とっておき
「――あー、そろそろ五限目始まる時間じゃね?」
遼くんが空を仰ぐように伸びをして言った。
「彼方、五限目終わったら最後に“あそこ”案内しようぜ」
「んー……そうだな」
彼方くんは軽く頷いて、ちらりとボクを見た。
「蒼、最後の場所、期待しとけよな」
そう言って、ニヤリと不敵に笑う。
遼くんも歩き出しながら、振り返って手をひらひらと振った。
「行こうぜ蒼。最後の場所はマジで特別だから」
「……え?」
思わず聞き返す間もなく、二人は先を歩いていく。
彼方くんがさらに付け足した。
「最後の場所はとっておきだ。期待してくれていい」
その口元もまた、ニヤリと笑っていた。
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心のざわめき
胸の奥で、じわりと熱が広がる。
“期待していい”――たったその一言で、なぜか心がわくわくしてしまった。
学校案内なんて、ただの形式的なことだと思っていたのに。
二人は全然違う性格だ。
彼方くんは冷たそうで不器用、遼くんは明るくて人懐っこい。
だけど、なぜだろう――二人が並ぶと、まるでかみ合った歯車みたいに自然に見える。
もしかしたら、その正反対の性格だからこそ、相乗効果で周りにまで影響を与えてしまうのかもしれない。
……ボクも、その影響を受け始めているのかな?
気づけば、さっきまで感じていた重苦しい気持ちは少し薄れ、
代わりに“最後の場所”がどこなのか、楽しみでたまらなくなっていた




