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滂沱の日々  作者: 水下直英
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未確認生物とはどれくらい【危険】なのか


 私の驚き具合に、キシンティルクも驚いた表情に変わる。


「なんだ? 何を驚く?」


「え、あ、いや、

 連邦の者たちや、エルフたちも知らなかったからな。

 まさか山のこちら側にいるキミたちが知ってると思わなかった。」


「あぁ、確かにそうだ。

 普通に暮らせば、知る筈無い。」


「ほぉ? じゃあどうして知ったんだ?」


私の問い掛けに、キシンティルクは面白そうに、そして少し懐かしそうに話し始めた。


「実はな、何度か戦ったこと、ある。

 昔、噂聞いた。

 北の山、越えた先の森、【怪物】いると。」


ここまではラポンソら連邦の民からも聞いている。


山を越えた先なのだから連邦国内だ。


何故キシンティルクが【戦う】ことになったのだろう?


「昔、王様が、王様になった頃、

 とてもとても、張り切ってた。

 国の中、魔物いなくなるほど、

 戦って廻った。」


あ、なんだか予想がついてしまった。


「王様、強い奴求めた。

 そこで、【怪物】の噂聞いた。

 【若気の至り】、王様、戦い挑んだ。

 俺たちもついていった。」


予想通りの展開だ。


しかし、怪物もゼダックヘインも健在ということは引き分けたのだろうか?


「山を越え、森に入り、怪物見つけた。

 それは、【グリフォン】。

 一対一ならば、王様、互角。

 だが奴ら、複数いた、しかも空、飛ぶ。

 王様、何度か挑んだが、倒せなかった。」


「へぇ、しかしそこで諦めたのか。

 ゼダックヘインならしつこく戦いを挑みそうな気がするが?」


「最後に挑んだあと、

 グリフォンの群れの長、言った。

 『もう来るな』と。

 それで、諦めた。」


「え!? 言葉を話したのか!?

