表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
moderato.  作者: 奏多
36/56

#36 優也

「……優也」




帰り道、突然立ち止まって呟いた。




「…びっくりした。突然、なんですか?(笑)」




やっぱり優しい微笑みをくれる。



こんな人が、家族と仲よくないなんて、やっぱり信じられない。



でも………




「…………ご家族と、うまくいってないの?」




一瞬驚いた顔をして、すぐに元の表情に戻った。




「……ずいぶんストレートに聞きますね(笑)」


「さっきオーナーから聞いたの。なんか、あんまり信じられないんだけど………」




優也は前を見つめたまま、なかなか口を開こうとはしなかった。



かといって自ら催促することもできず、無意味にジャケットの裾をのばしてみたり、爪を見てみたりして、次の言葉を待った。




「………前に、香帆さん言いましたよね。



『千崎病院と、何か関係ある?』って」




「へ……」




そういえばだいぶ前に、言ったかもしれない。




優也と初めて会った頃だ。




でも……




「でも、違うんでしょ?自分で言ってたじゃない」




あのとき私が言った言葉は、ほんの軽い気持ちで出たもので、実際優也に否定されてから、すっかり忘れ去っていた。




「………実はあれ、嘘、です」


「へ…………」


「俺、千崎病院の、院長の息子なんですよ」










それからしばらくして、優也はぽつぽつと話し出した。




「俺、本当は千崎の正統な血筋じゃなくて、愛人の子なんです」




「ずっと跡取りとして育てられてたんですけど、あるとき正妻である玲子さんとの間に、弟ができてしまって」




「玲子さんの意向としては、やっぱり弟のほうに病院を継がせたかったみたいで」




「だから、弟に全部押し付けて、高校生になる前に出て来てやったんです」






優也の口から出て来た話は、彼の温和な性格からはあまりにも掛け離れていて、正直何と言っていいかわからなかった。




ずっと一人でいて、それなのにずっと笑顔でいて。




私が今まで優也に話していた愚痴なんて、それとは比べものにならなくて。



それなのに、何も言わずにずっと聞いててくれていたんだ………。




知らない間に、私の頬を熱いものが伝っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