俺と妹
4月7日 朝。
「兄さん、兄さん、起きて、もう朝だよ。」
「う、うう・・」
「兄さん、起きて!」
「う、うう。」
「起きて!」
バンッ
俺はベットからはたき落とされる。
「イテッ」
「やっと起きましたね、兄さん。」
俺を起こしたのは、親戚のおじさんの娘、つまり、いとこ。そして、義理の妹でもある黒金雪乃。雪乃は俺のことを兄さんと呼ぶが、俺と雪乃の誕生日は一ヶ月しか変わらない。ちなみに俺が9月9日、雪乃が10月10日である。学年も同じだ。
「あのさ、雪乃、もう少しマシな起こし方出来ないのか。」
「兄さんはこうでもしないと起きないじゃない。」
「だからといってもな、もう少しあるだろう・・」
「ありません!」
俺は雪乃にギロリと睨まれる。
「う、うん。次からは自分で起きられるようにするよ・・」
「いいえ、兄さん。兄さんはこれからも私が起こします。」
「いや、お断りするよ。もう、あんな風にベットからはたき落とされるのはもう懲り懲りだからな。」
ギロッ・・
またしても俺は雪乃に睨まれる。
(なぜ、睨む。我が妹よ。)
「兄さん、自分一人で起きられるの?以前目覚まし時計十個あって起きられなかった兄さんが。」
「い、いや、できるさ!」
俺は何と無く見栄を張ってみた。
「兄さん、見栄を張っても無駄ですよ。」
すぐに見栄を張っていると雪乃に見破られる。
「しょうがないなあ、兄さんは。これからも兄さんは私が起こします。」
「今度はもう少し優しくな。」
見栄まで張って断ろうとしたのに、結局はこれからも雪乃に起こされることを覚悟した俺であった。まあ、この年齢になって妹が起こしてくれるなんていう家庭はそういないらしいから、ありがたいことなのだと受け取ることにした。
俺が観念してから、何故か雪乃はずっと上機嫌だった。
その後・・
俺と雪乃は向かい合って朝食を食べていた。おじさんは仕事の都合上、出張が多くあまり帰って来ない。今日もいない。ちなみにおばさんは・・・もういない・・一年前に交通事故で死んでしまった。
俺は味噌汁を一口すする。
「うん、上手い。すっかり、出汁の極意もつかんだな。」
「うん、これも兄さんが教えてくれたおかげだね。」
正直な感想だ。俺がこの家に初めて来た時とは大違いだ。
雪乃と初めて出会った五年前、雪乃は料理が全くダメだった。米すら研げなかった。しかし、おじさんはもちろんのこと、その当時はおばさんも仕事が忙しく、二人とも帰って来ない日が多く、俺と雪乃の二人で生活していかなくてはならなかったため、料理ができるのが俺だけだと、俺が病気等で倒れた時に何かと不便なので、雪乃にもなんとか料理を覚えてもらった。この時、当然、俺が料理を教えたのだが、なんせ、米すら研げないような奴である。料理を教える際、正直憂鬱だった。しかし、驚いた。雪乃はすぐに料理のコツを掴み、今は朝食や夕食を任せられるようにまでなった。
「よし、今日はいいもん食べさせてもらったし、夕食は俺が腕を振る舞うとするか。」
雪乃の料理を食べて、俺も負けられないという気持ちが湧き上がってきたのだ。
「手伝ってもいいかな、兄さんの料理。」
雪乃がそう尋ねてくる。しかし、
「その気持ちは嬉しいけど、今日はダメだな。」
と答えた。雪乃には負けられないという気持ちが湧き上がっている今、俺は一人ですごい料理を作りたいと思っていた。しかし、それを闘争心を燃やしている相手に手伝ってもらうのでは、本末転倒というものだ。
「そう・・」
何と無く雪乃が悲しそうに見えた。だから、俺は雪乃の頭を撫でた。
「ごめんな、雪乃。今度は一緒に料理作ろうな。」
と言いながら。
昔から雪乃は頭を撫でてあげると悲しそうな顔もすぐに笑顔へと変わるのだ。
「えへへ。」
今日も例外なく、雪乃の顔が笑顔になる。
「約束だよ、兄さん。」
「ああ、約束だ。」
俺と雪乃はゆびきりまでして約束をかわした。
その後、俺と雪乃は朝食を食べ終えて、学校へと向かった。