正義?失望、振り向かない顔
クラスの壁
五限目のチャイムが鳴った瞬間、胸の奥から抑えきれない期待が弾けるように広がった。
“最後の場所”――彼方くんと遼くんが言っていた、とっておきの案内。
そのことを思い出すだけで、ワクワクして立ち上がりそうになった。
けれどその時だった。
突然、周りのクラスメイトたちがざっと立ち上がり、ボクの周囲を取り囲む。
「ちょっと、三日月くんも九重くんも、一ノ花くんを独り占めしないでよ!」
女子のひとりが声をあげ、他の子たちもうんうんと頷く。
「そうよ、そうよ!」
「無理してあの二人に合わせなくていいから」
クラスメイトたちの視線が鋭くて、息が詰まる。
「ち、違う……!」と慌てて首をぶんぶん振るが、声は出なかった。
結局、ボクは俯くしかなかった。
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疑いの矢
「別に無理やりした覚えねーけどな」
彼方くんが頭をポリポリかきながら低く言う。
「んー……強制したつもりねーけどなぁ」
遼くんも腕を後ろで組んで、首を傾げる。
「そんなことしたっけ?」
だけどクラスメイトの一人が切り返した。
「だって何回も連れ出してたじゃない!」
その声に女子たちが一斉に賛同する。
「そうよ、そうよ!」
空気が重くのしかかり、手にじっとりと汗が滲む。
ボクはちらりと彼方くんを見た。視線がぶつかる。
けれど次の瞬間、彼方くんははぁ、と大きくため息をついた。
「じゃあ……直接一ノ花に聞いたらいいだろ」
彼方くんの指先が、真っ直ぐボクを差した。
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沈黙
クラス中の視線が一斉に集まる。
心臓が壊れそうなほど跳ねる。
――どうしよう。どうしたらいい?
声が出ない。唇が震える。
何も言えないまま下を向いた。
その瞬間――。
「……はぁー」
彼方くんの大きなため息が教室に響いた。
明らかに幻滅したようなその吐息。
言葉を残さず、くるりと背を向けると、彼方くんはそのまま歩き出した。
「……」
遼くんも何も言わず、ただ彼方くんの背中を追っていく。
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決意
――あ。
胸の奥が冷たい手で掴まれたように痛んだ。
このままだと、二人に幻滅される。嫌われる。
その恐怖に全身が震えた。
「……っ!」
気づけば、声が出ていた。
「二人とも待って!! 一緒に行くから!!」
教室が一瞬ざわめいた。
けれどボクはもう迷わなかった。
椅子をがたんと鳴らして立ち上がると、クラスを飛び出して二人を追いかけていた。
――絶対に、失いたくない。
その一心で。




