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出会い

2039年4月6日

すっかり日がくれて、空にはたくさんの星がちりばめられている。そう、満天の星空だった。俺はそれを学校の屋上から眺めていた。寝っころがりながら。この時までは平和だった。この島、種子島も。俺は夜、屋上で星空を見るのが好きだった。夜、学校に忍び混んでも、この習慣はやめられなかった。それくらい、この島の星空は綺麗だった。こんなに綺麗な星空は東京にいたころは見られなかった。俺は5年前、両親を無くし、親戚のいる種子島にやってきた。慣れないことばかりだったが、この島の住民たちは皆優しく、俺もこの島の生活に慣れるのも早かった気がする。俺が空を眺めていると・・

「誰か〜助けて〜」

後ろから声が聞こえる。後ろを振り向くと、おそらく俺と同じぐらいの年か、一つ違いくらいの女の子が屋上にあるはしごから落下している途中だった。

俺はすぐさま女の子の落下地点に走りこみ、うまく受け止める。

「ふー、危ない、危ない。大丈夫?怪我ない?」

俺は女の子にそう尋ねる。

「うん、大丈夫!ありがとう・・」

女の子はお礼を言ったあと黙ってしまった。その後、俺も気づいて黙り込む。

「・・・」

「・・・」

しばらく俺と女の子は見つめあってしまう。二人とも少し顔が赤くなっていた。俺たちの状態は、女の子をお姫様抱っこしている男と、お姫様抱っこされている女の子だ。

俺はあわてて女の子をおろす。

「ご、ごめんね。」

「気にしないで、助けてもらったのは、こっちなんだし。ところで、自己紹介まだだったよね。」

「うん、まあ。」

「私の名前は大鳶渚(おおとびなぎさ)、よろしくね。」

「ああ。俺の名前は黒金昴(くろがねすばる)よろしくな。大鳶。」

「・・黒金?」

「えっ?」

大鳶は驚いていた。何に驚いたかわからなかったから俺も驚いてしまう。

「黒金って、剣道部の黒金君?」

「うん、まあ。」

俺の所属する剣道部には黒金っていう苗字の奴は俺しかいないのでそう答えた。

「やっぱり!見たことあると思ってたんだよ。私も剣道部なんだけど、この顔わかる?」

大鳶は顔を近付けてくる。何と無く緊張してしまう空気の中、大鳶の顔をみて、剣道部にいたかどうかを思い出す。何と無くいた気がした。なので、

「そういえば、大鳶の顔、部活中見た気がするよ。話したことないから、最初わからなかったけど。」

「え、ホント!」

大鳶はなんだか嬉しそうだった。

「そういえば、大鳶、なんではしごから落下したんだ?」

俺はさっきから気になっていた疑問を口にする。

「私ははしごの上から見る星空が好きなんだ。それで今日も星空を見ていたんだけど、見とれちゃってさ、それで足元を滑らせて落下したんだ。」

大鳶から答えが返ってきた。

「ドジだなあ。」

「・・・むうー」

俺の言葉に大鳶は頬を膨らませた。何と無くその顔が可愛く感じた。

「そういえば、毎日来てるのか?ここ。」

「ううん、たまに。ここに来ると何と無く落ち着くよね。」

「ああ。」

俺は嬉しかった。星を見るために学校に忍び込むなんて馬鹿げているとみんな思っている。でも、俺みたいに星を見るためにここにくることを馬鹿げていると思わず、むしろ、星を見るだけにここに来ることに意味を見出している人がいたことが。

「ところでさ、黒金君。」

大鳶が話しかけてくる。

「今度、一緒に稽古してくれない?私さ、剣道弱いから、強い人と稽古して強くなろうと思ってさ。」

「俺なんかでいいの?」

「そんな謙遜しないで。黒金君は中学三年の時、全国大会で優勝したすごい選手じゃない。」

「あ、うん、ありがとう。」

俺はいきなり褒められて照れてしまう。

「・・・俺でよければ喜んで・・」

結局俺は大鳶のお願いを聞くことにした。

「ありがとう、黒金君。」

大鳶は微笑む。その笑顔をみて、俺はお願いを聞いてあげるかいがあるとすぐに感じたのだった。

「・・・っ!」

俺は屋上のドアの奥から階段を登ってこっちに向かってくる足音を聞き取った。大鳶にも声をかける。

「逃げるぞ、大鳶!」

「えっ、なんで。」

「足音が聞こえる。きっと日直の先生だ。屋上にいるのがばれたら、きっと長い説教をされる。」

「でも、逃げ道なんて・・」

「それは大丈夫!」

俺ははしごの陰に隠れているドアを指差す。そして、俺は大鳶の腕を掴んで走り出す。

これが、黒金昴と大鳶渚の出会い。でも、二人はまだ知らなかった。これから二人は命をかけた死闘に巻き込まれることとなろうとは。




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