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バナナボートで異世界へ  作者: 秋野 木星
第二章 王都への旅 VS 古民家改修
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side ミノル ピエールとの出会い

ミノルはリノと別れた後、一人で領事館に行った。だが、「センガル村を担当しているトトマス男爵は領地の視察中なので、今日は外出しております。御用がありましたら、二日ほど日を置いて、またお訪ねください」と係の人に言われ、がっくりと肩を落とした。


どーすんだよ。1300バルぽっちじゃ、武器が買えないじゃん。

それよりなにより、その間、リノに養ってもらうわけだ。もう社会人になっていたミノルにとって、高校生の妹に養われるなんて屈辱だ。

さっき、食料品店で金が払えなかった時、男のメンツが丸つぶれだった。



領事館を出ようとしていた時、杖をついた老人にぶつかりそうになったミノルは、とっさに「すみません」と言った後、顔を見て外人さんだったので「ソーリー、あ違った、エクスキューズミーだった」と謝った。


最近は地方にも外人の観光客が増えたので、リノと一緒に町に出た時にこういう場合の謝り方を教えてもらっていたのだ。

地元の工業高校を出たミノルとは違い、リノは町の女子校に通っていたので、英語の勉強はリノには負ける。


ちゃんと言えたかな?と思い、老人の方を見ると、その人はミノルの顔を凝視したまま固まっていた。


あれ? ボケてる人だった?


失礼なミノルである。このあたりは、リノと兄妹といったところだろう。


老人は、ものすごい力でミノルの腕を捕まえると、唾を飛ばしながら問いかけてきた。


「そ、その言葉をどこで習ったんですか?!!」


おー、ビビる。すげー迫力だ。ちょっと怖いんだけど……。

でもこの人、外人じゃないのか? 日本語を話してるな……あっ。


気がついたようだ。そう、ここは、異世界なんですよ、ミノルくん。


「妹に習ったんです。でも、間違えました」


「いや、間違ってはおらん。それは英語だろう? ……もしかして、妹さんというのは、リノさんかね?」


「あー、リノを知ってるんですか。そうです」


なんだ、リノの知り合いか。よかった、変な人につかまったかと思ったぜ。


ミノルは胸をなでおろした。おかしな老人に引きずられて、どこかに連れていかれるのかと、心配していたのだ。






ひと安心したミノルだったが、結局、その老人に連れられてどこかに行くことになってしまった。どこかとは、リノも先日、行った騎士課だ。


「騎士課」だなんて聞けば、誰でも行ってみたくなるよな。なんとも男心が浮き立つ名称だ。


老人の名前はピエールといった。同じ地球から来た異世界人の先輩で、酷いホームシックを患っているとリノが言ってた人だな。


「それでミノルくんは、なぜこちらに来ることになったんですか?」


そこは疑問だよな、自分でもわけわからんもの。


「それがよくわからないんです。リノがいなくなったので、海で探してたら、知らないうちにこっちに迷い込んでたみたいで……。出会いヶ浜で、偶然、リノに会わなかったら詰んでました」


「そうかね……ここ何十年もこの国には異世界人が訪れていないんだよ。それが、ここにきて急に二人の異世界人が現れた。どういうことなんだろう……」


ピエールさんは深い考察に入ったようだったが、ミノルの方は、窓の外で訓練している騎士の姿を見るのに忙しかった。


モノホンの騎士だぜ! スゲー、あの大剣を振り回せるのか。

そういえば身体強化を使ったら、俺もできるようになるんじゃね?

あれ、絶対やってみたい。武器は大剣で決まりだな。


妄想が止まらないミノルだった。



ピエールが課の受付で手続きをして、案内されたのは騎士課長の部屋だった。


大きな部屋の壁には、磨かれた大剣や槍などがかかっており、奥の机にはヒゲずらの大男が座っていて、机の側にものすごいイケメンの兄さんが立っていた、が。


その人たちは、ピエールさんを目にすると飛び上がり、すぐにそばにあった応接セットのソファに丁重にお迎えしていた。どこかの王様でも迎えるような二人の対応に驚いていたミノルも、ついでにピエールのそばの椅子に座らせられた。


「そんなに気を使わなくていいよ。オータム伯爵から直々に使者をいただいたものでね、レトという男を訪ねるついでに私がこちらに来さしてもらったんだ」


「レト?」


大男はわからなかったようだが、イケメンの兄ちゃんはすぐにわかったようだった。


「総務課の男ですよ。リノさんと知り合いらしくて……私が呼んでまいります」


そう言って、部屋を出ていった。


おいおいリノ、お前、あんなイケメンといつ知り合いになったんだよ。その上、レトだって? まだ男が出てくるのか……これは、親父に相談案件だな。




ミノルがそんなことを考えている間に、騎士課長らしき大男とピエールとの話は進んでいた。


「それで詐欺師が奪った荷というのは、うちの会社に頼まなければならないほどたくさんあるのかい?」


「ええ。かなり大掛かりな詐欺事件だったようです。私も王都から来た警察官に協力を要請されなければ、犯人が船を使って他国に逃げていても気づかなかったでしょう。ラボが、いやその警官の名前なんですがね、私の姪がその警官に嫁いでいましてね、そのラボがこっちに派遣されたらしくって、私を頼って来たんです。ラボが言うには、主犯の男が他にいて、今回捕まった者の中にはいないんじゃないかって、言うんです。それで、先ほども副官のブラン騎士と捜査の手順を確認していたんですが……」


騎士課長のおっさんは、ピエールさんを前にして緊張しているのか、なんだか話にまとまりがない。いったい何を言いたいんだ?


「ふむ、まだ完全には解決していないんだな。今、こっちの支社には大容量の収納持ちがいないんだよ。それで、私の収納に荷を預かって、王都に飛ぼうかと思っていたんだが、話が長くなりそうだとちょっと……そうだ、ちょうどここに、あのリノさんのお兄さんがいらっしゃる。ミノルくんも、異世界人パックと魔法全般対応が付いていたかい?」


「へ? あ、はい、付いてました」


完璧に他人事で話を聞いていると、急にこっちに振られたので、キョドってしまった。


「ええっ?! ()()リノさんの?!!」


おい、リノ。お前、何やったんだよ。



ひげ面の大男がのけぞるほど驚くとは、うちの妹は、いったい何をやらかしたのかと、ため息を吐くミノルだった。

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