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黒の聖女と白銀の騎士  作者: 赤葉響谷
第1章 王都動乱編~前編~
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第30話 私、人間やめました

「ケホッ、コホッ……うう、ドラゴンの血、結構な量飲んじゃったかも」


 私を押しつぶしていたドラゴンの肉片を押しのけながら、どうにか這い出した私はそう悪態を付きながらべっとりとドラゴンの血で汚れた自分の服に視線を落とす。


「うーん、ここまで派手に汚れると洗濯で落ちるか心配だなぁ。それにしても……なんか少し体が熱い気がする」


 そう言えば、ドラゴンの血は濃厚な魔力が凝縮されていて人体にとって毒になると本に書いてあった気もする。

 だが、【全状態異常無効】を持っているから毒にはならないはずだし、『不屈』でギリギリ体力が1残ったのか体力ゲージはほとんど見えないが、代わりにバッドステータスを示す表示も見えないのでたぶん大丈夫だろう。


(一応ステータス画面で確認しとこうかな? 爆発の衝撃で良く聞こえなかったけど、レベルも上がったみたいだし)


 一瞬そう考えた私だったが、それよりも先に確認すべき点があると思い直して慌てて周囲を見渡し、離れた位置にいたおかげか私がやらかした大爆発と砕け散ったドラゴンの破片の影響をミリアさんが受けていない事を確認し、私はホッと胸をなで下ろしてミリアさんの下へ駆け寄った。


(とりあえず、胸は上下してるから呼吸はしてるって事だし生きてはいるよね? それに、さっき『回復魔法(ヒール)』を掛けたおかげか火傷もだいぶ良くなってるみたい)


 ミリアさんの容態を大雑把に確認し、一応もう一度『回復魔法(ヒール)』を掛けた後、『収納空間(アイテムボックス)』から事前に『道具錬成(アイテムクリエイト)』で作成しておいた簡易ベッドを取り出してミリアさんを寝かせる。

 そして、ミリアさんが起きるまでに色々とやることを終わらせておこうと私は再び血と肉片が飛び散る爆心地へと視線を向ける。


(魔石タイプの魔獣と違って生物タイプの魔獣はきちんと処理しないと死体が残っちゃうのが問題だよね。ドラゴンの肉はきちんと処理すれば食べられるって話しだけど・・・・・・あれだけバラバラになって血液に浸かってたら無理だろうなぁ。それに、あそこまで損傷が激しいと素材として利用するのも難しいだろうし)


 あれこれと考えた結果、とりあえず『道具錬成(アイテムクリエイト)』で使えるだけの素材を新装備に変えてしまおうと比較的質の良さそうな素材が残っている部分に近付いていく。


(元が結構な巨体だったから一部でも案外量があるなぁ。どうせだったら洗い替え用に5セットくらいは作っとこうかなぁ。今回みたいに不測の事態で汚れちゃう事もあるし)


 そう考えながら私は恐らく後ろ足だったと思う部分に手を触れ、管理がしやすく普段着にも使えるワンピースタイプの服とそれに合うブーツで私が装備可能な物と言う条件を付けて『道具錬成(アイテムクリエイト)』を発動する。

 するとその直後、目の前に残っていたドラゴンの残骸は見る間に姿を変え、5着の色とデザインが違うワンピースと、5足のこれまた色とデザインが異なるブーツに姿を変えたのだった。


「さて、あれだけ強いドラゴンの素材で作ったんだから、結構ステータスも高い装備が出来たはずだよね♪」


 私は上機嫌でそう呟きながら、4組を『収納空間(アイテムボックス)』に収納すると残り1組に『解析技巧(アナライズ)』を発動する。


「あれ?」


 しかし、表示されてのは『竜姫の礼服(ドラゴンドレス)』『竜姫の足具(ドラゴンブーツ)』と言うそれぞれの装備の名前と、『レア度:幻想級 装備者に竜の加護を与え、強靱なる力を与える。』と言う説明文だけで、肝心のどれだけステータスが上昇するかが表示されなかった。


(素材がレア過ぎるから鑑定可能なレア度以上の装備が出来ちゃったのかな? まあ、装備した状態でステータスをみればどれだけ上昇値があるかは分かるからいっか)


