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バナナボートで異世界へ  作者: 秋野 木星
第一章 異世界転移
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飛びます飛びます

大きな街道から離れて、いよいよ森の中に踏み込んでいく。


その前に、<収納>から軽鎧のベストを出して身に着ける。

籠手の方はどうしようかと思ったが、何かあってはいけないので左腕につけておいた。


暑い。こういうのは真夏に身に着けるものじゃないね。

文句を言ってても始まらない。サッサと行きますか。


森の奥に入ると、目の周りを飛び交う小虫が多くなってきた。うっとうしくなったリノは、自分の身体に()うように張っていた防御結界を一回り大きくした。そうしたことで、違う恩恵もあった。顔の周りに突き刺さろうとした小枝が、結界に拒まれてパキパキ折れていくのだ。

この音は、小気味いい。


頭の上からチュンチュンチュクチュクとものすごい数の小鳥が鳴く声がする。いったい何を喋っているんだろう。不審者がやって来たぞと警戒しているのかな。


夏の日差しは、深い森の木々の間にも力強く差し込んできており、今日も暑くなりそうだ。


藪をかき分けて進みながら、リノは時折、上を見上げてビワの葉を探す。

あの特徴的な深い緑色の葉を見逃すことはないと思うのだが、なかなか見つからない。


……………………。


ちょっと待てよ、もっと効率的なやり方があるんじゃないかな。


「そういえば、異世界人パックスキルの中に<鑑定>がなかった?」



ステータス


名前 リノ

年齢 17歳

人種 アサヤ系異世界人

分類 女


体力 84/90

魔力 130/140


レベル 2

スキル 異世界人パック 8, 魔法全般対応 92

スキルポイント 139



あれ? スキルポイントが100超えてるよ。いつの間に溜まったんだろう。

それより、スキルのチェックだね。


リノが「異世界人パック」スキルの文字をタップすると、詳しい表示が出た。



レベル 2

スキル 異世界人パック(鑑定, 収納, 全言語対応自動翻訳, 環境適応, 地図) 8, 魔法全般対応 92

スキルポイント 139



「やっぱり、あった」


ということは、【サーチ】と【鑑定】を併用して……ビワの木を探せ~。


お、あるね。でも方向や距離がわかんない。


「そうか! 地図に反映させればいいんだ」


ウィンドウを<地図>に変えると、今度はハッキリとビワの木の位置がわかった。

目標地点は星のマークで表示されているので、点滅している自分のマークを、そちらに移動させていけばいい。


「おー、これは便利」


近い所はこっちかな。


リノは勢いよく藪をかき分け、進み始めた。



ようやくビワの木の根元に着いた時には、リノの顔には汗が伝い、軽鎧を着ている身体は熱く重くなっていた。


「ふぅ~、暑い」


このセリフって、言わなくてもいいのについ言っちゃうね。

ちょっと休憩しよう。


リノはビワの木の根元に腰を下ろして一休みすると、<収納>からコップを取り出し、一気に水を飲んだ。


「美味しい~。この水、まだ冷たいや」


コップの中の水は、朝、宿屋の井戸から汲んだままの冷たさで、リノの喉を潤してくれた。



さてと、さっき見た時にあったスキルポイントを割り振っとくか。


リノは座ったままで、<ステータス>画面を出し、ポイントを移動させようとして手を止めた。



体力 57/90

魔力 119/140


レベル 2

スキル 異世界人パック 8, 魔法全般対応 92

スキルポイント 147



あれ? 数字が違う? なんとなく違うような気がするが、よく覚えてない。

ま、いいや。めんどくさいから100と47で分けるか。

多い方を異世界人パックにしてっと。



レベル 2

スキル 異世界人パック 108, 魔法全般対応 139

スキルポイント 0



こんな風になった。

いいんじゃない、スキルの数のバランスが良くなったよ。


満足したリノは、ビワの木の攻略方法を考え始めた。


木登りは苦手だから、ニコルみたいに木の枝に()()()()()ないねぇ。


おっと、「飛び上がる?」


魔法で、飛べるんじゃない?

よし、やってみよう!


「我を木の上に持ち上げよ。【飛翔】!」


おおぉぉぉぉぉぉぉ、待って待って、高い、高すぎるぅ!


「ひゃああぁぁぁぁ」


今度は、低すぎっ! 

地面に衝突しそうになったリノは、慌てて急ブレーキをかけて止まった。


……………………。


これはムズい。

今までにない難しさだ。


上に登ったり降りたりする時に、ビワの木の枝や葉っぱがビシバシ結界にあたるのだが、それはまあいい。問題はエレベーター状態になった時の、スピードの制御だ。


うーん、……………………。


「あ、そうか。エレベーターを想像するからダメなんだよ。ゆっくりと上がるバルーンのような感じだな」


魔法の文言もよくないね。そっちも変えてっと。


「ゆっくりフワフワ上りましょ。風よ、柔らかく私を持ち上げて【バルーン】」


リノが魔法の言葉を唱えると、今度は徐々に体全体が持ち上がり始めた。


「オホホっ、いい感じ」


葉がわさわさと繁る辺りにたどり着くと、リノは器用に体のバランスをとって空中浮遊をしながら、ビワの葉を摘んでいった。


虫食いのない青々としたビワの葉は、夏の日差しをたっぷりとふくんで艶々(つやつや)した深緑色をしている。

葉の裏には細かい毛が生えているので、この葉裏の毛をブラシで(こす)って落とすのを手伝うのが、リノは好きだった。


小さい頃は、力を入れる加減が難しくて、よく葉っぱを破いてたな。

ばあばは「いいよ、どうせ葉を干した後には、細かくするんだから」と言ってくれていたけど、自分としては納得がいかなかった。


ま、あれも経験だ。

それに、こんな風に魔法の力の加減を調整する、これもまた経験になるのだろう。

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