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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
僕は友達がいない
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第9話「ははは……」

 何事もスタートダッシュが肝心とはよく言ったもんだ。

 受験勉強においても、進路選択においても、成功を収めるには最初の一手——つまり行動力が必要不可欠であり、いかに要領がよいと自負していようが、ここを躓けば結局は意味がない。

 

 もちろん唐突にこんな話をする以上俺にもなにかしらの覚えがあってこうして辯舌べんぜつをふるっているのに違いはなく、しかも冗長的で回りくどく言い淀むくらいなら、いっそのこと洗いざらい愚痴をぶちまけてしまおうと考えた次第だ。


 まあ、そのなんだ。

 端的に言えば、俺は最初から失敗したってことになる。


 ◆


 どうしてこうなったのか、そんな台詞を何度繰り返しただろうか。

 異世界での学校生活はそれなりに期待していた。

 何せ魔法学校だ、きっと授業内容も特異で魔法に馴染みのない俺ならどんな授業だって楽しめるだろうと楽観的に考えていた。


 しかし現実とはかくも残酷なもので俺が転入してから早一週間。そんな短い時間の中で、もはや取り返しのつかない状態にまで俺の立場は追いやられていた。


 具体的にはぼっちになってしまっていた。

 本来転入生などはしばらくの間嫌でも目立つものであり、辟易するまで質問なり観察なりされるものだ。


 そういった意味では確かに俺も目立ってはいたのだが、別の意味での割合が九割方を占めているので、嬉しいというよりはむしろ苦しい状況であった。他人の視線が好奇のそれではなく忌避のそれなので、俺はといえばやはり空気を読んでそそくさと逃げるしかない。


 今現在においても既に昼休みを迎えているのだが、教室で友人らと食事やら歓談やらをしているだろうクラスメート達とは対照的に、俺はトイレの個室にて籠城作戦を決行していた。


 そこで何をしているのかというと、用を足している。いやこれだと語弊を招きかねないので訂正しよう。トイレの個室で一人侘しく昼食を取っていたと。俗にいう便所飯というやつだ。


 教室に居場所のない俺はこうして昼休みが終わるまで人気の少ないトイレなどで時間を過ごさざるを得ない。

 初めの頃は自席で寝たふりを敢行していたのだが、それだと背後から悪戯をされたり(消しカスが飛んできたりする)周囲から悪口が聞こえてきたり(ちなみに俺のあだ名付けで盛り上がっていたらしく、最終的には不景気で決定のようだ)するので却下。

 おちおち気も休まらない。


 今は軽度な仕打ちで済んでるが、まさか異世界でこんな目にあうとは思わなかった。


 何度も言うが、本当にどうしてこうなってしまったのだろう。


「ははは……」


 乾いた笑いが溢れる。人間ってのは当人にはどうしようもない事態にまで発展すると、ため息よりもまず先に自嘲の笑みが口を突いて出るものらしい。  


「……ご馳走さま」


 弁当箱に蓋をし、箸を置いた。

 時間を潰すためゆっくり噛んでいたつもりではあったが、やはり量は限られている。昼食を終えても予鈴が鳴る気配はなく、さてどうしたものか。暇だ。暇である。暇をもて余すということは、それだけ人生の時間を浪費するということなので、あまり好ましいものではない。

 なので時間を活用するためにもここ最近妙に繰り返されている回想を、今度は俺の転入初日に合わせて実行してみよう。

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