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黒の聖女と白銀の騎士  作者: 赤葉響谷
第1章 王都動乱編~前編~
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第19話 更なる知識を求めて

 結局その日、いまいち気が乗らなかった私は日が落ちる頃にはレベル上げを切り上げ、早めにお風呂に入ろうと拠点としてる精霊の泉のログハウスへ戻る事になった。

 すると驚くべき事に、明日の昼頃来る予定だった迎え、つまりクロード神父がログハウスで私の帰りを待っていたのだ。

 そして、予想外の事態に固まる私へクロード神父は、『明け方頃、ユリアーナ様とジルラント第2王子がボロボロになって宿所に戻ってきたことで、2人がこっそりと宿所を抜け出し護衛の者達に内緒で勝手に外を出歩いていたと言う事実が発覚し、その上更に2人だけで勝手にレベル上げも行っていたことが発覚したため、ライザヘルト侯爵様の説教を受けた上で今回の視察同行は急遽キャンセルになりそのまま王都へ戻される事になった』と言う事情を話してくれた。

 因みに、昨日の夕方第2王子とユリアーナ様が宿所に戻った時はそれぞれ27と32だったレベルが35と38まで上がっていたので、抜け出してからかなりの時間レベル上げを行っていたか実力以上の強力な魔獣と戦闘していた事が分かると、『要人警護に関する騎士団の認識が甘いのでは無いかと?』と問題にする貴族も出て来て、しばらく中央で面倒臭い騒動が起こったのだとかなんとか。


 そうして、結局私はせっかく拠点として作ったログハウスをまともに活用すること無く連れ戻されることになり、たった1日半の貴重な自由時間に終りを迎えるのだった。

 余談だが、今回作成したログハウスは今後も比較的魔獣のレベルが高いティターン大森林でレベル上げを行う事を想定して壊さずに残す方針で決定した。

 本来、精霊の泉近辺に生息する魔獣討伐の適性レベルは80と高いので今の私にとっても経験値効率が良く、更に奥に進めば100レベル帯や150レベル帯と段階的に魔獣が強くなるので今後もレベル上げでティターン大森林に訪れることは多くなるだろう。

 だが、濃霧の森以降は適正レベルが一気に300まで上昇し、それより奥地になると現状王国最強の騎士団長でも進むのを諦めた程強力な魔獣がウロウロしているらしく、『絶対に軽く腕試し気分で行くんじゃ無いぞ』と釘を刺されてしまった。(まあ、クロード神父には悪いがそう言った場所にはゲームでは絶対にレアなアイテムやスキルが眠ってったりするので、いずれはレベルを極限まで上げて行ってみようとは思っているのだが。)


 さて、そうやって日常に戻って来た私が最初に行ったのは情報収集だった。

 正直、あの2人にレベル差がありながらも終始押されていたのは相手の情報を得ることが出来ずに適切な対応が出来なったからだ。

 ならば、次会った時に負けないためにはどんな事態が来ようと対処出来るように様々な情報を集め、私単体で対処が難しい部分を補うための装備やアイテムを揃えるしか無い。

 そう考えた私は直ぐにあの夜出会った2人の情報をクロード神父に話し、何か心当たりが無いかを聞くことにした。

 すると、イブちゃんが使用したクリスタルは『心眼の結晶』と言う一時的にアナライズの能力を向上させるアイテムで、これを使うと(能力情報)だけであればどれだけのレベル差が有ろうと収集できるようにする物だと言う事が判明した。

 だが、残念ながら特殊な魔法効果で外部からのステータス確認の一切を遮断する『秘匿のローブ』を使用している相手には効果が無く、それを突破してステータスを確認するには特殊なスキルか『真実の眼』と言う希少なアイテムが必要なのだと言う事も判明したため、今後は正体不明の敵と対峙した時のためにそのアイテムを手に入れておく必要があるかも知れない。

 幸い、私には『道具錬成(アイテムクリエイト)』と言う便利なスキルがあるので、材料さえ分かってしまえばどんなに希少なアイテムでも作り放題なのだ。

 ただ、この『アナライズが通用しない敵と遭遇した場合の対処法』については、後に『変質者(メタモルフォーゼ)』のスキルレベルをマックスまで上げたことによって習得したとあるスキルで解決することになるのだが。


 それと、私の他に異なる属性魔法が扱えるという人物の噂が無いかについては、即返された『お前みたいなデタラメな存在がそう何人もいてもらったら困るんだがな』と言うクロード神父の回答を聞けば分かるとおり全く心当たりは無いらしい。

 強いて言えば、第2王子とユリアーナ様はそれぞれ光と闇の高い適性があるだけで無く、それぞれ下級、中級、上級の魔法熟練度を最大まで上げて最上級魔法である『聖なる光(ホーリーレイ)』と『漆黒の光(ダークネスレイ)』を習得しているとの情報があったくらいだろうか。

