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ZEROミッシングリンクⅨ【9】ZERO MISSING LINK 9  作者: タイニ
おまけ

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24/33

ベガスのあれこれ 3話分


本編にいくつか追加したい素通りしてしまったエピソードがあるのですが、モチベーションを保つための、小さな小さなショートショートです。


誰の何が知りたいなどあれば、教えて下さい!


全くの気分です。そういえば書こうと思って本編で書いてなかったや、みたいな書き加えもあります。(※本当に重要なことは本編に加えます!)



時系列はバラバラですが、だいたい河漢艾葉の事件以降の後日談です。





*テミンの参観日*



東アジアは兵役がないため、西アジアより日常生活に軍人が少ないが、その中で空港と出入管、主要な場所、ベガスだけは特異である。


ベガスでは、道を歩けばだいたい軍人に出会い、時勢で状況は異なるが公的機関には必ず銃を抱えた軍人がいる。そして、アジア軍とユラス軍が常在し、警察も特殊警察の特警配置。コンビニ食堂病院どこに行っても一日に数回出会えるため、それだけ見に観光に来る人もいるほどである。



そんなベガス南海の小学校。

現在は南海にも正式な小中学校が建ち、テミンも藤湾ではなく学区に通っている。


今日は幼稚園、1、3、6年生の授業参観日。テミンの母、エルライ・ライがまた妊娠出産前のため、3年生テミンの参観はカウスの役目である。なのにあの男、カウス・シュルタンは授業が後10分で終わるというのに見に来ない。


昨年も来なかったのである。


1、2年生にとって、周りの父母が見学にくる中、自分の親が来ないというのはけっこう悲しい。ベガスには孤児も多いため、孤児の子も親戚や施設のスタッフなど代理の誰かが来てくれることが多い。初めは来てくれると言ったのに、カウスは突如仕事が入ったのだ。



たくさんいる迷彩服や警備服の人影を探して窓や廊下をチラチラ見るも、どれも父ではない。大体みんな少し仕事を抜けて来るので、私服ではないだろう。そもそもカウスは家でもほぼ軍人である。


どうせお父さんは来ない……忙しいから仕方ないんだ……と思いつつも、お母さんも弟のジバル君やニオ君の園ばかり行って、学校関係には一度しか来ていないことがどこか寂しい。



と、思うと、そこに見慣れた顔の数人が見える。


彼らは口だけ動かして廊下側から、

『テミン~!!』

と、手を振った。


ファクト、ラムダ、ソイド、ソラ、それからリギルだ。

「……!!」

『テミン~。がんばれ~!!』

そしてよく見ると、なんとなく自分に似た顔立ちの高校生大学生たち3人も手を振っている。

『テーミン~!!』

オミクロン族から留学に来ている、ジルの孫たちだ。


平静を装いつつも、胸が熱くなるテミン。教科書で顔を半分隠す。




そして、最後の5分を切った時だった。


すみません、という感じで身を屈めて教室に入って来た男。ガタイがいいため少し周囲が騒めいたので、生徒たち数人も後ろを見る。


すると、そこにはカーキ迷彩の軍服を着たカウスが手を振っていた。


お父さん!!


テミンは真っ赤になる。



「じゃあ、テミン。最後そこ、計算して下さい。」

「……あ、はい!」

先生が指摘するので前に出る。連動しているので自分の机で書けば事足りるが、会話能力やプレゼン能力を付けるために、学校では前で喋らせたり手書きをさせることが多い。


テミンはサッと数式を解いて、声を出して読み上げてからまたサッと席に戻った。

「はい、正解ですね。」

その後先生が授業を締め、挨拶をすると拍手や歓声、口笛が鳴った。



全体が終わると、みんな自分の保護者のところに駆けて行く。

「テミン!」

「お父さん!!」

駆け寄ったテミンをカウスが抱き上げた。


「ごめんな、テミン。最後だけで。」

「うんん、いいよ!」

成長したとはいえ、まだ親と一緒にいたい年齢のテミン。カウスが頬にキスをして高い高いをすると教室中が盛り上がっていた。


ファクトたちはそれを見て安心し、親が来ない子たちに話し掛けていた。


そして、なぜかオミクロンから来る子供たちにやたら尊敬されているカウス。

「カウス様ー!今度お手合わせして下さい!」

「カウス様、チコ様はお元気ですか?!」

どちらかと言えば裏の人間であるのに、会ったこともなかった甥や姪たちに知られていて英雄視されている。チコやアーツはその現状が気に入らないが、本人も理由をよく知らない。




