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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
ボーイフレンド(仮)
17/54

第17話「これでキミも魔法使えない部の一員だよ」 「(仮)ですけどね」

「私は男が嫌いなの」


 声高にそう主張する彼女。

 どうやら寸暇の会話ならいざ知らず、毎日顔を合わせるのは勘弁ということらしい。

 困った、このままでは本当に四面楚歌になってしまう。

 そうなればバッドエンド一直線だ。

 どうにかならないものだろうか。

 だって俺には他に居場所がないんだよ。


「……ふむ」


 ロリ先輩が顎に手を当て、何かを考えるような素振りをする。どうでもいいけどその仕草超可愛いな。是非とも家に持ち帰って愛でたい所存だ。ヘベフィリアじゃないけどな!


「キミ、一つボクの質問に答えてくれるかな?」

「ええ、それはいいですけど、何ですか」

「コーヒーとお茶、キミはどちらが好きかい?」


 質問と言うから何を聞かれるかと思いきや、なんだよそんなどうでもいいことか。

 ……いやそんなことはないなやっぱり。

 他人に質問するということは相手に興味を持つことと同義だ。 

 つまり少しはロリ先輩も俺に関心があるという訳で。

 うん、悪くないな。


 それにかの者はこう言った。何だかんだと聞かれたら答えてあげるが世の情け——と。


「うーん、やっぱりお茶ですね」


 それも緑茶な。なんたってごはんのお供に最適だからだ。たまに食卓に炭酸飲料を持ち出す輩がいるが、俺から言わせればそれは邪道も邪道である。一体どこの会社の回し者だよとつい勘繰ってしまう。

 もちろん油ものには烏龍茶、これ鉄板。否、鉄則。俺が勝手に納得しているとロリ先輩が諸手を挙げかねん勢いのまま詰め寄ってきて、


「そうだろうそうだろう、やはり日本人と言ったらお茶に決まっているよ。ふふん、なかなか見所があるじゃないかキミ、気に入った。なので特別に便宜を図ってあげよう」


 後ろ盾になってくれる宣言。

 二対一(当然俺が一対側)だった先の状況が逆転し、今やロリ先輩が味方陣営にいる。ありがたい話だ。


「ロリ先輩は紅茶派じゃなかったんですか?」


 はっ、止めとけ。彼女は綾村サイドの人間だぜ、黙っていろ小娘が!


「紅茶だろうが日本茶だろうが茶は茶だよ。ボクの持論では、お茶好きにあんまり悪い人間はいないんだよ」

「その持論の論拠がよく分からないのですがそれはさておき。……一応聞いておきますが何が言いたいのですか?」

「ふふん、愚問だね——」 


 そこでたっぷり三秒ほど溜めの時間を作り、しっかりと印象付けておいてから発言に移る。


「彼をこの部の籍に入れたまえ。これは先輩からの命令だよ」


 さすがロリ先輩! おれにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!    

 ……まあ某五番隊の隊長曰く、憧れは理解から最も遠い感情らしいけどな。


「お言葉ですがこの場における全ての権限は私に一任されています。ですので彼の入部を認めないという私の意思は、それすなわち部の総意であるといっても過言ではありません」


 なるほど確かにそれだったら仕方ないよな——って明らかな権限乱用じゃねぇか!


「まあまあ。今まで男手が足りなかったんだからこの際思いきって仮入部させてみたらどうだい? 彼も雑用係から下僕まで幅広く何でもやってくれると言っているし」 


 いや言ってないですけど。全然、少しも、全く、これっぽっちも、そんな一言は言ってないですけど。というか何故に同級生に従属の誓いを立てねばならんのでしょうか。


「そんなぼっちに一体何が出来るというのですか? 空気汚染でもするんですか?」


 ハッて鼻で笑われたよ鼻で。

 人様をバイオテロみたいな扱いしてんじゃねぇよ綾村菌タッチすんぞ。

 二秒で全身を駆け巡るからな、覚えとけ俺のトラウマ。


「いざという時の防壁にはなるだろうさ、和紙のように薄っぺらい装甲だけどね」


 おい、なんか俺ひどい言われようなんだけど。泣いてもいいかな、いいよね。よし泣くぞ。ははは、しまいにゃ泣くぞ。……泣くぞ。


「それにだよ部長さん。例の期限まで残り僅かだけど、果たして人員に当てはあるのかな?」

「それは……っ、ないですけど」

「だろう? ——肝心の疵梨さんは知っての通りあの様で、ボクやキミは最初から論外。伏日さんも荒事は駄目で、頸野さんに至ってはもっての外だよ」


 何やら意味深長な会話。見る見る内に顔を曇らせていく部長とは正反対に勝ち誇った表情をするロリ先輩。これは、なんだかよく分からないがいけそうな気がする。


「ま、物は試しという奴だよ。どっちにしろこのままじゃ不戦敗で黙って立ち退くしかないんだからね、一か八かのギャンブルも悪くはないだろうさ」


「……分かりました」


 おおっ、あの渋面たっぷりだった部長を肯定させただと。いくら童顔とはいえ(関係ない)、やっぱり年長なだけあるではないか。口八丁な人間はいいなぁ、素直に羨ましい。


 部長が俺に向き直る。口をへの字に曲げ、釈然としていなさそうな表情を浮かべながらも、けれども最後には濃厚な諦めの色を滲ませて言う。


「誠に不本意ながらも」  


 だからその汚物を見るかのような目を止めろ。俺は紙装甲なんだ、丁重に扱え。


「貴方を我が部への仮入部を認めます。あくまで『仮』ですが」 


 仮を強調するな仮を。くそ、いつか必ず「仮は返したぜ」とか言って正式に入部してやる。


「おめでとう」


 ロリ先輩のパチパチパチと乾いた拍手が鳴り響く。どうでもいいんですけどもう少しやる気を出してもらえませんかね?


「これでキミも魔法使えない部の一員だよ」

「(仮)ですけどね」


 だからうるせえって。

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