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バナナボートで異世界へ  作者: 秋野 木星
第一章 異世界転移
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子熊の宿

裏庭の井戸を確認した後、客が使用する勝手口を通り、宿の中にリノが入っていくと、ガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきた。

どうやら他のお客さんが、宿に戻ってきたようだ。

すれ違ったときに男の人が多かったので、リノは目を合わせないようにしてそそくさと自分の部屋に入り、扉の鍵をすぐにかけた。


部屋の中にいても、微かに聞こえてくるやり取りから、冒険者のグループと旅の商人のグループが玄関ホールにいたことが分かった。

冒険者の人たちは、ここが常宿なのか、すぐに大部屋に入っていく声がした。商人の一人は、リノの部屋の向かいに入っていったようだ。安普請なのだろう、廊下を歩く音やドアの開け閉めの音なんかが、よく聞こえる。


こうやって他のお客さんと宿の中で出会うと、女が一人旅をすることの危機感をよりいっそう感じてしまう。

本当に常時、魔法でガードしておいた方がよさそうだ。


<結界>とかの守りに特化した魔法って使えるのかな。


リノは部屋でゆっくりしながら、魔法でも練習しようかとベッドに寝転がったのだが、その途端、ゴツッと硬いものに尾てい骨が当たる音がした。


「痛たた」


何これ、このベッドってスプリングがないじゃん。


よく見ると、ベッドはただの板組みで作られており、その上に、申し訳程度のせんべい布団が敷いてあるというシロモノだった。

それに上にかかっている掛け布団もどことなく薄汚れている。


これ、前に布団を干したのって、いつ頃なんだろう。

そう考え始めると、あちこちの埃まで気になってきてしまう。


これが異世界の洗礼か。


昨夜の宿が恵まれ過ぎてたんだ。

自分はこれから何日も、こういう宿を渡り歩きながら、旅をしていかなくてはならないらしい。


これは、早急に何かの対策が必要かもしれない。


……………………。


「よし、まずは『てまり屋』だ」


リノは子熊の宿を飛び出すと、さっき来た道を戻り、ネズミのおばあさんがいる店に走っていった。

外はもう日が暮れようとしており、道を歩く人たちも家路を急いでいるように見える。


近場の宿を紹介してもらっててよかったよ。


「ギンおばあさん、また来たよ」


リノが店に入っていくと、ネズミのおばあさんはびっくりしていた。


「あれまぁ、あそこに泊まれなかったのかい?」


「ううん、泊まれはしたんだけど、早急に買い足したいものができたのよ」


「え、あんなに買ったのに、まだいるものがあるのかい?!」


そりゃあ、ここに住んでる人たちなら、あの宿の状態が当たり前のことなのかもしれないが、極度に清潔を(うた)う日本からやって来た人間には、どーにも耐えられないものがあるのだ。


「枕と敷布団に肌掛けのタオルケット、それにシーツをちょうだい。できたらベッドと机と椅子も欲しいんだけど」


「布団なんかは、一組、奥に新品があるにはあるけど、高いよ。それにベッドなんかは家具屋に行かないと」


「だよね。あ、そうだ、タライとバケツはあるよね」


「ああ、それはあるけど……」


「じゃあ、それも買うからマケて、お願い!」


「……もう、仕方がないねぇ」



枕、350バル。シーツ、800バル。肌掛け、1000バル。敷布団、1800バル。タライ、450バル。木のバケツ、200バル。しめて、4600バル也~。


安くしてもらってこの値段。さすがにおばあさんが布団を「高い」というだけのことはある。


宿代を払って残っていたリノの所持金は、4740バルだったので、

 4740-4600=140バル


140バル……あれぇ?? なんか懐かしい感じのする所持金額だね。

元に戻ってるんじゃね?


いやいや、収納の中には生活に必要な荷物がいっぱいある。

もう、バナナボートしか入っていなかった、昨日のリノとは違うのだ。


んなもん、オールオッケー、心配ない。

完璧に大丈夫に決まってる。


……だよね?

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