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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
担任の先生はネームレス権兵衛

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第25話「せんせー、魔法が使えない綾村くんには関係のない話だと思いまーす!」

「え、えーと、今日は、まりょ、魔力について復習をしてみます」


 ふと覗いた窓の外には相変わらず青天が続いている。雲霞の先で何やら歪な形の飛行物体が片鱗を見せており、その実とんでもなくファンタジーの様相を呈していた。見なかったことにしよう。


「ま、魔力とはその名の通り魔法を使うための力でぇっすね。……え、綾村くん、『じゃあ魔力量って?』ですか?」


 言ってねぇよ。


「魔力量はね、い、一日に使用できる個人の魔法の使用回数を示したもので、これが多ければ多いほどよりたくさん魔法が使えます。一般的には、じっ、十回くらいの人が多いですね」


「せんせー、魔法が使えない綾村くんには関係のない話だと思いまーす!」


 どっ、あはははは。教室のあちこちから笑い声が飛び交う。

 やーホントこのクラスはみんな仲よくて素敵ですね。

 きっと一部を除いてイジメなんかないんだろうなぁ。

 ……晒し者かよ。


 それとな棚町、お前までどさくさに紛れて笑うなよ。後ろからまる聞こえだぞおい。


「あ、あわわわわっ、せ、先生はそんなつもりで説明したんじゃありません!」


 ネタを振ったのはアナタじゃないですか。ネタを拾う方も拾う方だけど。


「こ、こらぁーっ!静かにしてください! みんな、綾村くんを笑っちゃいけません! せ、先生だって怒る時は怒るんですからね!?」


 ここは小学校か。それと怒る時はあんまり吃らないんですね先生。


「こ、こほん、話を戻しますね」


 ついでに俺の立場も取り戻してください先生。腹と心が痛いです。


「え、えーと、先生どこまで話したかなぁ……。んー、た、棚町さん分かる?」


「知りません」


 即答かよ。知らないなら知らないで、せめてもうちょっと申し訳なさそうに言えよ。


「それぐらい自分で覚えていてください。仮にも教師ですよね?」


 手厳しいなおい。なんでそんなに態度がツンドラなの? 声音が凍てついてんの? 発言が冷え切ってんの? クラスメートのみなさんが引いてるよ? いいぞもっとやれ!


「ごごご、ごめんなさい棚町さん! こんなのが先生なんかでごめんなさい! どうしようもない蛆虫でごめんなさい! ううう、お母さん、生まれてきてごめんなさい~っ!」


「……なんか地雷踏んだみたいだぞ。どうにかしろよ、このままじゃ授業に支障をきたすぞ」 


 まあもうなってるけどな。


「どうしようもないわね。それよりも綾村君、授業中まで貴方のその殺人鬼じみた顔を見たくないから私の方に顔を向けないでもらえる?」


 ですよね。


 ——五分後。


「ただ、魔法は使用するランクによって消費される魔力がつがってくるので(訛りだろうか)、必ずしも一日に十回使えるとは限りません」


 なんとか先生には本来の責務を思い出していただいて授業再開。これでようやくあのキノコでも生えそうなどんよりじめっとした空気は払拭された訳である。一応補完しておくが先生を宥めたのは「~だよ、知らないの?」が口癖の女子だ。名前は分からん。


「せんせー、限度を越えて魔法を使うとどうなるんですか?」


 そりゃあ『メ○ミをつかった、しかしMPがたりない!』になるだろうよ。


「ちゅっ、使えるには使えます。けどその場合は最悪身体を壊してしまいますし、下級魔法を数回しか使えないので、みんなは真似しないでね」


 メリットがほぼなくのにデメリットが際立つならまあ真似なんてしないだろ。俺には関係のない話だが。


「そんな魔力ですが、睡眠を取ることで回復します。こ、これは眠ってる間に体内で魔力因子が形成されるからですね」


 異世界でも、寝る子は育つってか。汎用性のあることわざだこと。


「他にも魔力には——」


 先生がそこまで言った所で、授業終了を告げるチャイムが鳴った。


「……あう、じ、じゃあこの続きは次回に持ち越します」


 この先生には休み時間を削ってでも授業の進行を押し通す強行姿勢が見受けられないので楽でいい。


 起立、礼、着席、よし号令も終わったし、さっさと用事を済ますか。


「先生」


 すたすたというよりはとててっとした足取りで教卓に向かう。急に声をかけたせいで先生はびくっと身構えたが、相手が俺だと知るとなお身体を硬くした。失礼な反応だな。


「なななな、なにかな綾村くん? も、もしかして、さっきのことを根に持って先生のことを正義の名の下に誅殺しに来たのかな!?」


「俺を何だと思ってるんですか。違います、入部届けの用紙をもらいに来たんですよ」


 どこの組織の回し者だと思っているんだ、この先生は。


「そそそ、そっかぁ、よかったぁ、先生、早とちりしちゃったわ。あ、でも綾村くんが部活に入部を決意してくれてホッとしたわ。クラスに馴染めてないかなって心配してたんだから」


「は、ははっ、そうですね……」


 乾いた笑いしか出ねぇ。その心配は杞憂じゃないですよ先生。さっきのやりとりから分かるように、立派にハブられてます、俺。

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