 そう結論付けた私は、一先ずドラゴンの血で汚れた装備を早く着替えてしまおうと辺りに人の目が無い事を確認し、『収納空間(アイテムボックス)』から替えの下着や靴下も取り出してその場で着替えを済ませる。

 そして、着替えが済んだところで『ステータスを確認する』か、『後処理を済ませてしまう』と言う選択肢でしばらく悩み、結果『楽しみは後に取っておこう』と言う判断から自分がやらかした惨状の後始末を再会する。

 と言っても、もはや使い道の無い残骸は『大四大属性(エレメントバニッシュ)』を火属性で発動させることで焼却処分するしか無いため、ついでに熟練度も稼げるので魔力を大盤振る舞いしながら念入りに処理を行っていく。

 その途中、2m程の巨大な宝石がドンと肉片の中に鎮座していたので、『これがドロップアイテムの欄に表示されていた『ドラゴンハート』ってアイテムなのかな?』と期待したが、鑑定の結果『竜宝珠』と言う魔石の超巨大版のようなアイテム(魔力を蓄積した宝石みたいな物質と言うだけで魔石では無いらしい)だと分かり、とりあえず『収納空間(アイテムボックス)』の中に回収しておいた。

 因みに、アイテムポーチは袋の口に入りきれないサイズのアイテムを回収することは不可能だが、『収納空間(アイテムボックス)』にはそのような制限が無いのでアイテムだと認識される物体は何でも収納することが出来る。

 ただ、『道具錬成(アイテムクリエイト)』で作成したログハウスはアイテム判定されずに回収する事は出来なかったので、アイテムの定義にもいろいろ基準があるらしいのだが。


「さて、これで良しっと」


 一通り後始末を終え、『これで『大四大属性(エレメントバニッシュ)』も結構な回数使ったからそろそろ熟練度が上がったかな?』などと考えながら、いよいよこれで心置きなくステータスの確認が出来ると心躍らせる。


(あれだけ強いドラゴンを倒したんだし、結構一気にレベルが上がったんじゃないかな? 前にクロード神父が教えてくれた情報が正しければ、格上のドラゴンを倒した英雄が一気に50くらいレベルが上がったって伝説もあるみたいだし、私もそれぐらい行ってるかも!)


 期待に胸を膨らませながら、私は意気揚々とステータス画面を表示する。


アイリス Lv.202(次のレベルまで4,080)

(能力情報)属性:星・人/竜  疲労度:―  疲労補正:0%

 適性武器:剣  適性クラス:剣士(セイバー)騎士(パラディン)竜王(ドラゴンロード)

 体力:396/20,120(10,060)  魔力:1,028/33,250  技巧値:300/300

 攻撃力:11,242(3,042)+10,100  魔法力:16,402(6,102)+6,060

 防御力:17,014(4,814)+2,020  俊敏力:16,081(5,481)

(装備)

 武器:

  神刀『三日月』

 防具:

  竜姫の礼服(ドラゴンドレス)

  竜姫の足具(ドラゴンブーツ)

 アクセサリー:

  幸運の指輪(ラッキーリング)

  戦神の祝福

  ドラゴンハート

(状態)

 【疲労無効】【全状態異常無効】【CP自動回復】

 【弱体無効】【HP自動回復(極大)】【竜皮(ドラゴンスキン)


(習得魔法)

