#38 素顔
†優也side†
帰り道、香帆さんが突然、俺の家族のことを聞いてきた。
さてはオーナーだな。
適当に流そうとしてみたけど、香帆さんは真剣に俺を見つめてきた。
隠し通せなくて、仕方なく昔話をした。
俺の血筋のこと。
葵のこと。
家を出たこと………。
話し終えると、香帆さんは涙を流していた。
べつに俺は、同情をさそって話したんじゃない。
だから、香帆さんが泣く必要はない。
あわてて笑ってみせると、香帆さんは涙目のまま呟いた。
「……お願いだから、私の前ではそんな風に笑わないで……」
「…私、優也にいろいろ助けてもらった。だから……私の前ではせめて、無理しないで………」
「………今度は、私が優也を助けたいの……」
香帆さんは一生懸命に、目をそらさないで話した。
そんなまっすぐな香帆さんの目をみて、俺はどうしていいかわからなかった。
無理なんて、してないよ。
………本当に?
本当は、無理矢理笑ってたんじゃないのか?
暗い過去に触れられたくなくて、ずっと笑顔の下に本心を隠してきたんじゃないのか?
もう……無理しなくて、いいの?
もう……無理矢理笑わなくて、いいの?
本当は、本当は自分自身を認めてほしかった。
それを素直に伝えても……いいの?
香帆さん、あなたは、俺自身を受け止めてくれるの………………?
俺は無意識に、香帆さんを抱きしめていた。
言葉もなく、ただ霞む目を閉じて、香帆さんの体をきつく抱きしめた。
そっと、背中に香帆さんの腕がまわるのを感じた。
香帆さんの前では、俺自身でいてもいいんだね……………。




