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9.閃光の討伐者

 パーンさんが交渉を始めた。


「ルードさん、この情報はかなり大きな稼ぎになる可能性を秘めています。反面、どの程度のリスクがあるかも不明です。一説ではグリフォンとも一戦交える必要が出てくるかも知れない」

「ちょっと待て。向こうにカイもいるんだ。少し向こうで話さないか?」

「いいですよ。ヴァン君、他のメンバーを呼んで向こうへ来てくれるかい?」

「わかりました。呼んできます」


 僕は他のメンバーに声をかけて、閃光のメンバーがいる場所へ向かった。


「君がヴァン君だね。俺はカイ・アップトンだ。閃光の討伐者のリーダーをやっている。以後よろしく頼む」


 閃光の討伐者のリーダーの方が自己紹介してくれたので僕も自己紹介しておいた。


「で、そのミスリルに関する情報をもらえるという事で間違いないかな?」


 パーンさんが割って入った。


「この情報はタダではお譲り出来ません。リザリアでの討伐戦の後、俺たちで回収しても良いので。ただそれだと時間が開くので他の冒険者に掠め取られるかも知れない。それならばここで閃光の討伐者さんに情報を売った方が良いと思っています」

「いくらだ?」

「マジックバッグ一つ」

「……どれぐらいの利益が見込める?」

「未知数です。グリフォンが絡んでくる可能性もありますので、閃光の討伐者と言えど楽にクリア出来ない可能性もあります」

「俺たちのランクはBだ。グリフォンでも充分やれる。ただこのリステンでグリフォンが出たと言う話は今まで聞いた事がない。その情報は信憑性に欠ける」

「ではやめますか?」

「……聞かせろ。マジックバッグは確約する。だが容量は情報の質により変える。それで構わないか?」

「それで結構です。これから少し時間は取れますか?」

「少しぐらいなら構わない」

「じゃ実際の場所へ案内します」

「ルード、リステンまで一人走らせろ。メンバー全員をここへ連れてくるんだ」

「了解、すぐに準備させる」

「じゃ行こうか。パーン」


 その後僕たちは湖の辺りまで引き返した。

 まだゴブリンの死体が残っている。


「このゴブリンがそのミスリルを持っていたのか?」

「そうです。そしてこの対岸。この方向です。あの辺りに未踏のダンジョンがある可能性があります」


 パーンさんは対岸を指差しながら話した。


「対岸……なぜわかる?」

「そこにいるヴァン君は気配探知に優れています。彼は対岸まで見通せる気配探知を持っていて、その彼が対岸のあの位置にダンジョンがある可能性があると言っています」


 カイさんは一度僕を見て、後ろにいる閃光のメンバーの魔術師さんに話しかけていた。


「お前には探知出来るか?」

「対岸は惜しいところで届かない。だがこの湖の周辺で異常な気配がいくつか点在している。これがグリフォンと言うなら納得できる気配だ」

「そうか……ここでゴブリンを退治し、そいつがミスリルの剣を持っていた。ミスリルの剣を持つことができるランクの冒険者がこの辺りで力尽きたという事。気配探知で対岸にダンジョンの可能性、そして湖周辺にはグリフォンの気配……これはただ事じゃないな」


 カイさんがそう言って考え込んだ。


「これはパーンにしてやられたな。お前らじゃとても手に負えん案件だ。上手くマジックバッグに交換しようと一芝居打ったって所だな……」


 パーンさんは素知らぬ顔だ。


「わかった、約束だ。容量馬車半分の物を渡してやれ」


 そう言ってパーンさんがマジックバッグを受け取っていた。


「カイさん、気を付けてください。グリフォンはおそらく本当にいると思います。対岸にはゴブリンの群れも。ヴァン君、何体ぐらいいそうだい?」

「そうですね……地上に30程、地下に100は見えます。地下はゴブリンだけじゃなく、グリフォンやゴーレムもいます」

「ゴーレムだって?そりゃヤベェな。ゴーレムがいるってんならお宝があるって事だ。俺たちが初踏破ってなりゃどんだけお宝が手に入るかわかんねぇぞ」


 後ろで閃光のメンバーさんが盛り上がっている。


「ヴァン君……君の気配探知は相当優れているようだね。閃光に入らないか?」


 カイさんが勧誘してきた。


「いえ、僕はもう自由の風って言うパーティを結成しているので」

「そうか、残念だ。気が変わったらいつでも声をかけてくれ」

「はい、ありがとうございます」


 そこで僕たちは別れてリザリアに向けて移動を再開した。

 ラビィさんが上機嫌だ。


「さすがパーン!閃光相手に情報だけでマジックバッグを掠め取るなんて!」

「何言ってるんだ。このマジックバッグの大部分はヴァン君の物だ。この情報はヴァン君が掴んだ情報だからな。俺の働きが三、情報の価値が七と言った所だろ?合わせ技で手に入れたマジックバッグを我々に譲ってもらえるようこれから交渉するんだよ」

