第15話 最強の生徒会長
「それでは、よろしくお願いします!」
王都から少し離れ位置にあるアウローラ山の山頂で、私は神刀『三日月』を構えながら目の前の男性、オルランド様にそう告げた。
「こちらこそ。あのクロード殿と互角と噂されるキミの実力、存分に見せてもらうよ」
そう言いながらオルランド様も愛剣である王剣『ジュワユーズ』を構え、彼の周りを浮遊する4つの盾、王盾『アイギス』が私の攻撃に備えるかのように動きを止めた。
現在、私達は武術大会でパーティーを組む以上、お互いの実力は知っておいた方が良いと模擬戦をする事にした。
ただ、私達が本気で魔法やスキルを打ち合えば周囲の地形が変わるほどの被害が出るため、今回はあくまで近接戦闘をメインとしてお互いの動きの癖を見るための簡単な戦闘ではあるのだが。
それに、お互いのステータスは事前に確認している(オルランド様のレベルは459で素のステータスは若干オルランド様が高く、フル装備の状態だと装備の質がほぼ変わらない上にオルランド様の装備が私よりも多いので総合的にはオルランド様が強いと思われる)ため、どの程度戦えるかもある程度は想像が付く。
それでも、実際に動きを見ておくことでいざという時の連携などで差が出て来ると判断して今回の模擬戦が企画されたと言うわけだ。
因みに、万が一にも私達の模擬戦に他人を巻き込まないよう戦闘の場所は開けたスペースが有りながらも、道中に強力な魔獣が多数出没する事からほとんど登山者もいないこのアウローラ山山頂が選ばれたのだ。
「それでは、行きます!!」
掛け声と共に私は地を蹴り、1秒にも満たない刹那の間にオルランド様との距離を詰める。
そしてそのまま神刀『三日月』を音すら置き去りにする速度で横薙ぎに振るった。
しかし、その神速の一撃もいつの間にか移動していた4枚の盾によって防がれる。
だが――
「やあっ!!」
そのまま力を緩めずに神刀『三日月』を振り抜き、私の攻撃を防いだ王盾『アイギス』ごとオルランド様の体を力任せに殴り飛ばす。
「ほう、流石にやるね!」
しかし、オルランド様も無理に私の一撃を受け止めようとはせず、そのまま私の力を利用して大きく後方に飛びながら距離を取り、そのまま体勢を崩す事も無く軽々と着地を決めた。
そしてそのまま体勢を低くしながら王剣『ジュワユーズ』を構えると、「今度はこちらから行かせてもらうよ!」と言う一言と共に一陣の風となり、私の懐まで一瞬で潜り込む。
「ッ!?」
咄嗟に神刀『三日月』を盾にオルランド様の一撃を防ごうとするも、オルランド様はそのまま流れるような動きで体勢を変えると私の腹部目掛けて強烈な蹴りを放ち、咄嗟の事に反応が遅れた私は当然ながらガードが間に合わない。
そのため、どうにか後方に飛ぶことでダメージを最小限に抑えようと試みるものの、そのまま更に踏み込んできたオルランド様の上段からの切り下ろしを肩に受けてしまう。
しかし、無理な動きで一撃の威力が大幅に落ちていたのか、その一撃は私の【竜皮】の守りを突破出来ず、その隙を突いて私はほぼダメージを受けることは無く距離を取って仕切り直しを図ることが出来た。
「さて、ウォーミングアップはこれくらいで良いかな?」
余裕のある態度でそう問い掛けてくるオルランド様に、私はコクリと肯きを返した後に『創造魔法』を発動して空中に10本の剣を呼び出す。
「それでは、ここから少しギアを上げます!」
私はそう宣言すると同時、最初とは比べ物にならない音すら置き去りにする速度でオルランド様に迫る。
そして、上段から神刀『三日月』を振り下ろすのに合わせ、私の側に浮かぶ10の剣を操作して下左右斜めの7方からの切払と前後と頭上からの突きをほぼ同時に放つ。
だが、オルランド様は必要最低限の動きと王盾『アイギス』を利用して攻撃を逸らしながら、上段に構えて無防備な私の胴体目掛けて王剣『ジュワユーズ』を振るう。
しかし私も直ぐさま空振りした剣の内3つを操作し、オルランド様の進路を妨害すると共に攻撃に転じる隙を作ろうと動くものの、オルランド様はその攻撃も難無く捌きながらほぼゼロ距離で『聖なる槍』を発動する。
そのため私も対抗するように『漆黒の槍』を発動してその攻撃を相殺し、そのまま距離を取りつつ『漆黒の翼』を発動して追撃を図る。
更にその攻撃に合わせて5つの剣を操作してオルランド様に一撃を加えようとするが、オルランド様は直ぐに『漆黒の翼』を防ぐための『聖なる大盾』を発動し、出現した光の盾で私の視線を遮った一瞬に『空間転移』を発動して私の背後に回った。
だが、直ぐ『心眼』により敵の気配を察した私は予め側に戻しておいた残り5つの剣でオルランド様の一撃を防ぎ、そのまま側に呼び戻した5つの剣をまるで矢のように撃ち出す。
その一撃は空中に停滞するオルランド様の体を確実に捕えるかと思われたが、しかしながらオルランド様は王盾『アイギス』の1枚を足場に跳躍する事でその攻撃を躱し、更には跳躍した先に予め配置していたもう1枚の盾を足場にこちらに向かって突っ込んでくる。
そのため私はそれを迎え撃とうと身構えるが、あと少しで衝突すると言った距離で忽然とオルランド様の姿が消え、それと同時に背後から気配を感じ取った私は慌ててその場にしゃがみ込む。
すると、それまで私の頭があった地点を凄まじい風切り音を放ちながら王剣『ジュワユーズ』が通り過ぎた。
(あっぶな!? まあ私の防御力と【竜皮】があれば死にはしないけど、当たったら絶対痛かったよね!!)
