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滂沱の日々  作者: 水下直英
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後で気付いて【だからどうした】となる


 昼前に出発した私たちは【草原】の橋まで馬車で送られていた。


橋までの道は整備が進められているので、あの逃避行の際に悩まされた振動はあまり気にならない。


足の完治したカカンドだが、あの時と変わらず御者を務め、私の隣で手綱を操っている。


「ジッガ、

 こないだの精霊国の件でも言ったが、

 あまり一人で背負しょい込むなよ?」


「私は私が出来ることをしているまでだ。

 そう心配しなくてもいい。

 無理はしないつもりだ。」


「お前さんはそう言いながら無茶するからな。

 なぁカンディ?」


「そうだよぉ、

 ジッガは何でもかんでもすぐ解決しようとし過ぎ。」


「そ、そうだろうか?」


カカンドの反対側に座るカンディに指を突き付けられながら、核心めいたことを言われてしまった。


自分でも思い当たる節が幾つか思い浮かび、尋ねてみる。。


「カンディは例えばどういう所が気になるんだ?」


「魔力循環とか土の魔力を畑に込めるのとか、

 ああいうのはリルリカとかマグシュも出来るでしょ?

 それに『魔物が出た』って聞いたらすぐ飛び出してくでしょ?

 【まとめ役】なのに一人で行動するのって、なんか違うでしょ?」


『でしょでしょ?』と口調はいつもの調子だが、内容は辛辣なものに感じられた。


確かに思い当たる内の一つだ。


「私はまだ皆のことを【信じられていない】んだろうか?」


「信じてなきゃ【精霊の力】は発現しねぇんだろ?

 信じてはいるんだろうよ。

 ただ【守らなきゃ】って意識が強過ぎんじゃねぇか?」


「そうだよぉ。

 私たちは一緒に戦う【同志】なんでしょ?

 ジッガの考えてる【国】の人たちは、

 守られてるだけの弱虫の集まりじゃないでしょ?」


「う、む、

 では今後どうするべきだろうか?」


私の問いにカンディとカカンドは顔を見合わせ、ニコッと微笑んでから私に向き直り返答した。


「一人で危険なことをしないよう心掛けてくれりゃそれでいい。

 後は俺らの仕事ぶりを眺めて公平な評価をくれ。

 そんで能力に見合った仕事を割り振るんだ。

 それが【まとめ役】、だろ?」


「私、いっぱい働いちゃうよぉ!」


「う、ん、期待してる」


以前村で生活していた時、エンリケにも似たようなことを言われたな、と思い出しながら返答する。


人は他人からの評価をどうしても気にしてしまう。


私自身もそれを気にすることが多々ある。


【区長】として、未来の【王】として、私は皆から求められる【役割】をしっかりと務めなければならない。


【信念】を持ち、【公平】な王となるべく、私自身も民の評価を気にかけていくべきだろう。



 橋まで辿り着き、カンディらに見送られながら【ディプボス】へ向けて徒歩での旅を開始した。


【草原】は私たちの【償い】が実り、背の高い草が一面に広がっている。


これによりソムラルディの怒りは解けたが、馬車での移動は出来なくなっていた。


森の中は徒歩で行くしかないので、橋地点からはもう歩くしかない。


森の入口まで馬で移動しても、そこに置き去りにしたら魔物に襲われてしまうからだ。



 ソムラルディに精霊国での精霊復活の件を報告しつつ、【深き森】を目指した。


彼の不在の間に精霊関連の検証が行われてしまったことを詫びたが、『やむを得ない』とあっさりとした返事をしたのみだった。


そういえばエルフは【気が長い】のだったな、と思い出す。


今まで半年以上身近にいたが、怒りを漂わせたのは【草原】を燃やしたあの一件だけだったことに今さら気付く。


その草原を掻き分けながら進んでいき、以前話した【精霊】が【魔物】の変化したものという推論が違うのではないかと問い掛けてみた。


「ほぉ、

 何故なにゆえさ思う?」


研究家の眼をしながら質問を返されたので、前世の記憶からなる【ウンディーネ】の説明をして、精霊国で出会った【クリャスォンス】は元々から精霊なのだろうという推測を話してみる。


「げに、

 先の世の記憶からか。

 先の世にも【精霊】は在りたりきということか?

