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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
炎もたけなわ~フレイクエム~

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第47話「……こんなのでごまかされる程わたしは甘い女じゃない。でも、気持ちいい」

 所は変わって魔法使えない部。


 俺を含めた全部員が部室に集結していた。決闘の時間になるまでここで待機しているという訳だ。もちろん胃もたれは継続したままだ。先程から何度も腹を擦ってはいるものの、所詮は気休めだ。至って何の効果もない。これで俺にはヒーリングの能力がないことが判明した。


「……生きてる? どこか痛い?」


 俺のただならぬ様子を見かねてか、隣に立つ頸野が声をかけてきた。いつものごとく無表情だけど、眉毛がハの字になっていた。隠していたつもりだったけど顔に出てたのか。


「大丈夫だよ」

「……でも」


 余計な心配はかけたくない。とりあえず笑顔を繕って軽口を叩いた。


「俺より自分の身でも案じてろ。虚弱体質なんだからさ。だいたいお前にだけは生きてる? なんて言われたくねーっての」

「……むぅ、圭のこと心配してあげてるのに。もう知らないっ!」

「拗ねるなよ。んなこといちいち言わなくても分かってるって」


 以前せがまれたのを思い出して頭を撫でてやった。だがタイミングを誤ったのか頸野は不満げに俺を仰いだ。それから恨めしそうにぽつりと呟く。


「……こんなのでごまかされる程わたしは甘い女じゃない。でも、気持ちいい」

「じー」


 うん? 何やら背後からねめつくような視線を感じる。振り返ると伏日が微笑ましい何かを見るかのように俺と頸野を交互に見ていた。


「どうした?」


 この正直よく分からない後輩は、俺がそう尋ねるとにへらーと相好を崩してから言った。


「いエ! いえいえいエ! お二人は前々から仲がいいとは思っていたのですガ、まさかここまでとは思わなくテ。ひょっとして綾村先輩と頸野先輩は付き合っているんでしょーカ!?」

「……何を言うのかと思えばなんだそんなことか」


 一体、俺達のどこを見てそんな勘違いをするというんだ。


「お前の明るい想像に水をかけるようで悪いが、俺達はそんな関係じゃないからな」

「えー、本当デスカー?」

「そんなの決まってんだろ、……なぁ頸野?」


 と話を振ってみるものの当の本人は、


「……や、やっぱりそう見える? け、圭の恋人に見える、かな?」

「そりゃあもウ!」

「……そ、そう。ありがとう」


 いや否定しろよ! なんでもじもじしてんだよこいつは。からかい待ちかそうなのか。


「あー、うん」


 ティーカップの擦れる音がした。


「三人とも仲がいいのは結構だけどね、そろそろ控えた方がいいかなあとボクは思うよ。ほら部長さんがお冠のようだから。特にキミにね」


 ロリ先輩に窘められてしまった。しゅん。


 棚町の方へと視線を向ければ、確かに彼女は額に青筋を浮かべつつ俺のことを睨んでいた。


「余裕ね、綾村くん」

「そう見えるか?」

「見えなかったら言わないわよ。さっきまで砂浜に打ち上げられた鯨みたいだったのに、今はイワシの群れを見つけた鮫のようよ。頸野さんや伏日さんと和やかにお喋りしたからかしら」


「……おかげさまでな」


 とは答えるものの、既に生きた心地のしない俺である。


 今の心境を例えるならば戦場で「この戦争が終わったら故郷に帰って結婚するんだ……俺の弟が」という話を聞かされた兵士のそれに近い。ある意味恐ろしいよね。


「別に会話をするなと言っているつもりはないのよ。ただ、大事を控えている最中にそういうのは自重して然るべきだと私は思うわ。大体、くっちゃべっている暇があるのなら決闘の作戦でも何でも思案しているのが普通じゃない?」

「そうは言うがな」


 今更あれこれ考えたって仕方がないことに俺は気付いたんだ。テスト前の一夜漬けじゃあるまいし、物事に挑戦する前に身につけた付け焼き刃なんざ役に立たないんだよ棚町。それならこうして駄弁でもつらつら重ねて緊張を少しでも和らげた方が得策じゃないか。心なしか胃の痛みも落ち着いてきた気もするし。いやまだ痛むけど。


 そもそもの話、決闘の時間までもう残り時間少ないだろう、と俺は棚町におっかなびっくり説明してみた。時間がないのは俺がふざけているせいだと一蹴された。理不尽だ。


 お決まりのやり取りをしていると本当に約束の刻限が来てしまった。


「もうこんな時間か」


 時間の流れはこんなにも早い。あの夏で待っていてはくれない。通りでファンタジー作品に登場する時間を操る魔法は強力な訳だ。文字通り次元(時限)が違うってね。つまんな。


「そろそろ行きましょう」


 部長である棚町が先頭に立ってそう促すので、俺達は勇者一行よろしく一列のパーティーとなって部室を後にした。


 ティエリア先輩と決闘を行う闘技場は、ここから渡り廊下を隔てた北棟にあった。おかげで移動に手間暇がかかる。いっそ移動魔法でも使えれば便利なのだが、現実はそうもいかない。

 魔法の使えない俺達はただひたすらに歩くしかないのだ。変に目立つ集団なので行き逢いの生徒からじろじろと見られながらな。


「目的地まで果てしないデスネ」

「そうだな」


 だけどその方が俺達らしいだろ?

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