#23 ドイツ語
今回も優也視点になります。これから度々優也からの視点で書くことがありますが、その際は †優也side† という書き方をするので、たぶん分かると思うのですが……。 分かりにくかったら教えてください!
†優也side†
香帆さんが店に来るようになってから、バイトするのがとても楽しくなった。
ピアノの練習時間が短くなっても、香帆さんといるほうがよかった。
もっとも、短い分集中して練習するから、こないだの実技試験ではトップだった。
やっぱり、香帆さんといることで、俺自身が成長できるんだろうな。
そんなことを思いながら、その日も香帆さんのことを見つめていた。
サラリーマンが帰ってから、俺は香帆さんと二人きりになった。
慣れたと思っていても、やっぱり緊張してしまうこの状況。
今日は香帆さんは仕事をしていて、何やらぶつぶつ言いながらペンを走らせていた。
覗いてみると、ドイツ語のリストを必死で訳していた。
悪戦苦闘する彼女は正直ものすごく可愛くみえたが、本人はそれどころじゃないみたいなので、口を出してみる。
実は生まれてから10年くらいドイツに住んでいたことがある。
だからドイツ語はまぁ、わりと覚えているはず。
訳を手伝い終わると12時をまわっていた。
グラスの片付けをしていると、香帆さんがおもむろに何かをたたき付けた。
「チケット?」
どうやら香帆さんが、俺を誘ってくれているらしい。
そんなの、誰が断るんですか!
「…じゃあ、ありがたく行かせていただきます」
そう言うと、彼女はほっとしたように微笑んだ。
反則だろ、その顔……。
慌ててチケットに目を移す。
ブラームス交響曲第1番
ワーグナーの《ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕への前奏曲》
ラフマニノフの《ピアノ協奏曲第4番》
俺好みの曲目だ。
最近オーケストラのコンサートに行ってなくて、ずっと行きたいと思っていた。
まさかこんな形で、しかも香帆さんとなんて………今日はツイてる。