 聖なる矢(ホーリーアロー) 熟練度10/10 MP25

 聖なる槍(ホーリーランス) 熟練度10/10 MP65

 聖なる翼(ホーリーウィング) 熟練度10/10 MP90

 聖なる光(ホーリーレイ) 熟練度10/10 MP250

 漆黒の矢(ダークアロー) 熟練度10/10 MP25

 漆黒の槍(ダークランス) 熟練度10/10 MP65

 漆黒の翼(ダークネスウィング) 熟練度10/10 MP90

 漆黒の光(ダークネスレイ) 熟練度10/10 MP250

 混沌なる光(カオスエナジーレイ) 熟練度1/10 MP800

 小四大属性(エレメンタルエナジー) 熟練度10/10 MP40

 中四大属性(エレメンタルフォース) 熟練度10/10 MP130

 大四大属性(エレメントバニッシュ) 熟練度8/10 MP290

 極四大属性エレメンタルディザスター 熟練度1/10 MP620

 回復魔法(ヒール) 熟練度10/10 MP30

 自動再生(リジェネレーション) 熟練度10/10 MP150

 範囲回復魔法(エリアヒール) 熟練度6/10 MP300

 光の加護(ライトプロテクション) 熟練度10/10 MP20

 希望の光(ライトオブホープ) 熟練度1/10 MP320

 闇の霊気(ダークネスオーラ) 熟練度10/10 MP20

 絶望の闇ダークネスオブディスペア 熟練度1/10 MP320

 転移魔法(テレポーテーション) Lv.Ⅹ MP200

 創造魔法(クリエイション) Lv.Ⅹ MP360

 幻影魔法(イリュージョン) Lv.Ⅹ MP200 


(習得技能)

 ドラゴンスクラッチ MP300

 ドラゴンブレス(小) MP500

 ドラゴンブレス(中) MP800

 ドラゴンブレス(大) MP1,200

 ドラゴンブレス(極大) MP2,000

 エリアバースト MP3,800

 エナジーブラスト MP4,500

 クイックチャージ MP???(ブレスの消費魔力×2)

 フライ MP100

 トランスポート MP1,200


(保有スキル)

【特殊】

 次元の支配者ディメンショナルドミネーター Lv.Ⅹ

 創造者(クリエイター) Lv.Ⅹ

 変質者(メタモルフォーゼ) Lv.Ⅹ

 竜の魂(ドラゴンソウル)

 完全なる肉体(パーフェクトボディ)

【パッシブ】

 属性支配者アトリビュートルーラー Lv.5/5

 解析者(アナライザー) Lv.5/5

 縮地 Lv.5/5

 不屈

 回復魔力量向上(大) Lv.5/5

 消費魔力軽減 Lv.5/5

 収納空間(アイテムボックス)

 道具錬成(アイテムクリエイト)

 慧眼(えげん)

【戦技】

 解析技巧(アナライズ) CP5

 分身(わけみ) Lv.5/5 CP50

 空間転移(ディメンションムーブ) CP30

 物質変換(トランスオブジェクト) CP100

 蜃気楼 CP60


 一通りステータスを確認し終え、私はそっとステータス画面を閉じた後に数秒深呼吸を繰り返し、心が落ち着いたところで再度ステータス画面を表示させみる。

 だが、別に表示ミスとか勘違いとかでは無いようで、表示されているステータスに変わりは無かった。(と言うか、数秒の間に体力が100以上回復してた。)


(ちょっと待って!? まあ、レベルが一気に103も上がったのはまだ良いんだけど、何このステータス!? これ、倍以上レベル差が有るクロード神父と同等以上のステータスになってるよね!)


 この急上昇の原因の一端は先程作成した装備の影響である事は間違い無い。

 だが、それにしても素のステータスの上昇率もおかしい。

 何故なら、この数値は記憶が正しければ90以上の開きがあるミリアさんのステータスより高いのだから。


(それに、属性の『人/竜』って何!? そもそも、どうしてゲットした覚えも装備した覚えも無い『ドラゴンハート』が装備されてるの!!? あと、いきなり出て来た(習得技能)って何なの!??)


 当然ながらその私の疑問はどれだけ考えたところで解決するはずも無く、その答えを教えてくれる人もいない。


(何なの、この異常なステータスは! 一気にここまで強くなっちゃうと、完全にゲームバランスとか崩壊しちゃうよ!?)


 ふと、そこで私の脳裏にある不吉な予感が浮かび、思わず言葉を漏らしてしまう。


「……同レベル帯のはずなのに異様に高いステータスのキャラって、基本的に敵キャラに多いよね。だって、パーティーで挑んでくる主人公達を1人で相手するんだもん。じゃあ、もし私の今回の戦いが偶然じゃ無くてゲームのシナリオ通りだったら? もしかして私、主人公じゃ無くて倒される側のボスキャラなんじゃ……」


 そんな私の疑問に答えてくれる相手などこの場には存在しない。

 そう、未だ()()と知り合えていない私にはその推察の答えを知る術など無いのだから。

 だから、この推察の答え合わせは4年ほど先のことになるのだった。

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