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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
壁に耳あり障子にミザリー

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第32話「どんだけあるんだよ」

 さて翌日のことである。


「——昨日はすみませんデシタ、綾村先輩っ!」


 部室にていきなり下級生に謝られた。


「ミザリー、アナタのことを先輩だとは知らなくて失礼なコトをしてしまいマシタ。その……腕は大丈夫デスカ? 痣になってはいませンカ? もしも傷物にしてしまったのならミザリーが責任をとって綾村先輩を幸せにしマス。結婚してくだサイ!」

「ああ、それなら大丈夫だから」


 なんで後輩にいきなりプロポーズされているんだ俺は。


「ホントデスカ? なら証拠を見せてくだサイヨ! ……わァ、平均的な男性に比べてなんト貧弱な細腕デショウ! さては日頃鍛えてませンネ?」

「えっ、何この二段階手のひら返しは。新しいボケのスタイルを模索してんの?」

「なら一緒にお笑いコンビをやりまショウ! 名前はミザリーと圭なんてよくないデスカ? なんか時計みたいで面白いデスヨ! ——ってなんでやねン! キミとはもうやっていられんワ! ミザリーは実家に帰らせてもらいマス! アハハハハ!」


 ノリツッコミが決まっていた。


「元気だなお前……」

「ハイ! ミザリーは元気さとスタイルのよさと頭がよろしいのと博学なのと人なつっこさとマスコット的な愛くるしさだけが取り柄ですカラ!」

「どんだけあるんだよ」


 部室中央のテーブルから距離を置き、俺の定位置となりつつある隅っこの方でパイプ椅子を引く。俺たち以外の姿はなかった。やるべきことは特にない。伏日に視線を向けると、彼女はテーブルに何やら大小様々な小物を並べていた。薬品だろうか。いつの間にか白衣を着用し、ふんふん鼻歌を口ずさんでいる。高いソプラノボイスが耳に馴染んだ。


「何を始める気なんだ?」


 尋ねると伏日は鼓を打ちつけるように「言ってませんでしたネ」と手を合わせる。


「実はミザリー、魔力が無くても魔法が使えるようになる方法を探しているのですヨ。魔法と科学の融合、魔科学って奴ですネ」


 豊満な胸を張って得意気に言った。目の前で暴力的にぶるんと揺れる双峰に思わず釘付けになってしまうが、伏日はそんな俺に構わず続ける。


「ミザリーはですネ、考えるのデスヨ。せっかく魔法が存在する異世界なのに使えないなんてもったいナイ。どうにかして使えるようになれバ、転生者の皆サンも肩身の狭い思いをしなくても済むト」

「それは……」


 確かに伏日の言う通りである。この学校では魔法が使えないイコール落ちこぼれに直結するため、とにかく過ごしにくい体制となっている。中には担任の先生のようにそれも一つの個性として認めてくれる人もいるが、やはり少数側の人間だ。こればっかりは仕様がない。いくら努力しようがないものはないのだから。仕様とはそういうもの。そう俺は割り切っていた。


 しかし伏日は違っていた。魔力が存在しないことを真っ向から受けとめ、ハンデを背負っているにも関わらず、それを嘆いたり諦めたりするでなく別の方法を考えると。努力の方向性を自ら求めているのだから感心する。


「……実はですね、ちょっぴり憧れてるんデス魔法に。ミザリー昔から漫画とかアニメが好きだったのデ、どうせならミザリーも魔法少女になんてみたいのですヨ」

「へぇ意外だな。そうは見えないんだけどな」

「よく言われマス」


 照れくさそうに伏日は笑った。


「それじゃあ綾村先輩、続きをさせてもらってもいいでしょうカ?」

「ああ、悪いな」


 両手に小瓶を抱えたまま伏日が聞いてくるので首肯する。すっかり研究の邪魔してしまったようだ。ならば俺は傍観者に徹するとしよう。なのでここからは閑話。


 いやしかしいきなり出来た後輩に先輩と呼ばれるのはなかなかどうして嬉しいものがある。ましてやこんな美人な後輩であるからして実に鼻が高い。正にこの部様々ではなかろうか。


 よし、ここはこの部を創部してくれた棚町に感謝しておこう。


 ありがとう! 可愛い! でも好きじゃない! 


 ……なんか色々と間違ってないか?


「実益の前では目的は毛ほどにも霞むのか……!」


 さておき伏日へと視点を戻そう。


 爆発が起きていた。


 ——なんで?

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