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3-8 合流

 ヴァレドはリオネラに、多くは語らなかった。村に魔物が押し寄せたことと、瘴気病に罹ったレリーシャを手にかけたことだけを話した。

「そっか、だからあの教会で」

 リオネラは納得したように呟いた。

 王都を出てすぐ森で迷って、入ってしまった廃教会の異空間。そこにいた瘴気病の少女を躊躇なく焼き殺したヴァレドは、きっとその子にレリーシャを重ねていたのだろう。

 ふと、傍の細い路地で人影が揺らめいた。

「ごめん、盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど」

 そう言いながら出てきたのはイルデットだった。後ろにはエシュカもいる。

 リオネラはぱっと表情を明るくした。

「ちょーど良かった。良い情報ゲットしたよ」

「何でここにいるんだ? 集合場所と全然違うだろ」

 素朴な疑問を口にするヴァレドに、イルデットは苦笑する。

「いやー……迷子の子を送り届けてたらこっちまで来ちゃってて」

「私は聞き込みの結果よ。この辺りの治療院で情報が得られるかもしれないと聞いてね。そこでイルデットと会ったから一緒に歩いてたらあなたたちがいたってところ」

「あらら。じゃあ、おねーさん先回りしちゃった。その治療院で情報ゲットしてきたんだよ。なんと、光系統の魔法には切り離す性質があるんだって! 光系統の使い手なら瘴気病を治せるかも!」

 それを聞いたイルデットとエシュカは感嘆の溜息を吐いた。

「……めちゃくちゃ核心に迫る情報じゃないか」

「すぐに探しましょ。王都方面に戻りながらで良いかな、その方が人口も多いから——」

 早口で言いながら歩き出そうとするエシュカを、リオネラは「待って待って」と引き止める。

「あのさ、光系統の凄い使い手なら、故郷に心当たりがあるんだー。ここから西の村なんだけど、行ってみる? 1週間くらいかかるけど」

「……そうね。心当たりがあるというなら頼らない手は無いわ」

 賛同を示すエシュカ。一方、ヴァレドは冴えない顔で呟く。

「やめといた方が良いと思うんだが……」

「どゆ意味?」

 リオネラの不満げな問いに、ヴァレドは改めて考えを口にした。

「帰郷しても後悔するだけだ。平気でいられるつもりでも、意外とキツい」

「もー、何変なこと言ってんの? キミはそうだったかもしれないけど、あたしとは状況全然違うわけじゃん?」

「用が無ければ、故郷に帰るつもりなんて無かっただろ?」

「そりゃそうっしょ、都会での生活に憧れて村を飛び出したんだからさ。用も無いのにわざわざ帰らないよ」

「あー……」イルデットが口を挟む。「その……リオネラ、故郷に対して良い印象無いなら無理しなくても……」

「イルデットまでどーしたの? 味方してくれないなんて、おねーさん寂しくて泣いちゃうぞ?」

 そう言って小首を傾げるリオネラは、にっこりと笑っていた。先ほど——ヴァレドに言い返していた時に見せていた、厳しく不穏で苦しげで不安そうな表情は、なりをひそめていた。

 このままリオネラに案内を頼んで良いのだろうか、と迷うイルデットを、エシュカが小突く。

「他により良い案が無い限り、リオネラは譲らないと思うわ」

 ささやかれたその言葉に、イルデットは渋面を浮かべた。

「より良い案なんて無いだろ」

「そうね」

「迷うだけ無駄ってことか」

 イルデットは嘆息し、まだ言い合いを続けているリオネラとヴァレドに告げる。

「リオネラの心当たりに頼りたい。まだ日も高いし、今からでも出発しないか?」

「もっちろん。行こ行こー」

 リオネラが上機嫌にそう返すのを、ヴァレドは何とも言えない表情で見つめていた。






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