#19 特別な日
今回は、優也視点です。
†優也side†
今日、初めて香帆さんが俺の家に来ることになった。
学園祭の日、彼女が泣いてたのを、実は知っていた。
だけど、重い雰囲気になったら困るから、あえて聞かなかった。
香帆さんが来るのは午後。
俺は必死で、部屋を片付ける。
元々ピアノくらいしかない部屋だけど、床に散らばった楽譜を棚に戻すくらいはしておく。
掃除機をかけて、さらにクイックルワイパーで磨く。
クイックルワイパーは昔から愛用していて、買い置きが大量にある。
なんか格好悪いから誰にも言わないけど。
ツヤツヤになった部屋に鍵をかけ、車を出す。
白いBMWは、免許をとったときに親に買ってもらった。
俺は国産車でいいって言ったけど、とりあえず買っておけって言われたものだ。
味気なかった車内は、俺好みにデザインされている。
部屋より車の掃除の頻度の方が多いほど、わりと気に入っている。
クラシックのCDをかけると、車内全体がホールみたいになるのも、気に入ってるポイント。
店の前に佇む、私服の彼女。
今日はちょっと、可愛いかんじ。
いつもはスーツとかだから、少しときめいた。
大悟が『女はギャップだ』って言う理由、何となくわかった気がする。
香帆さんを車に乗せ、エンジンをかける。
香帆さんの好きそうなクラシックのCDを、何気ないふりしてかける。
正直、緊張しすぎて、手とか汗ばんでる。
そのうえ、香帆さんがやたら見てくるのが視界に入って、緊張状態はMAX。
て、意識しすぎか?俺。
実はそんな見てなかったりして。
勝手に妄想を繰り広げているうちに、マンションについた。
立ち止まっている香帆さんをロビーに待たせ、駐車場に走らせる。
「………だぁ〜…落ち着けー…」
火照る顔に、冷たい手を被せる。
今日のメインはピアノなんだから。
俺が緊張してどうする。
香帆さんに、格好悪い演奏は聴いてほしくない。
とにかく、落ち着こう。