 さる話は聞きたらねど?」


「あ、いや、

 空想上の話というか、伝説上の話なので、

 実在しないものを物語で聞いただけというか」


「あな、

 作り話か。」


フン、と鼻を鳴らされ、私の推論は一蹴されてしまった。


小憎たらしい爺ぃは己の持論を曲げるつもりは無いらしい。


次にクリャスォンスに会いに行くときは是非連れて行って、その持論が折れる様を見物してやりたい。


「ジッガ、

 先の世の記憶に、

 【光の精霊】はいかなる様なり?」


不意に真顔となった爺ぃにそんな質問をされたが、伝承はおろか【作り話】の中にすら思い当たる名前が浮かばない。


まだ全ての記憶が見れる訳ではないので、未発見なのか存在していないのか判断が付かず、正直にそう伝えたところ少し残念そうな顔をされた。



 話題は変わり、精霊復活によって【ヘネローソ】の国力が増す、という件に移った。


ソムラルディは何度も精霊国に足を運んでおり、チュバリヌとの【共同研究】である程度の検証結果を得ていた。


精霊に直接会うことは叶わなかったそうだが、【精霊の力】を得た人々による検証は出来たそうだ。


「【精霊の力】は伝播でんぱす。

 君の周囲もらむ?

 魔力を持たぬ者が、

 君の【魔力循環】をもちて次々魔力芽生えき。」


言われてみれば確かにその通りだ。


カンディとエンリケは元から魔力を発現していたが、他の者は私の【魔力循環】によって魔力を芽生えさせていった。


さらに話を聞いてみると、精霊による【力の伝播】とは磁石と砂鉄のようなものらしい。


力が強いほど周囲の者に伝わり易く、その中の素養ある者が魔力を発現しているのでは、という結論だった。



「君が一年前まで暮らせる村、

 そこには【森の民】居けりはあらずや。

 その名残に素養ある者多からん。」


「え?」


リベーレン村に【エルフ】が居た?


初耳だったので話を中断させ、それについて問い質してみる。


すると、村で百年以上生きて【実りの種】を与え続けた【老女】の正体が【エルフ】だという話だった。


村は国に反抗する流れ者や魔法使いばかりでなく、エルフまでかくまっていたのだ。


二十年前に亡くなった老女の話をしてくれたのは【シェーナ】だったな、と思い出す。


もしかしたら、そのエルフの影響を受けてシェーナは【実りの種】の魔力が発現したのだろうか?


それともただ単に匿っていた別の魔法使いの子孫だったのだろうか?


シェーナのことを考え、その優しげな顔がすぐに思い出せることに安心感を覚えた。


私の中でシェーナが存在し続けることは、私が【人間】であるという証拠な気がした。



 シェーナを懐かしむ私の横でソムラルディが話を続けている。


スムロイは勿論のこと、ギルンダら老人たちも【エルフの老女】について知っていたらしい。


だが老女との『秘密は漏らさぬ』という約束を固く守り、自分たちからは言い出さなかったそうだ。


ソムラルディが老女の話を聞きつけ、『エルフだったのだろう?』と問い質して初めて頷いたという。


シェーナと仲が良かったというギルンダが、最初から私のことを【精霊】と呼び始めた訳が初めて理解出来た。


シェーナを通してエルフの知識を得ていたのだろう。


今さら分かったところで何ということも無い話なのだが、リベーレン村の人々の尋常じゃない【口の固さ】は知ることが出来た。



 ヘネローソ再訪の際は絶対にソムラルディを連れて行くことを約束させられ、精霊に関する話題は終わった。


次は重要案件のドワーフに関する情報を確認したい。


途中途中で【魔力循環】を施しながら移動したので、既にディプボスの手前辺りに到達出来ている。


エルフの集落に滞在するドワーフを説得するのだから、到着するまでに事前情報確保は必須だ。


ソムラルディは腕組みして見つめる私の前で、何やら魔力を込めた木の枝を燃やしている。


何をしているのかと問うと、『狼煙のろしだ』という簡潔な答えを頂いた。


近くの集落に合図を送り、途中で合流して護衛を頼むのだという。



 ようやく再出発を果たしドワーフについて聞いてみるが、驚くほど情報は少なかった。


引き篭もり同士の亜人二種族は、大した交流も無く数百年を過ごしていたらしい。


そんな状態で【人間】の私が会いに行って本当に大丈夫なのだろうか?


カンディらと『危険なことはしない』と約束している私だが、最早どうしようもない。


開き直るような気持ちで、数少ない情報を吟味することとなった。





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