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転生しても俺は魔法が使えない  作者: 佐佑左右
ボーイフレンド(仮)
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第15話「ちなみに私たちも転生者よ」

「その表情を見るに、貴方も彼女たちのことを知っているみたいね」


 ……ああ、今度ばかりは正解だよ。 


「やっぱり今回も同じケースのようね」

「同じケース?」

「私たちの共通点の一つよ。ここの部員はそれぞれみんな死神と会っているのよ」

「もしかして、ステュクスとぺルセポネの事ですか?」

「後者の方は知らないけど、そうみたいね。……それとその気持ち悪い敬語をいい加減止めてくれないかしら。さっきから背中が薄らかゆくて仕方がないのよ」

「分かった、そうさせてもらう」


 即決。

 いやー自分でもタメ口にするタイミングがなかなか見つからなくて困ってたんだよ。

 ほら、こういうのってさ自分から言い出しにくいだろ?


「ちなみに私たちも転生者よ」


 これまた重大な秘密がカミングアウトされた。

 これが前世だったら確実に電波を帯びていること間違いない台詞である。

 平時なら是非ともお近づきになりたくない相手だろう。

 だが今の状況においては全くの正反対で、孤立無援かと思いきや同士がいたことにより俺の精神安定度は多いに右肩上がりである。

 非常に喜ばしいことだ。

 ヒトリボッチステーションは寂し過ぎるからな。


「そうなのか……、いや仲間がいてよかったよ」


 そんなこんなで内心で欣喜雀躍きんきじゃくやくとしていれば、


「勝手に貴方の仲間にしないでくれるかしら、虫唾と怖気が同着一位で安堵と共感が周回遅れで身体中を駆け抜けるから」

「うん、なかなかに馴れ馴れしいね。そういうの嫌いじゃないよ。嫌いじゃないというだけで好きでもないけども」


 などときたもんだ。

 まあいい、とにかく彼女たちも俺と同じだというのならつまるところ転生の先輩であるということであり、ならば転生して日の浅い俺は目下へいこらして乏しい情報の外堀を埋めることが先決だと考える。

 とりあえず、これを聞いておかなければ。


「な、なぁ、やっぱり二人も前世は日本人なのか?」

「そのようだけれど、故人の個人情報をいやらしく調べてどうするつもり?」


 いやどうもしないけど。あといやらしくねぇっての。


「……って、やっぱりそっちも死んでるんだな」

「当たり前でしょう。でなければ転生なんてしてないわよ。ところで一応聞いておいてあげるけど、貴方の無様な死因は何かしら?」

「交通事故だよ。しかも神様とやらの手違いで本来なら別の奴が死ぬ予定だったんだと」


 勝手に無様にされているのは腹立たしいがひとまずそれを飲み込んで質問に答えると、部長は何やら渋い顔をしている。ロリ先輩も同様だ。なんか地雷でも踏んじまったか?


「……やっぱり同じだわ」


 なんか独り言っぽいので返事をするとまた怒られてしまうかもしれないが、明らかに意味深発言なのでここは素直にその発言を拾っておこう。 


「今度は何が同じだって?」

「死後における手違いとそれに伴う処理の方法、よ」


 えらく物騒な文字群だな。


「私とロリ先輩も同じことを死神から告げられたのよ」

「うん。もっともボクの場合は交通事故ではなく偶発的な火事で焼け死んだんだけどね。あるいは作為的とも言えるかな? 自分の気づかない内に色々と恨みを買ってたかもしれないしね、ふふふ」


 それ、笑いながら言うことじゃないでしょうに。

 なんで「日焼けサロンでちょっと肌を焼きすぎちゃったよ」みたいな軽いノリなんだよ。

 病んでんのか、この人?


「私は明らかに人違いで殺されましたけどね。思い返すと何故だか痴情のもつれの果てに刺されたことになっていてとても腹ただしいのですが」

「あー、よくあるよくあるドンマイ」


 よくねぇよ、そんな連日連夜報道されそうな事件がそう何度も起こってたまるか! 


 ……と言いたい所だが、実際その通りではある。


「一酸化炭素中毒になるとね、身体の自由が利かなくなるんだよ。ボクの場合、煙を少しずつ吸ったせいで朦朧としながらも意識はあってね、そりゃあもう苦しかったなぁ。生きたまま自分の身体が焼かれる体験をしたのは、後にも先にもこれだけさ」 

「私はどこかの勘違い男にいきなり背中を刺突されましてね。振り向き様にこっちの顔を確認するなり男はやっと己の勘違いに気づいたのでしょうけど、顔ばれを理由に私はその場に押し倒されました。『お前が悪い! 俺を勘違いさせたお前が悪い』って。そしてメッタ刺しです。かなり痛かった。あれはないです」


 だからなんでガールズトークがこんなに沈鬱になる内容なんだよ。妙に重すぎるだろ。


 ……くそ、どうしよう。

 気軽に声をかけるのも憚れるし、かといって意識し過ぎるのも何か腫れ物に触るみたいで駄目だよな。

 こんな時どういう表情をすればいいんだろうか。  


「まあそれはそれとして、貴方これがどういう意味を持つか分かるかしら?」

「別に……。単に俺達はたまたま死神と出会って、それで運よく転生させてもらっただけの話じゃないのか?」

「これはティースプーン一杯程度の善意からくる忠告なのだけれど、あまり死神を信用しない方が身のためよ」

「なんでだよ。異世界でわざわざ放任せずに手取り足取りやってくれたんだぞ」

「あのね、少しはおかしいと思わなかったのかしら。例えばそうね、なんで私達に魔法を使う力を与えなかったのか、とか」

「それはステュクスが忘れたからって聞いたけど……」


 言いつつ、そこには同意せざるを得ない。

 先述の不備というのも、このことであるからだ。


 俺は事前に魔法が栄える異世界に転生する旨を伝えられていたし、そのことを当該者であるステュクスが失念するはずもないだろう。

 魔法が使えて当然の世界で魔法が使えないなんてそんなのはまるで差別してくださいと言わんばかりの愚行だ。

 よって他の何よりも優先すべき事項ではないのだろうか。

 なのでただ忘れただけという線はないはずだ。

 まあそう思いたいこっちの都合なんだけどな。

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