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moderato.  作者: 奏多
28/56

#28 朝のコーヒー

「あ、おはようございます!」




朝目覚めると、見慣れない部屋に見慣れないベッド。




ほんのり優也の匂いのする布団に一度顔を埋め、温かく出がたい布団を思いきりめくった。




寝室の扉を開けると、もう優也が朝のコーヒーをいれる用意をしていた。



黒が基調の高級感溢れるシステムキッチンに、コーヒーメーカーを手にして立つ優也は、かなり似合っていた。




「………おはょ…」


「よく眠れました?昨日寒かったんで、電気毛布にしておいたんですけど……」



そんな気配りに、不覚にもときめいた。




「あ、コーヒーいれますけど、ホットですか?」


「あ…アイスで」


「はーい。ミルクと砂糖は?」


「砂糖1つとミルク…」


「甘党なんですね〜。パンでいいですか?さっきパン屋で焼きたてがあったんですけど」


「お願いします…」


「じゃあ用意しますから、顔洗ってきてください」


「はぃ………」




ひんやりした廊下を歩き、洗面所にむかう。



洗面台に、小さなメイク落としと真新しい歯ブラシ、洗顔フォームが並べてあった。



置いてあったタオルに顔を埋めると、ふんわり優也の服の匂いがした。



置かれた洗顔フォームとメイク落としで顔を洗い、歯を磨く。


それからもう一度メイクをしてから出た。




「あの、歯ブラシとか……」


「あ、わかりました?とりあえずコンビニで買ってきておきました」



黒いシックな冷蔵庫からバターを取り出しながら、続ける。




「昨日香帆さんがメイク落とす前に寝室に入れちゃったんで、悪かったなぁ〜と……よくわからなかったんで、好きなメーカーじゃなかったらすみません…」



慌てて首をふり、



「ありがと……気が利くね」



朝、自分が寝ている間にパン屋やコンビニまで行ってくれたのか。



しかも、メイク落としまで買ってきてくれるなんて………



「照れるから、やめて……(笑)で、できましたよ!朝ごはんにしましょう!」




朝陽の降り注ぐテーブルで、優也のいれたコーヒーと焼きたてのいろんなパンが入ったカゴを前に座る。




コーヒーの香ばしい香りと、パンの優しい匂いが鼻をくすぐる。




私の前には、グラスに入った甘めのコーヒー。



優也の前には、湯気をたてているブラックコーヒー。




何から何まで世話してもらって、これではどっちが年上かわからない。






「あ、洗顔フォームとか、持って帰ってくださいね。香帆さん用に買ってきたやつですから」



「……………置いていって、いい?…………また、泊まるかもしれないから…………」



そう言うと、優也は真っ赤になってバターナイフを皿に落とした。



そしてはにかんだように、



「片付けておきます」



と言って笑った。

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