ベガスは仕事合間に学校関係行事に来る大人も多い。ちなみに海外派遣から一時帰国していたタウも、今日は警備服のままターボ君を見に来ていた。


そんなわけで、ベガスにはとにかく軍人や警備警官が多いのである。逮捕権や拘束権のある職種だけでなく、武器持ちも多く、どこにニューロスアンドロイドがいるのかも一見分からないので、ここで悪いことをしようとする者はあまりいない。


そして子供も、銃持ちの人間に向かって行くほど強い子がいるので危険である。




***




*チコの運転*



「というわけで、ワズンさんが構ってくれないのでレオニスさんが運転教えて下さい。」

と、久々に道で会ったファクトに言われ困った顔をする、真面目と忠誠の塊チコの護衛レオニス。彼はユラス軍でトップとも言われる自動車運転技術を持っているらしい。


なお平常運転しか知らないが、ワズンもブレーキ感のないスムーズな運転をするのでファクトお気に入りである。しかし、残念ながらワズンはずっと南西アジアやその周辺国のタイナオスなどで、もう会ってすらいない。時々『かまって~』『会いたい~』とメールをしても、忙しいようである。



「アンタレスにいる分には、今のままでいいんじゃないかな?」

レオニスが正論を言うも、ファクトは認めない。

「いえ、この先どこに派遣されるか分かりません。ギャングとカーチェイスしたら最後、生き残る術はいくらあっても足りません!」



「……ファクト……。チコさんの護衛だよ。変なこと言うのやめなよ……」

今さらだが、チコの護衛ということは国家要員の護衛である。横で常識人、妄想チームの高田君がファクトを制するも、この男、聞くわけがない。

「自動運転もあるし。」

「アナログ車しかなかったら……相手のAIの方が優れていた時……どうするんですか!!最後に頼りになるのは、人間の職人技です!!講習しましょう!」

近くにいたクルバトも聞き耳を立てる。クルバトは情報収集のためにファクトの暴走を止めないのである。


「正式講義に組み込みませんか?」

「ファクト……」

困るレオニス。推しの強い人間に囲まれて常識人は憐れである。


「ファクト!」

困っている高田君の戸惑いを遮るように現れたのは、教官マリアスであった。

「マリアス教官!」

「ファクト……義姉に教えてもらいなさい。」


「義姉?」

「チコさんのことですか?」

「……普段運転してもらっているからあまり知られていないけれど、チコ顧問も相当運転が上手いです。」

「チコ?バイクはうまいの知ってるけど……。レオニスさん、そうなんですか?!」

知り合って長いことたつが、それは初めて聞く。


「まあ、普通に考えてトップスラスのSクラス軍人が運転下手とかないだろう。」

思わず口を挟むクルバト書記官。


「……そうなんですか?!」

「…そうですね。チコ様は下手したら私より公道に対するフィット感と勘はいいです。」

レオニスのお墨付きであった。

「おおお!!!」

それは盛り上がらずにはいられない。


「時々運転なさるのですが、AI並みに正確な運転をします。」

「は?」

「AI??」

それは意味が分からない。ウキウキする気持ちが落される。


「アンタレスの首都公道は、規制も多いし速度もユラスよりかなりロースピードですからね。」


ここで気が付く。

「もしかして、カウスさんのような運転をしたいけれどできないから……」

クルバトが呟いた。


なぜかカウスがヤバい運転をするという、身内しか知らないようなことがアーツにまで知られていた。決してファクトが言ったのではない。ファクトは、カウスさんはレースゲーム『ジンジャーギア』のバイトというスピード狂キャラに似ていると、思わずこぼしただけである。



