#27 家族写真
†優也side†
香帆さんを家に呼んだ。
べつに、下心なんて全くない!
………とは言い切れない俺(笑)
香帆さんにバレたら、殴られそうだな(笑)
香帆さんが寝静まるまで、俺の緊張は極限状態だった。
香帆さんを無理矢理寝室につれていき、ドアを閉めた。
そうしないと、おかしくなりそうだった。
物音がしていた寝室は、しばらくして何も聞こえなくなった。
やっぱり疲れたのかな。
ピアノの蓋をあけ、鍵盤をひとつ押してみる。
ポーン、という耳慣れた音を聞いて、少し緊張がとける。
ちなみにこの部屋は防音設備が整ってるから、夜中に音を出しても大丈夫なのだ。
ふと、写真たてに目がいく。
ドイツで生まれた俺は、10才でジュリアードに入学した。
だから、日本語よりドイツ語のほうが早く覚えたし、英語も少し話せる。
音楽をやる上ではすごく役立つが、これが原因で、帰国直後はずいぶんカルチャーショックで悩んだものだ。
帰国直後は、
二度と音楽はやらない
とあんなに誓っていたのに、あの事件があって以来、やっぱり音楽に進むことに決めた。
おもむろに、棚から1枚の写真を取り出す。
最後に家族写真を撮ったのは、たしか高校に上がる前だ。
父親の仕事の関係でつれていかれた場で、撮ったものだ。
父さん。
母さん。
たしか葵は、今年医大に受かったと聞いたが……。
写真をみていると、妙にチグハグなかんじがした。
写っているのは、どこからみても幸せそうな、優雅な家族。
しかし、どこか合成写真のような…………俺の目だけが、笑っていなかった。
これを撮ったすぐあと、俺は家を出た。
寂しげな昔の自分の表情に少し切なくなって、静かに引き出しにしまいこんだ。




