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バナナボートで異世界へ  作者: 秋野 木星
第一章 異世界転移
4/60

スキルポイント

こんな暑い夏の日に、踏み固められた街道をテクテク歩いていくなんて、無謀もいいとこよね。


無常にも異世界の空は晴れ渡っており、雲が作る陰一つない。

帽子も靴もないリノは、街道沿いに時折、現れる木々の木陰を頼みにしながら、何とか東に向かって歩いていた。


口に含んでいたアジのみりん干しは、微かな旨味と大量の塩分をリノにもたらしてくれている。

汗をかいてるから、塩分補給ができてるのはありがたいけど、今度は喉が渇いてきたんですけどー。


「あー、口の中がしょっぱい。水が飲みたい。どこかに川か湖でもないかなぁ」


閉じていた<地図>を開いてみると、東の集落に行き着く手前に川が流れていることが分かった。

ん、あれ? 名称が記入されてる。

西の集落には「ヒュータ」、東の集落には「センガル」の文字が追加されていて、リノが泳ぎ着いた浜にも「出会いヶ浜」と書かれていた。

ただ、村の名前は薄い灰色の文字で、出会いヶ浜だけは黒くくっきりした表示がされている。このことから考えると……。


「この地図って、ゲームみたいに経験値を反映していくタイプなのね」


ということは、もしかして……。


<ステータス>


名前 リノ

年齢 17歳

人種 アサヤ系異世界人

分類 女


体力 52/70

魔力 116/120


スキル 異世界人パック, 魔法全般対応


レベル 1  New

スキルポイント 16  New



「やっぱり、なんか追加されてる~」


何がスキルアップの条件なのかわからないけれど、この表を見ていると、行動するに従い経験値がスキルポイントとしてたまっていっているような気がする。

そして体力が減っているのはわかるとして、魔力が「4」消費されているのが不思議な感じだ。


「なんも魔法を使ってないよね。大体、今の今まで魔法全般対応のスキルがあることをコロッと忘れてたし」


自慢にならない忘れっぽさである。


「あ、<地図>があった! これって、魔法だよね! ということは、<地図>を二回使ったからマイナス4ポイントってこと? それとも<ステータス>を見るたびにポイントが減るのかなぁ?」


少しは頭も使うようだ。


「うー、ややこしい。こんなチマチマした数字の上がり下がりなんてどーでもいいのよ。要はお得なボーナスポイントを何に使うかだけよね」


大雑把で現金なこの性格はさすがリノである。


「よし、スキルポイントは、異世界人パックと魔法全般対応に8ポイントずつ割り振ればいいか。ここをこうして、ちょちょいのちょいっと」


即断即決、大胆というか、なんというか。



表示は、


スキル 異世界人パック 8, 魔法全般対応 8


レベル 1  

スキルポイント 0


このように変わった。


これがどう影響していくのか、これからのことを見てみないと誰にもわからない。




こんな検証に時間をとられたものの、街道はさすがに歩きやすかったため、しばらく行くと遠くに家々が見える川の側までやってきた。


「やっとここまで来たー! 川だ、魚がいる!」


あ、ここから降りられるね。ちょっと疲れた足を川に浸したい。

街道から川辺まで三段ほどの石の階段があったので、リノは一番下の階段に座り、長いこと歩き続けて傷んだ足の裏をトプンと水の中につけた。

サラサラと流れる水は、火照った足の熱をすぐに冷やしてくれる。


木を組んで作られている橋の下には涼し気な藻が水に揺れており、その間を黒い魚の影が何匹も泳ぎ回っていた。


「のどかだなぁ」


こんなにぼんやりと景色を見たのはいつぶりだろう。

子どもの頃にはよくこうやって川や海で遊んでいたけれど、中学、高校と進学していくうちに、こういう何気ない遊びの時間をなくしていったように思う。



「おーい、旅人さんよぅ。ゆっくり休んでんのにせかすようで悪いけんど、今日、村に泊まりてぇなら、そろそろ腰をあげねぇと宿が取れねぇぞ」


突然リノに声をかけてきたのは、鍬を肩に担いで川上から歩いてきたお百姓さんだった。


「あ、はい、ご親切にありがとうございます。あの、おじさんのお勧めの宿を教えてもらえます?」


リノがそういうと、お百姓さんは日に焼けた顔をくしゃくしゃにしながら豪快に笑った。


「ハハハハッ、お勧めもなんも、村にはトメばあさんとこしか泊まるとこはねぇよ。それも三部屋しかねぇ。休みの時なんか、部屋を取り合って争奪戦だぁ」


「ええっ、マジですか?」


「マジマジ。ま、トメばあさんが作る飯が美味いってのもあるけどよ。休みにゃあ、町に住んでる貴族様も泊まりに来るのよ」


「美味しいご飯……ゴクッ」


忘れようとしていたお腹の虫が、またグゥウとやかましく鳴き出した。


リノは川の水をすくって乾ききった口の中を湿らせると、おじさんの後について再び歩き始めた。


「あ、尻尾」


少し外股になって歩いていくおじさんのお尻には、ふさふさしたまん丸い尻尾が揺れていた。

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