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moderato.  作者: 奏多
45/56

#45 矢野くん

前回から今回にかけて出てくる矢野くんとは、優也の友達の指揮科の矢野圭佑くんです。だいっぶはじめのほうで出したキャラなんで、お忘れの方がいても仕方なぃです(笑)。 ちなみに今回出てくる斎藤さんとは、矢野くんのカノジョの斎藤泉ちゃんのことです。

「…私……に?」



真面目な顔がヤケに大人びていて、年甲斐もなく焦った。




斎藤さんゴメン〜。




「何でしょう?」


「実は……優也のことで」



へ。



「優也…のこと?」


「はい。……あいつの部屋、行ったことあります?」



な、何なのその直球な言い方〜っ。




いやぁ…実際あるんですけど……君らくらいの年だったら、そっち系のほうに繋いでいくんじゃ……?




「…あります、が、そんなヤマしいことは……っ」


「本棚見て、何か思いました?」



そんな冷静に返されると、慌てた私がバカみたいじゃないですか……。



これじゃどっちが年上かわからない。




「本棚……?」


「はい。例えば……ピアノとは関係なさげなもの、とか」


「あー……そういえば、やけに指揮棒とかスコアとか置いてあるなぁ〜…と」




そう。




あの日に感じた疑問は、やっぱりどこかで引っ掛かっていた。




ピアノ科なのに、スコアがあんなに大量に並んでいたこと。




指揮科や管弦楽科の人なら、なんとなくわかるけど……。




やっぱりピアノ科の人もスコア見たりするのかなぁ、なんて思って、優也には聞けないままになっていた。



「そう…ですか………」


「やっぱりピアノ科でも見るもんなんだね!まぁ優也はオーケストラも好きみたいだし、スコアも見たりするのかも」




オーケストラの曲が好きだったら、やっぱりスコアにだって興味が湧くにちがいない。




ピアノ曲で好きなのがあったら、自分で楽譜を買ったりするのと同じように。






そうやって軽く話す私の前で、矢野くんはすごく真剣な顔で黙りこんでしまった。




「あのー…矢野くん…」


「香帆さん。今から俺が言うことは、あくまで『過去』です。でも、やっぱり香帆さんには知っておいてほしくて……。けど、これは俺の勝手な判断ですから、聞くか聞かないかは香帆さんに任せます」




あまりに真剣な顔でこっちを見つめてくるから、さすがに私も笑っていられなくなった。




沈黙が訪れ、店内の微かなざわめきがやけに大きく耳に響く。




私が知っておくべき、こと?




優也のことで。




それとスコアとがどう関係あるんだろう。






私は思い切って、口を開いた。




「……何―――――……?」


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