#26 写真
………私、なんかすごい大胆なことしてない?
鍵を忘れたといえど、男の家に泊まりにくるなんて……。
しかも、彼氏でもなんでもない、学生の家に…………。
こんなこと、派遣のコらにバレでもしたら大変だ。
「あ…ど、どうぞ……」
「ど、どうも………」
優也くんも緊張しているのか、動きが少しぎこちない。
「あ、こ、紅茶でも飲みますか?こないだの茶葉がまだ残ってて」
「あ、うん、いただきます……」
部屋に来たものの手持ち無沙汰で、仕方なくソファーに軽く腰掛ける。
遠慮しているとき、なぜ人は腰掛ける部分が少なくなるんだろう。
案の定、ソファーからずり落ちた。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「う、うん。ごめん……」
恥ずかしすぎて、どこを見ていいかわからなくなる。
「………ぷっ」
え?
「あ、すみません!なんか、お互い緊張しすぎですよね。ほんとに、ホテルだと思ってくつろいでください」
「でも、そんなの……」
無理、と言いかけてやめた。
なんか、年甲斐もなく照れている気がして、急に恥ずかしくなった。
紅茶を飲みながら、たわいもない話をしていると、ふと写真立てが目に入った。
「あ、写真………見てもいい?」
「あ、はい。なんか恥ずかしいですけど…(笑)」
手にとると、幼い優也と金髪の少女が一緒にピアノを弾いている姿が写っていた。
「わ、すごい。これが、例のドイツのときの?」
「あ、いえ、それはたぶん、ジュリアードのときのかな?」
ジュリアード………ジュリアード音楽院?!
「えっ?うそ!!」
「こっちがドイツのです」
指さされたもう一枚の写真には、ヴァイオリンを弾く女性とデュオをしているさらに幼い優也が写っている。
「え、え?」
「生まれてから10年は、ドイツにいたんです。でも10才のときに出たコンクールで、そのとき見に来てたジュリアードの先生に誘われて、N.Yにいたんです」
恥ずかしげもなく淡々と話す優也。
だけど………
「そ、それって、すごいことなんじゃ……?」
「でもジュリアードは2年で退学したんですよ。なんかアメリカが俺に合わなくて(笑)。それからは日本です」
そんなすごくないですよ、と優也は付け加えたが、びっくりして声も出なかった。
急に、優也に後光がさしたかんじ。
「もう遅いですし、寝ましょう!香帆さんはベッド使ってください。俺こっちで寝るんで」
「へっ、それはダメよ。いくらなんでも悪い……」
「もー、ホテルみたいに思ってくださいってば。こっち、案内します」
サプライズ続きで、どうやら寝つけそうにない。




