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鐘の音  作者: 葵依幸
4/6

[04]loop to loop

◇ loop to loop  ◇



 結果、お察しの通り失敗しました。

 まず転がって来たお手製の爆弾くん、これは宙に飛んで来た瞬間掬うようにして空にぽーっいと投げ捨てて頭の上でバーンってなったんだけど次が問題だった。回りが「おーっ」とか「わーっ」とか「ぎゃー」とか言ってるなか逆上して来た男が私に襲いかかって来て、流石にそれは初めての事だったので押し倒されて頭に何か突きつけられたなーっとか思ったらパーンですよ。いやはや嫌になりますな。

「……なにぶつくさいってるの?」

「この世の不条理をなげーてるの。」

「はっ! 厨二病は僕の特権!」

「はいどーぞ。」

「ふはははっ、我が名はフレイムダークマスター!」

 ——さて、本当にどうしたものか……。

 この二時間が私に何を期待しているのか分からないけれど、もしかしてアレかな。あの爆弾犯の所属する組織を壊滅させろとかいうミッションですか? この世に降り掛かるありとあらゆる災いを回避し、救える限りの人類を救いこの混沌とした世界の救世主となれ——みたいな。

 ……バカの厨二病が移った。感染するのねーちゅーにびょーって。

「この状況時代がそれっぽいけど。」

「本当に大丈夫ですか。」

「大丈夫よ、ついでに死ね。」

「生きる!」

 それにしても毎度毎度よくもまぁこんな奴を呼び出してどうしようと言うんだろう。いまの所殆ど役に立ってないのに。

「……ねぇ、」

「ん?」

「あんた、私の事救ってくれるつもりってある?」

「君の為なら火の中水の中草の中——!」

「スカートの中はいらない。」

「あれって公然猥褻罪だよね。ポケモンのくせに。」

「どうでもいいから答えなさいよ。」

「うーん……。」

 腕組みしてまで悩む事かい。

 はぁーぁ、と溜め息を零し腕時計に目をやる。もう既に11時半を回りつつある。時間も残されていないし、この命は消化試合ってことで。

「ちょっとどっかで休みたいわねー。」

「なに、待つのそんなに疲れたの? 年?」

「じゃ待たせんな。」

 言って適当なお店に入ってテーブルにつっぷした。

 さっきからやけに眠い、眠いっていうか頭が思い。考えてみれば記憶は記憶が引き継がれてるってことは精神的には疲れが溜まってる訳だ。点滴で栄養を流し込み続けたとしても肉体的な限界の他に精神的な限界はやってくる。睡眠という物は身体を休める為だけではなく、精神的な疲れを取る効果もあるのだ。ってなんかのテレビ番組で言ってた気がする。

「ふぁーー……。」

「欠伸するなら手で塞ぎなよ。涙目なってるよ。」

「どーせリセットされるからいいんですー。」

 注文も適当に済ませて寝る。ひたすら寝る。

 目を瞑れば直ぐに泥の中に沈んで行くかのようにずぶずぶと眠りの淵に落ちて行った。

 夢心地の中で誰かの悲鳴と一緒に食器が割れる音が聞こえたけど寝ぼけていた私には何が何だかさっぱり。

 よくわからないまま、私はまた、死んだ。


「今回は、寝ます。お休み。」


 あのバカに連絡を取る事も無く、颯爽と漫画喫茶に向かいリクライニングをめいいっぱい倒して寝る。

 適度に空調の利いた店内は心地よく、案の定すぐに眠りにつけた。駅前で横になってもよかったんだけど、流石に花の女子大生。死んで1からやり直せる人生だとしても恥ずかしい物は恥ずかしい。キーボードの軽快な音の中また眠りにつきつつ、今頃同じように眠っているであろうアイツの姿が浮かんだ。

「……アホ、死ね。」

 何となくムカついて呟いてみて、意識はまた泥の中へ。

 ——私のコト、守ってくれるつもりってある——?

 あの時アイツはなんて答えるつもりだったんだろう。

 いつになく真剣に悩んでくれた気がした。その悩みが果たして真面目な物なのか、何か面白い返しを考えてかは分からないけどちょっぴりドキッとした。

「……ってバカか私は。」

 浮かんだ考えを溜め息混じりに吐き捨てて毛布を被り直し、眠りについた。

 今回どんな悲劇が起こったかなんて知らぬまま、気が付けば駅前にいた——。


 ——かーん、かーん、かーん。


 屈伸運動しながら時計台を見上げる。十分に目も覚めてる、準備は万端。うし。

「いっちょやりますか。」

 崩れ落ちてくる瓦礫を前に軽く息を吸い込み、大きく地面を蹴った。


 目の前に広がる黒い影、崩れ落ちた時計台。

 悲鳴を上げながら横転するトラック、誘発するガソリンスタンド。

 振り下ろされる刃は太陽に煌めき、降り注ぐは鮮血。


 ——時計の鐘が告げる。


 地を蹴り、転がり、手を伸ばして掴んで。蹴って叫んで、呻いて。

 喘いで吐いて、見上げて。走って止まって押しつぶされて。

 怒って投げて物に当たった。


「あああああああああああああああああああああああああああああ。」


 上げた悲鳴はいつの事か。

 嘆いた記憶はいつの物か。

 見上げた青空はいつの空か。

 

 終わりの見えない繰り返しに、終わりを求めて巡り続ける。

 伸ばした腕すら瓦礫にひしゃげ、踞った所に銃弾が跳び込んでくる。


 鐘の音が、終わりを告げる——。

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