表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
moderato.  作者: 奏多
40/56

#40 秘密

朝目覚めると、目の前には優也。



まだ霞んでいる頭で、ぼんやり昨日のことを思い出す。







昨日、私は優也に抱きしめられた。




あ〜もしかして、このままどうにかなっちゃうのかなぁ……なんて、呑気な私をよそに




あろうことか




優也は私を抱きしめた状態のまま、泣き疲れて寝てしまったのだ。




私が妄想を繰り広げている間、ずっと黙り込んだままの優也。




「……ゆ、優也?」




緊張からか、声が少し裏返った。




恥ずかしくて顔から火が出そうだった。




………のに…………







……スー………スー…………




………え?




「優也??ね、ちょっと……っ」




夜道の街灯の下で、男に抱き着かれたまま慌てる私。




しかも私よりはるかに背が高い優也の体は思っていたより重くて。




離すこともままならない。




当の本人は、安心しきった顔で寝ちゃってるし。




「……もぉ〜……なんなのょ……」




なんとか背中に優也を背負う体勢に変えると、必死で自分のマンション目掛けて歩き出した。




ずるずる優也を引きずりながら、全力投球でこの重労働に挑む。




とりあえず優也の家より近い自分の家まで引きずって運ぶ。




優也と何かあるかも……なんて想像していた自分があほらしい……。







何とか家までたどり着いた頃には、汗びっしょりだった。




優也をベッドに寝かせると、シャワーを浴びて水を飲む。




グラス片手に、幸せそうに眠る優也を見つめていると、イライラもだんだんおさまってきた。




重くなった瞼を持ちこたえ、ベッドのそばに寄る。




ベッド1つしかなぃしなぁ…。




うちにはソファーもなければ予備布団もない。




…………仕方ない、か。




私が先に起きれば問題ないもんね〜。




ということで、そろりそろりと優也の隣に横たわる。




優也の温もりが、体に染み込む。




年甲斐もなくドキドキしながら、眠りの世界へ落ちていった………。







結局、優也のほうが早く起きてしまった。



同じベッドに寝てることを、どうやって言い訳しよう……なんて考えている間も、優也は一人で何か言っている。




どうやら、優也は私を抱きしめたことさえ覚えていないらしい。




言い訳もする必要なくなった!




とりあえず昨日ここまで運んだことを言わないと……。




「………おはよぅございます……」


「おはよ。よく寝れた?」


「はぁ……」


「ここ、私の家。昨日大変だったんだから…」




と言ったところで、昨日優也に抱きしめられたこととか、勝手に一人で妄想していたことを思い出した。



なんとなく気まずくなって、目をそらす。




「もぅ、すっかり汗かいちゃったもん。おかげでさっきまで爆睡よ〜(笑)」




ふっと笑顔が消える優也。




汗びっしょりな女なんて聞いて、ちょっと引いちゃったかな………。



でも、人に抱き着いて寝ちゃう優也が悪いんだから、仕方ないじゃない。




と、突然優也が頭を下げた。




「き、昨日はすみませんでした!」



本当に、昨日は大変だったんだから。重いし。



しかしここは大人に……




「いやいや、私はべつにね」


「いえ、俺、実は………昨日のこと…あんまり、

いやほとんど全部覚えてなくて………」




覚えてないとか……昨日の労力と水分と塩分を返せ!




「…覚えてなぃの?」


「はぁ…。昨日、泣いたとこまでは記憶あるんですけど……その………その後の記憶は、キレイさっぱり………」




すると、おもむろに足元で土下座をしだした。




「すみませんでした!!」




ちょ、土下座とかまでする?普通……



慌てて立ち上がらせようとするけど、一向に顔を上げようとしない。




「いえ、俺は男として最低です!申し訳ありませんでした!!」




土下座までされるようなことしてないって!




「そんな、最低とか言い過ぎ……」


「いえっ!謝っても許されないことを俺は……っ」



さっきまで水分と塩分、なんてセコいこと考えていた私も、さすがに焦るよ………。




「そんな、ここまで運んだだけだし、謝られるほどのことしてなぃし…」







……あれ……………?




しばらく沈黙が続いた。



「今、なんて…?」



きょとんとした顔で、こっちを見上げる彼。




「だから、昨日泣き疲れて寝ちゃった優也を、とりあえずうちまで運んだんだけど………」




なんか、まずかった?



と、ためらいながら優也が口を開いた。




「え……じゃあ、その、俺と香帆さんが、何かしたとか…そういうことは………」



な、何、何言ってるんだ〜〜〜!!



あわてて思いきり否定すると、安心しきって笑顔になる優也。




もー……何だ、そんなこと考えてたんだ……。




私だけ妄想してたわけじゃ、なかったんだ。




優也もそんな対象として見てくれてたんだー……。




よかった、私だけの空回りじゃなくて。






私を抱きしめたこと、全く気付いてないみたい。




あれは、私だけの秘密にしとこう。




………なんて、思ってみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