「パーン真面目過ぎ!」


 ラビィさんが叫び僕たちは笑いながら歩き続けた。



 その後は何事もなく日が傾き始めた。

 今日一日で随分と打ち解ける事が出来た。

 青の団の人達はみんな良い人だ。

 ラビィさんだけちょっとそそっかしいけど、悪い人じゃない。


「そろそろ野営の準備をしようか」


 パーンさんがそう言って、荷物を降ろし始めた。

 街道のすぐ脇に野営後のような場所があったのでそのまま利用する形だ。


「薪を集めてきます」


 薪集めを買って出てすぐ近くの林に入った。

 ホーンラビットの反応はあったけど何も問題ない。

 すぐにマリーさんもやってきて二人で薪集めを始めた。


「ねぇヴァン君、ちょっといい?」

「はい、どうかしました?」

「パーン達と上手くいってるね!ひと安心だよ」

「そうですね!みんな良い人で良かったです」

「それにヴァン君、すごく強かったんだね。ゴブリンの首が飛んだ時、ヴァン君の動き見えなかったよ」

「いや、どうなんですかね。ずっと父さんとしか手合わせした事なかったのでわからないです」

「そっかー、お父さんさすが元Aランクだね。さっきはグリフォンに勝てるなんてと思ったけど、父さんとずっと手合わせしてたのなら勝てるのかなと思えるよ」


 僕たちは薪を集め終えるとマリーさんに先に戻って貰った。

 近くをホーンラビットがチョロチョロしてたからいくつか集めて野営場所へ戻った。


「今日は僕がご飯を作りますよ」


 そう宣言してホーンラビットを解体して、よく食べていた串焼きにして皆んなに振る舞ってみた。


「こんな短時間でホーンラビットを集めるなんてすごいね。僕じゃ無理だよ」


 スタンさんが関心していた。

 でも気配探知が有れば何でもない事なので、そんな事で褒められると困る。


 みんなペロリと平らげてくれたので好評だったと見て良いよね。


「ヴァン君、マリー、このマジックバッグ……譲って貰えないだろうか?僕たちの荷物をこちらに移してしまいたいんだ……」


 マリーさんを見ると頷いてくれていたので当然僕も了承しておいた。

 普通にそれはパーンさんの機転で得られたんだしね。

 僕は青の団の荷物を出して渡した。

 全部収納出来る容量があったみたいだ。

 特にラビィさんの喜びようがすごい!


「やっと私たちも一人前になった気がするね!今後は素材集めもすごく捗るんじゃない?」

「持ち帰れる荷物が増えるから稼ぎが変わるのは間違いないだろう。ヴァン君、マリー、ありがとう!」

「閃光のみんなは大丈夫かな?Bランクだから大丈夫だと思うけど、未知数の部分が多かったから無理してなければ良いんだけど」


 スタンさんが心配を漏らした。


「閃光はリステンでトップのパーティだから、閃光でダメならリステンでクリア出来るパーティはいないよ」


 リースさんが言い、みんな同意していた。

 その後は軽い世間話や青の団の今までの苦労話などを聞かせてもらっているうちに眠る時間になった。


「二人一組で見張りに立つ。ヴァン君とマリーは初めてだからプラス1だ。よって今日は三人で立つ事になる。問題ないな?」


 みんな同意していたので初めはラビィさんとスタンさんと僕が見張りに立つ事になった。


「三時間交代ね。おやすみ」


 リースさんが三時間をカウントする魔道具を設置した。

 その後パーンさんとリースさんとマリーさんはテントへ入って眠りについた。


「ねぇヴァン、気配探知は常時発動してるの?」


 ラビィさんが聞いてきたので、常時発動してると答えた。


「ねぇスタン。ヴァン君の気配探知が有れば私たちも寝て良いんじゃない?」

「ダメだよ。見張りは必ず二人以上でやらないと。居眠りしちゃったらどうするんだよ」


 そうか、ラビィさんは眠いのか……。


「スタンさん。僕から提案なんですが。こういうのはどうでしょう?」


 僕は薪をいくつか持ってきてクリエイトゴーレムを詠唱した。


「嘘でしょ……クリエイトゴーレム……薪でゴーレムを作ったの……?」


 ラビィさんが驚きすぎて固まっている。


「小さいですが薪一本から一体ゴーレムを作りました。彼らを見張りに立たせます。このウッドゴーレムは自走型なので、見張りをする事と、何かあったら起こしに来る事を指示をしておけばゴーレムだけで見張りは出来ますよ」

「ちょっと待って。理解が追いつかない。クリエイトゴーレムって死霊魔術師の魔法じゃないか。ヴァン君は死霊魔術師だったの?」


 スタンさんが僕から距離をとりながら聞いてきた。


「僕は死霊魔術師じゃないですよ。職業で言うと魔法戦士かなと思います。剣も魔法も使えるので」

「それもお父さんから教わったの……?」


 ラビィさんが聞いてきた。


「そうですね。剣と魔法両方を使えないといけないって言うのはずっと言われてました」

「ヴァン君……なんでもありだね……Aランク冒険者って化け物だって聞くけど、ホントにそうだわ……」


 ラビィさんが僕を遠い目で見てくる。


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