第10話
最終話は少し短めです。
――時は経ち半年後。
今の季節は夏。地を焼く地獄の太陽が顔を出す季節。照りつける太陽光線は、滝のような汗を促す。たとえじっとしていたとしても汗は吹き出し、身に付ける衣服を濡らして不快指数をグングンと上げていく。
「まだ見つからんのか!」
「申し訳ありません! 昼夜問わず現在も全衛兵での捜索に――」
「何度も聞いとるわァ――ッ!」
ここはマスビス国セウム都市、ペリオディック公爵家の屋敷の執務室。この蒸し暑い中荒れに荒れているのは、セリンとリンの父である、クリプトン公ヘリュウム・ペリオディックだ。
「セリン……、リン……、いったいどこに居るというのだ……。我が愛しの娘たちよ、そんなに……そんなに父親である私が嫌いか?」
「ふふふ」
そしてヘリュウムの隣にいるのが、トリシャ・ペリオディック――ヘリュウムの妻だ。
トリシャはヘリュウムの慌て具合を見て、年齢に似合わないも容姿には似合う、可愛げな笑みを浮かべていた。
「あなた、そんなにお慌てになさらずに。もっと心を落ち着かせて下さい」
「うぬ、ぬぅ~……。はぁ~……。私はいったいどうすれば……」
豪華な肘掛け椅子にドカッと腰を降ろしたヘリュウムは、娘たちの行方を心配しながら深い溜息をつく。夫がそんな状態だというのに、妻であるトリシャはにこにこ笑顔を咲かせていた。
「トリシャよ……。いったい何がおかしいというのだ」
「そうですね。あなたは娘たちのことが分かっていない――ということでしょうか……?」
それを聞いたヘリュウムは、頭上に大量の疑問符を浮かべる。
(本物の恋とは、止まらないものよ。……セリン、……リン。幸せにね。好いた男性から離れることなく、一生を共に歩み続けるのよ)
トリシャは笑顔のまま天井を静かに見上げ、娘たちの幸せを願った。
***
季節は夏――ということで、ここは魔大陸のランタンビーチ。透き通るような青い空と心地よい風。本日は快晴、絶好の海日和だ。
引いては返す冷たい海水が脚に絡み、水面は眩しい太陽光を反射させる。海はビーチの主役である女性たちをより煌めかせていた。
そう、ビーチには水着を着た魔人たちで溢れていた。カップルで、家族で、友人たちで。大勢の魔人たちがこの暑い中、海水浴目的でランタンビーチを訪ねていた。
ビーチにはあらゆる大きさのフルーツが実り、男たちの目の保養となる女性たちが大勢いる。そして逆もまた然り。皮膚や血管を押し上げる大胸筋や前腕、引き締まった脹脛。男性でも憧れるバランスの良い筋肉に、女性たちの視線は釘付けとなる。
そんな中、一際注目を浴びる、誰もが羨むパーフェクトボディを持つカップルが2組いた。それは勿論、アーサーとセリン、ルシファーとリンだ。
「おし、こんなもんかぁ」
「だな。……ほら」
「おう」
パラソルとシートをセッティングし終えたアーサーとルシファーは、土魔法と氷魔法で出来たクーラーボックスから冷えた水筒を取り出し、乾きを覚えている喉を潤す。
「ルシファー様ぁ~」
「アーサー様ぁーっ」
2人は声の聞こえる海の方へと視線を向ける。
「……眩しいなぁ」
「あぁ、眩しすぎるぜ」
そこにいたのは、花模様のワンポイントが入ったビキニを着ている、リンとセリンだった。
リンは恥ずかしげに身を縮こませながら、手を小さく振ってルシファーを呼び、セリンは海水浴を楽しむ気持ちが前面に出ているようで、飛び跳ねながら両手を大きく振ってアーサーを呼んでいる。
「アーサー様早くこちらにいらしてくださーい!」
その声にアーサーとルシファーは顔を見合わせて頷く。そして同時に駆ける。
「よっしゃー! 明日立てなくなる程相手してやんぜセリンちゃん! おらぁっ!」
「きゃあ!」
アーサーは走りながら小柄なセリンの身体を抱き上げると、そのまま海へと走って行く。
「ははは。……リン、俺たちも行こうかぁ」
「は、はい!」
ルシファーは赤面するリンの手を取り、ゆっくりとアーサーたちの方へ歩いて行く。
この物語は、本来相容れない関係にある勇者と魔王が、『秘密の親友』となり共に生きていく、そんなお話。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
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続きを書こうと思えば書ける作品ですが、ここで終わりにさせていただきます。
長編小説はもっともっと設定を練り込んで作っています。
物語の最初から最後までの流れは出来ており、もっと細かな世界設定を考察中です。大陸や国の形、魔物の種類や生態、魔法の現象や魔法陣の仕組みetc
作者の文章作成スキルを磨きつつ、書いていきたいと思っています。
長編小説は来年の1月を目標に、書き溜めを大量に作って投稿し始めたいと思います。
そして繋ぎのための次作ですが、この作品の女バージョンを考えています。1,2ヶ月ほどかけてゆっくりと書き上げていきたいです。
「秘密の親友 ~勇者と魔王~ (男ver.)」を読んでいただきありがとうございました。
次作の「秘密の親友 ~王と魔勇者~ (女ver.)(仮)」を楽しみにしていてください。




