運命の予兆
入学式が終わる。大鳶も初めてではあるがなかなかの仕事ぶりだった。
今日はどの部活も入学式の影響(入学式に使用されている)でない。俺は早速自宅へ帰る。
「ただいま、雪乃。」
俺は自宅へ帰ってきた。
「おかえりなさい、兄さん。」
雪乃が出迎えてくれる。俺は早速リビングに行き、ソファーに腰をかけた。
「ふわあー」
あくびを一つ。
「兄さん、眠いの?」
雪乃が気にかけてくる。
「ああ、まあな。今日は仕事もあったし、疲れた。とりあえず夕方まで寝るから。お休み。」
俺はソファーで眠ろうとする。しかし、
「あっ。」
枕がないことに気付く。俺は枕がないと眠れないのだ。
「兄さん、もしかして、枕がなくて困ってる?」
雪乃が察したらしい。さすが、俺の妹だ。
「枕持ってこようか、兄さん。」
「いや、自分で持ってくるよ。」
俺は妹の善意を断った。自分が動ける状態で人に物を持ってこさせるのは、なんとなくパシリをさせているので気が引けた。
俺がソファーから立ち上がると、
「兄さん。」
後ろから雪乃の声がする。振り向くと、雪乃が正座をしていた。疑問に思った俺は聞いてみる。
「どうしたんだ、雪乃。」
そういうと雪乃が手招きをしてきた。俺は雪乃の元へ向かう。すると、
「膝枕してあげる。」
雪乃がそう言ってきた。
膝枕は普通の枕よりも、柔らかく眠りやすいことはもう知っている。俺はお言葉に甘え、膝に頭を置く。そして、眠気はすぐにやってきた。俺は暗闇へといざなわれる。
「ここはどこだ。」
ここは夢の中。まわりには一面の星空。
そこに一人の男が現れる。
銀髪に赤い目。まわりを寄せつけないような人間離れした威圧感。しかし、なぜか今は亡き父さんの面影がある。
男はしゃべり出す。
「我が名はシリウス。魔法使いの頂点に立つもの。これから、貴様を含む12人の魔法使い達に命をかけた闘い、殺しあいをしてもらう。生き残ったものにどんな願いも叶う「神話魔術」が与えられる。なお、この殺しあいは絶対だ。期限内にすなわち、半年以内に最後の一人だけの状態にならないと、この島はおろか、日本が終わる。この殺しあいはじきに現実で始まる。」
俺には何がなんだかわからなかった。夢の中ではあったが気になったことがあったので聞いてみる。
「シリウス、魔法使いってなんだ。」
シリウスは苦笑する。
「それは魔法を使役する者のことだが。」
俺はさらにわけがわからなくなった。
「俺は魔法なんか使えないぜ。」
俺はシリウスにはっきりいった。
シリウスはさらに苦笑する。
「そんなはずはない。お前は気づいていないだけだ。自分の力に。でなければ、夢の中であろうとこの空間、「魔法使いの楽園」にいられはしないのだから。」
シリウスは消えていく。
それと同時にこの空間が崩壊する。夢の中の俺も消滅した。
「変な夢だったな・・・」
俺は目が覚める。頭は変わらず、雪乃の膝の上。見上げると、雪乃が寝ていた。俺が膝の上から頭を移動させると、
「ん、んん。」
雪乃が起き出した。俺は雪乃に声をかける。
「おはよう、雪乃。」
「おはよう、兄さん。って、もう夕方じゃない。」
「そうだな。」
雪乃の言った通り、まさに夕方。もう夕日が出ていた。俺は夕日を見てつぶやく。
「そろそろ、夕飯の材料買わないとな。」
「もうそういう時間か。買い物ついて行っていい?」
「ああ、いいけど。」
こうして、二人は商店街に向かった。