そんな事を考えながらも直ぐさま逆立ちをするような格好でオルランド様に蹴りを放ち、当然のようにその攻撃を防ぐ王盾『アイギス』を蹴って距離を取る。
その後、直ぐさま『分身』により2体の分身体を生み出すとその分身体にもそれぞれ10の剣を『創造魔法』で創造させ、そのまま3方から同時にオルランド様へ斬り掛かる。
だが、オルランド様は『どんな反射神経してるの!?』と言いたくなるほどの超反応で3人の私とそれぞれが操作する30の剣を華麗に躱し、隙を作ろうと無茶な動きをした分身体の攻撃を『流水』でいなすと同時に『閃撃』(魔力を込めた強力な一撃を放つ【戦技】)で吹き飛ばす。
更に、その吹き飛ばされた1体に巻き込まれたもう1体の分身体が体勢を崩した隙を突き、低く構えるとそのまま初めて見る【戦技】スキル、秘技『閃烈斬』(体を光が包み、そのまままるで光の速度と錯覚するような高速で120連撃を繰り出す技)を発動した。
当然ながら体勢を崩した分身体がその攻撃を防げるわけも無く、為す術も無く猛攻に曝される事となるのだが、劣化しているとは言っても流石は私の分身体と言うべきか、その猛攻を受けても直ぐには消滅しない。
そのため、強力な一撃を放った直後の隙を突いてそれぞれが創造した20の剣を一斉にオルランド様に向けて放つが、その決死の反撃もオルランド様が発動した『聖なる城壁』により難無く防がれ、追撃で放った『ドラゴンブレス(小)』も王盾『アイギス』で防がれてしまう。
しかも、こちらの攻撃を防ぎながらも一切怯む素振りを見せずに突っ込んできたオルランド様は、そのまま『閃光』(光を纏った高速の刃を叩き込む【戦技】)で分身体にとどめを刺してしまう。
だが、私も一方的にやられるだけでは無い。
オルランド様が2体の分身体に止めの一撃を放つと同時、『空間転移』でその背後に回ると10の剣を一気に射出して王盾『アイギス』の守護を無効化し、そのまま渾身の横薙ぎを放つ。
しかし、その一撃も難無く王剣『ジュワユーズ』で受け止められてしまうのだが、初めからそのパターンを想定した私は特に慌てることもせず、そのまま刃を交えたまま口を大きく開き、『クイックチャージ』でチャージ時間を短縮した『ドラゴンブレス(小)』を放つ。
(決まった!)
そう心の中で叫んだ直後、ブレスに触れたオルランド様の姿がまるで幻のように消えていく。
(これって…『蜃気楼』が発動する時の!?)
そう気付いた時には既に遅く、背後から嫌な気配が漂ってくる。
(オルランド様の習得スキルに『蜃気楼』は無かったはず! じゃあ、何で!?)
混乱する思考を必死に押さえて私も同じく『蜃気楼』を発動しようとするが、何故か発動させることが出来ない。
そのため、もはやどうしようも無い状況に出来る事は私の敗因を探る事しか無かった。
(そうか、これがあの【戦技】スキル『王権』の効果! それで私の『蜃気楼』を一時的に奪ったんだ!)
そこまで思考を巡らせた所で私の体は光に包まれ、私の体力を10分の1程削り取る事で私の敗北が確定する。
「あーあ、やっぱり負けちゃったか」
ドロリと融解する地面から『フライ』を発動させて離れ、私はそのままオルランド様の近くで着地した。
「お手合わせいただきありがとうございました」
「こちらこそ良い経験をさせてもらったよ。それにしても、噂には聞いていたけどアイリスさんの実力がこれ程とは……。これは僕もうかうかしていられないかな」
「ご謙遜を。そもそも、まだまだオルランド様は余力を残しておられますよね? 全力でぶつかればここまで健闘出来たかは分かりませんよ」
「そちらこそ謙遜しているだけじゃないかい? 全力を出していないのはお互い様なんだ。もしもアイリスさんが強力な魔法で畳み掛ける戦術を取った場合、王盾『アイギス』でも防ぎきれるか分からないからね」
そんな会話の後、お互いの動きの癖や覚えている魔法やスキルからどう立ち回るかを軽く話し合い、とりあえず例年通り私達が最初に戦うのは3学年だと言うことでそこはオルランド様1人で戦い、恐らく順当に上がってくるだろうジルラント様、ユリアーナ様、ドロシーちゃん、ライアーくんの1学年代表との戦いで派手に行く方針で話が纏まるのだった。