「公人ですので違反や事故をするわけにもいかず……」

「なので、自分を極力抑えて安全運転をするというわけなのですね!!」

「まさにそうでしょう。」

忠誠の塊レオニスは流すが、そこはマリアスが答えた。

クルバト、的確な回答であった。


チコはアンタレスの公道で、それはそれは面白くもなさそうな顔……ではなく普通に真顔で、全ての表示を守って超模範的運転をするそうな。時々ノーブレーキ滑り込み運転で一発的中駐車をしているが、みんな目をつむるという。




本当にこの人たちは、ユラスの方が絶対自由に生きていけるのに、何でこんな狭々したアンタレスにまだいるんだろう………。


ユラスのあの広大な荒地を走れば気持ちいいだろうに。


いや、それでも満足できないのか。ごみごみしたアンタレス首都高や狭苦しい街で本当はカーチェイスとかしたいんじゃないか。バックからの急発進でタイヤが擦り切れるほどのUターンとか好きそうだ。

せめて、どっかのサーキットでラリーでもさせてあげたい。


と、アーツは思うも、心の中に留めておくことにした。




ファクトはその後、ユラスの荒野を走る技術がほしいと、アーツメンバー数人と、レオナスやオミクロンの若手軍人数人を連れて休日ラリーに行ってしまったのである。




***




*その価値を知らない* 



ファクトたちがベガスに来て数年。


ベガスの廃墟の一部が撤去され、ヘリポートだけでなく、さらに大きな空港が出来つつある。

アンタレスの国際ハブ空港とは別に、主に公職公務や軍事、貨物など業務用の空港だ。近隣都市にも対応する。


「はー、本当にベガス、大きくなったね~。」

「だいぶ整備されたからね。でも河漢はまだまだ手付かずも多いし。」

とてもではないが、河漢のあの巨大な地下は、まだ各所の方向性も一致せず現在の技術でも簡単に整備できない。



「最近チコさん、ユラスにいることが多くて寂しいね……」

「旦那といるわけだし、いいんじゃないかな。」

南海競技場の展望のいいカフェで、気持ちよく寛ぐリーブラにファイ。


「……ユラスってあんな性感帯や性技とか過激な本出しといて、大元のあの二人があんなんでどうするんだろ。」

と、リーブラがぼやくのを鋭くキャッチするファイ。


「性感帯!?」

「!?」

「からの…………セイギ!!?」

「はっ!違うよ?遊べとかいう本でなくて、夫婦仲を深めり再構築したりする本の一部!子供ができない人への医学含めたアドバイスとか、性病や男女の違いとか…っ!貰ったのは正道教の本だし!!」

リーブラ、あれこれ弁明する。

「何それ!見せなさい!!」

「未婚者閲覧禁止だって!」

「見せなさい!!あの二人に叩きつけてやる!!」

「持ってきてないし、失礼でしょ!!」


「だいたいなんでファイは、議長夫妻にあれこれ言えるわけ?!」

「………」

大人しくなるファイ。


「……私だって、何でも言えるわけじゃないよ。ベガスでは物理的距離が近いからだし。」

「……」

「ごめん、年上の公人に失礼だった……。なんだかんだ言って、二人っきりの時は甘い夜を送ってるかもしれないしね……。」

突然、悟りだす。


あれこれ忠告できる深い理由などない。子供のお菓子を買ってきていただけだ。




「………でも、あの二人が甘々とか想像できないね。」

「……すっごく湿気た夜を過ごしていそう。」

「乾いた夜よりいいんじゃない?」


ここで湿気た夜を甘い夜に大転換するのが大房民である。

「………湿気た夜と、乾いた夜はどちらがより色っぽいんだろう……」

「……」

「大丈夫、二人の潤いで湿らすんだよ。それが愛だよ。」

「……そうだね………」

何でもプラスに持って行こうとする二人であった。




そして、この二人は知らないのだが、ファイとリーブラは戦時中以外でユラス軍のスペーシアに乗った最初の民間人であり、議長も乗る公職機に乗った最初の民間の外国人である。



しかし、リーブラに至っては、どこにも止まれるし空港まで行かなくていいし、揺れが少ないし、超便利な飛行機だなーというだけの認識であった。








全く別物の新しい小説の方はかなりゆっくりで進めています。時々でいいので遊ぶに来てくださいね。皆様もお体ご自愛ください。





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