#24 ギャップ
チケット持った。
服とメイクは薄め。
飲んでも大丈夫なように、お金も持った。
何度もバッグの中を確認して、鏡の前でターンして、そして意気揚々と出発した。
……机の上に寂しく置かれたままの鍵の前で、静かにオートロックの扉は閉まっていった…。
BMWに迎えられ、コンサート会場に向かう。
一応寝ないように、予習じゃないけど、CDは聴いてきた。
個人的にはワーグナーの曲が好きだ。
某ホテルのディナーだかランチだかのCMで、流れていた気がする。
ブラームスは重厚なかんじ。
車の中で、優也はこのブラームス交響曲が好きだと言っていた。
クラシックの話をする優也の顔はキラキラしていて、本当に音楽が好きなんだなぁ〜と微笑ましく見ていた。
コンサートの前に、優也が予約してくれていたイタリアンレストランで食事をしようということになって、案内されるがままに店へ向かう。
「こ…こんなお店、高いんじゃ……?」
案内されたのは、落ち着いた雰囲気でクラシック音楽なんか流れてたりする、いかにも高そうなレストラン。
慌てて財布の中身を確認する私に、優也は笑いかけながら言った。
「大丈夫ですよ、俺が払いますから」
「でも、私のほうが年上だし……」
「…じゃあ、俺に無理矢理つれてこられたことにして。……ちょっと、イイとこ見せたくて(笑)」
不覚にも、照れた。
私が諦めておとなしくなると、彼は満足そうに微笑んだ。
食事は今まで食べた中で一番おいしかった。
何でこんな店知ってるの?、と聞くと、
デート雑誌でめちゃくちゃ調べちゃいました、とはにかんだように笑った。
レストランを出て、コンサートの会場に向かう。
貰ったチケットの指定席はかなり良い場所で、優也はものすごく嬉しそうに座った。
ブザーが鳴り、客席のライトがしだいに落ちていく………。
コンサートは素晴らしかった。
曲目も派手で、聞いていて飽きない演奏だった。
ラフマニノフのピアノ協奏曲のとき優也に、この曲は弾けるの?、と聞くと、
「練習中です」
と笑って言った。
その顔が、いつもの余裕のある優しい微笑みじゃなく、少しバツが悪そうな子供っぽい顔で、そのギャップにまたしてもやられた。
今日はいつもにもまして、いろんな表情にくるくる変わるなぁ……。