 それに、やはり属性効果が付与されるスキルを取得できるのはその属性に適性がある者だけであるらしく、本来なら炎属性である『不知火(しらぬい)』と風属性である『鎌鼬(かまいたち)』を同時に習得することは不可能らしい。(因みに、クロード神父はこれと同系統のスキルで地属性の『地走じばしり』(地面を這う衝撃波を飛ばす技)を習得しているらしい。)


 あと、イブちゃんが私と同じ『収納空間(アイテムボックス)』を習得していたことから【特殊】スキル『次元の支配者ディメンショナルドミネーター』を獲得している可能性が高いので、思い当たる人物がいないか確認してみたがそっちも全く情報が無かった。

 いや、正確には全く情報が無かったわけではないが、現在そのスキルを獲得していることが判明しているのは騎士団長、教皇様、第1王子の3人だけらしいので間違い無くイブちゃんとは関係無いだろう。

 ついでにここで【特殊】スキルについて補足しておくと、確かに珍しいもので魔力適性が高い人物が希に習得出来る才能を持つと言う程度で一般的にはあまり知られていないが、クロード神父も習得しているなどある程度強い人は大抵保持している物らしい。

 ただ、私のようにスキルの取得及びレベル上げに必要な魔力消費量が半減でもしていなければ、最大レベルまで上げるのに15,000もの膨大な魔力を消費し、レベルを最大にしなければ効果が微妙な魔法が使えるようになるだけであまり好き好んでこの【特殊】スキルを習得する人は少ないのだという。

 そもそも、大抵才能があっても習得可能な【特殊】スキルは1つか2つで、私のように幾つも習得しているなど本来なら考えられない状態らしい。

 あと余談だが、魔力適性の低い平民のレベルアップにおける魔力上昇率は50程度で、ある程度魔力適性の高い者でも150~200と言った上昇値が普通だと言う事らしいのだが、この【特殊】スキルを習得可能な者は必ずレベルアップで300の魔力上昇が起こるのだとか。

 つまり、このスキルを完全に習得したければ50レベル分の魔力を消費しなければならないし、自分に才能があるスキルがハズレの場合も有る(この【特殊】スキル、全てが役に立つわけでは無く、『相手の夢に一定時間侵入できる魔法を覚え、決まった時間に必ず起きることが出来る【パッシブ】と一瞬で目が覚める【戦技】を獲得できる』なんて物まであるらしい)ので、習得可能な人も他のスキルを鍛えた方が有用だとスルーされることが多いのだとか。


 それともう一つ、クロード神父からスキルについてとても有益な情報を得ることも出来た。

 それはスキルの派生についてだ。

 本来、その人が取得可能なスキルはレベルマックスの『解析者(アナライザー)』所持者に見てもらうことで判別できるが、(習得可能スキル)欄に記載が無いスキルでも他のスキルを育てることで後から(習得可能スキル)欄に追加される事があるのだと言う。

 例えば、私が習得可能なスキルの中に『回復魔力量向上(小)』と言う物があるが、これはレベルを最大まで育てると次の『回復魔力量向上(中)』と言うスキルが習得可能となる。

 そして、この同系統で上位のスキルは前に極めた下位スキルと同時には習得出来ず、これを習得すると『回復魔力量向上(小)Lv.5/5』が『回復魔力量向上(中)Lv.1』に上書きされると言うシステムになている。

 そうやってこのスキルを育てていくと最終的に『回復魔力量向上(大)Lv.5/5』で成長が止まるのだが、そうすると新たな魔力系スキルが(習得可能スキル)欄に記載されるようになり、『魔法力強化(小)』を元々覚えることが出来る才能が無い人であればそれが、元々覚えることが出来る才能が有る人であれば『消費魔力軽減』が解放される可能性が高い(希に他のスキルが発生するパターンもあるらしいが)のだと言う。

 この『消費魔力軽減』と言うスキルは魔法発動時にスキルレベル×10%の消費魔力を軽減するという強力なスキルで、最初から覚えることが出来る才能を持つ人なんてほとんどいないため大抵の場合がこの方法で習得するのだとか。

 そして、幸いな事に私の(習得可能スキル)欄には『魔法力強化(小)』もあるので、もしかしたら【特殊】スキル習得よりもこちらを優先させた方が良いのかも知れない。


 こうして様々な情報を得た私は、クロード神父に『次こそあの2人に負けないように!』と、今まで以上にレベル上げの時間を確保してくれるようお願いしたのだが、『追加の人員が派遣されて来て、もう少し余裕が出来たらな』と軽く流されてしまう。

 そして、今回私が遭遇した2人を『アイリスの力を狙って国外から派遣された人間兵器の可能性も捨てきれない』と密かにクロード神父が警戒心を強めた事で今まで以上に私の監視が厳しくなり、結局1人でレベル上げが許可される12歳になる年まで追加の人員が派遣されてこなかった事から私のレベル上げ計画は大きく遅れを見せるのだった。

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