――――……?」




