#25 重大ミス
「え……あれ………鍵…」
優也にマンションの下まで送ってもらい、もう少しでなんとかノーミスで通せる、といったところで、重大なミスに気がついた。
消えかかっている街灯の下で、優也に見守られながら必死でバッグをゴソゴソする私。
しかし、バッグの中から鍵が現れることはない。
「うそー…鍵忘れてきた?もう管理人さん寝てるのに………」
顔は真っ青だ。
深夜の1時すぎ。
初老の管理人は、窓口を10時には閉めてしまう。
今頃彼は、完全に夢の中だろう。
10時まで開いてるのだって、年を考えれば頑張っているほうだ。
ボロいマンションのくせにオートロックだけなぜか完備。
管理人の親切心も、深夜に佇む鍵のない女にとっては、かえって仇になる。
「どうしよ……明日は仕事ないけど……………ゆ、優也くん、ホテル代貸してくれませんか…?」
怖ず怖ずと、心配そうに私を見つめる学生に言い出す。
「お願いします!ちゃんと月曜日には返すから!」
「もちろんですけど……あ………あの…俺んち、よかったら来ますか?」
……………。
………………え?
…………………えぇっ?!
「いや、べつに他意はなくて、ほんとにっ……」
慌てて弁解する優也。
車の中での雄弁さは何だったのか、耳まで赤くなっている。
「もちろん、嫌ならちゃんとお金貸しますし……っ」
「…………じゃあ、あの、1日だけ、お泊りさせてくださぃ………」
そう言うと、彼は真っ赤な顔で、
「はい!」
と笑った。




