#12 学園祭
学祭当日。
会社の有給休暇をとって、再び青葉ヶ丘音大に向かう。
わざわざ有給とったのは、少しでもあの忌ま忌ましい派遣社員を見ないで済むのなら、とあえて平日の金曜日に行くためである。
前に来たときより人で賑わっていて、自分の大学時代の学園祭を思い出す。
もっとも、学祭にはあまり真剣に取り組んでもなかったし、少し顔を出すくらいでほとんど参加していないに等しかったけど。
「あれ、香帆さん?」
ぽ〜っと歩いていた私の背後から、明るい声がした。
「あ……えーっと、優也くんの…………」
「幼なじみの、久住遥です!香帆さんも見に来られたんですか?」
そうそう、たしか久住さんだった。相変わらず明るい子だ。
「見に………って、何を?」
「《千崎優也(ピアノ科首席)と学内オーケストラ夢の共演・ピアノ協奏曲をあなたに》です!」
と言って、おもむろにチラシを取り出した。
この学祭でも目玉イベントらしく、カラープリントの黒いチラシには、ピアノを弾く燕尾服の優也と、ゴージャスな楽器をかまえたオーケストラの写真が、大々的に載せられていた。
「首席なの?」
「はい。まだ3年ですけど、彼がトップなんです」
よほど嬉しいのだろう、頬を緩ませて笑っている。
「見にいくって言っちゃったし、行くつもりだけど………」
彼女はおそらく、彼のことが好きなんだろう。
若いっていいなぁ…と、いやに年おいた発言を心の中で呟く。
「じゃ、行きましょう!もうすぐ始まっちゃいますよ」
半ば強引に引っ張られながら、彼のために必死な彼女に、少し苦笑した。




