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moderato.  作者: 奏多
38/56

#38 素顔

†優也side†



帰り道、香帆さんが突然、俺の家族のことを聞いてきた。




さてはオーナーだな。




適当に流そうとしてみたけど、香帆さんは真剣に俺を見つめてきた。




隠し通せなくて、仕方なく昔話をした。




俺の血筋のこと。



葵のこと。



家を出たこと………。






話し終えると、香帆さんは涙を流していた。



べつに俺は、同情をさそって話したんじゃない。



だから、香帆さんが泣く必要はない。



あわてて笑ってみせると、香帆さんは涙目のまま呟いた。




「……お願いだから、私の前ではそんな風に笑わないで……」




「…私、優也にいろいろ助けてもらった。だから……私の前ではせめて、無理しないで………」




「………今度は、私が優也を助けたいの……」




香帆さんは一生懸命に、目をそらさないで話した。




そんなまっすぐな香帆さんの目をみて、俺はどうしていいかわからなかった。




無理なんて、してないよ。







………本当に?



本当は、無理矢理笑ってたんじゃないのか?




暗い過去に触れられたくなくて、ずっと笑顔の下に本心を隠してきたんじゃないのか?




もう……無理しなくて、いいの?




もう……無理矢理笑わなくて、いいの?




本当は、本当は自分自身を認めてほしかった。




それを素直に伝えても……いいの?




香帆さん、あなたは、俺自身を受け止めてくれるの………………?






俺は無意識に、香帆さんを抱きしめていた。




言葉もなく、ただ霞む目を閉じて、香帆さんの体をきつく抱きしめた。




そっと、背中に香帆さんの腕がまわるのを感じた。




香帆さんの前では、俺自身でいてもいいんだね……………。


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