 【魔物】が!?」


今度は私だけでなく室内に居た全員が驚きの声を上げていた。


ソムラルディすら驚愕の表情で口を開いている。


「俺たちも、言葉話す魔物、初めてだった。

 でも王様、すぐ納得した。

 『自分も、魔物みたいなもんだ』、って言ってた。

 それから、グリフォンの縄張り、行かなくなった。」


その話にゼダックヘインの哀愁を感じてしまい、僅かに胸が痛んだ。



 更にキシンティルクから【グリフォン】についての情報をもらい、建設中のやぐらや観測施設が縄張りに入っていないことを確認する。


安心したことに、国境を越えなければ縄張り外とのことだった。


恐らくかつての【リベーレン村】近くにあった森のようなものが、連邦南部に在る【グリフォンの森】なのだろう。


私たちにとってのゴブリンやコボルド、オークに代わって【グリフォン】が居る、ということなのだと推察される。


キシンティルクはさらに貴重な情報も与えてくれた。


【グリフォン】は基本的には人間を襲わない、と。


数十人が徒党を組んで縄張りに入ってくると威嚇して追い出すが、数人が迷い込んだ程度では姿を見せることの方が珍しい、とのことだった。


連邦の民が避難した際、ラポンソらが襲われ、ナパリィたち親子が遭遇しなかったことに理由が付けられた。


しかし、人間が害意を持って向かってきた場合、話は別だ。


私の生体看破魔法に近い能力を持っているらしく、縄張り外だろうが猛烈に襲い狂い、散々に打ちのめすらしい。


だから余程のことが無い限り、連邦の兵が北から襲ってくることはないだろう、と話していた。


何故そんなに詳しいのか、と尋ねたら、その最後の戦いで話しかけられた時、ゼダックヘインが色々話したのだそうだ。


言葉を話す魔物に親近感を抱いたのかもしれない。


【魔物】にすら【気安い】彼に感心すらしてしまう。


情報提供に感謝し、キシンティルクにも魚を土産に持たせた。


カカンドとゲーナが作成してくれた皇国宛の書面に私のサインを入れ、それも渡す。


『皇国からの返答が来たらすぐ知らせる』と言い残して、剛毛の騎士は颯爽とした振る舞いで帰っていった。



 会議は終了したのだが、『話がある』と数人が残っていた。


まずはラポンソが真剣な面持ちで話し出した。


「ジッガ、

 さっきのグリフォンの話が本当なら、

 私たちが襲われた時、

 はぐれた仲間は【死んでいない】ってことになる。

 もう諦めていたはずなんだ、だけど・・・」


「ラポンソ、もう二ヶ月以上経過している。

 生き延びているならば他国に逃れ得た場合だけだろう。

 今度受け容れる中に居ることを期待するんだ。

 直接探しに行くことは許可出来ない。」


「そうだぜ。

 精霊国か聖公国か、それともさらに北の国々か。

 いずれにしろ山の中で生き残ってるなんて甘い考えは捨てた方がいい。」


半死半生のまま山の中で一ヶ月以上生き延びたハザラが、自分を棚に上げてラポンソに厳しい言葉を投げかけている。


しかし厳しく言わないと捜索に飛び出してしまうかもしれない。


「捜索隊を出しても、その捜索隊が遭難する可能性が高い。

 無念とは思う、が、

 ラポンソ、既にキミも失いたくない【仲間】の一人なんだ。

 どうか堪えてくれ、キミの家族にも、悲しい思いをさせたくない。」


「……あぁ、すまなかった。

 ちょっと、はぐれた仲間に仲の良かったやつがいたから……、

 動揺したようだ。」


ラポンソはカンディに精神安定魔法を掛けられ、それでも暗い表情のまま帰っていった。



 それを見送ると、スッとウーグラが私の正面の椅子に座った。


彼女はいつもと違い、緊張した面持ちで話し始めた。


「ジッガ様、我が祖国のことでお願いがございます。」


「精霊国の?

 どんなことだろうか?」


「はい、

 国を出て、ジッガ様の役に立とうと私どもはこの地に参りましたが、

 やはり生まれ育った祖国よりの恩は忘れ難く、

 飢えに苦しむ祖国のため、

 カンディ様の【実りの種】のお力を

 チュバリヌ様にお届け願えませんでしょうか?

 お願い致します。」


そう言って深々と頭を下げるウーグラ。


少しだけならば渡そうか、と考えたのだが、私が言うより早くハザラが返答した。


「ウーグラ、それは【甘え】ってもんだ。

 この自治区はこないだ戦を仕掛けられたばかりだぜ?

 戦後補償も貰えねぇまま、

 こっちから無償で魔法の力を差し出すのか?」


「精霊国も受けた恩は忘れない筈です。

 利で考えられるならば、

 【先行投資】という形では如何でしょうか?」


「そいつぁチュバリヌたちが【国】として正式に行う問題だ。

 お前さんの立場で言う話じゃ無ぇ。

 厳しいようだがよ、

 種を与えてあの国が富んだら【戦争】を仕掛けられる可能性だって有る。

 そうなりゃお前さん、【裏切り者】ってことになるんだぜ?」


「そんな! そんな……ことには」


「最悪の場合は、ってことさ。

 だが、軽々しく【実りの種】の力を与えられねぇ理由は分かったろ?」


「はい、至らぬことを申しました。

 申し訳ございません、ジッガ様。」


「いや、キミの祖国を憂える気持ちを羨ましく思う。

 いずれ精霊国と固い友好が築けたならば、

 必ず力になることを約束しよう。

 今のところ、ちょっと迷惑加減が多いから、な。

 すまないが、理解してくれ。」


「そのお言葉が頂けただけで感謝致します。

 私どもも一層自治区の発展へ尽力しましょう。」


「うん、【信頼】している。

 他にも要望があれば何でも伝えてくれ。

 可能な限り私も尽力する。」


「ありがとう存じます。」


また深々と叩頭し、ウーグラは退出していった。


助言してくれたハザラに礼を言い、精霊国に対してのスタンスを何点か確認した。



 次に願いを話し出したのはそのハザラだった。


身体は順調に回復していて、以前に比べ右手と右足が延びてきているのが分かる。


「ジッガ、いつも治療してくれてありがとな。

 昨日からよ、ちょっとだけだが左目に視力が戻ってきてんだ。

 まったく、世界が違ってえてきたぜ。」


「感謝すんぜジッガ」

「きっと恩に報いんぞ」


これまでと違い明るい話題にホッとする。


子分らの合いの手も今は微笑ましく感じられた。


「そんで提案なんだけどよ。

 今抱えてる問題が片付いた後でいいんだが、

 いずれよ、獣人たちの中から俺みてぇな【怪我人】を集めてよ、

 それを治療して、俺に預けちゃくんねぇか?

 そいつらで【決死隊】を組みてぇんだ。」


「【決死隊】だと?」




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