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8.ミスリルの剣

「確かにゴブリンだ。三体いる……ヴァン君の剣が見たい。あれを討伐してみてもらえないか?」

「良いですよ。周りに他の気配はないので。ちょっとまってて下さい」


 そう言って僕はゴブリンに素早く近づいた。

 ゴブリンもこちらに気付き威嚇してきたが、通り抜けざまに三体の首を落とした。

 ゴブリンはギャーギャー言うだけで反撃もあまりして来ない危険のない魔獣だから何の問題もない。

 剣の切れ味を見る為付与魔術を使わなかったけど良く切れる。斬った感触すらなかった。


 そう思いながらふと一体のゴブリンの持っていた一本の剣に目が止まった。


「あの子なんなの?何あの強さ?おかしくない?」


 後ろでラビィさんがマリーさんに詰め寄ってるみたいだけど、今は剣が気になる。

 僕はゴブリンが持っていた剣を持ち上げてみた。

 持ち手の部分が破損して脱落していて汚い布が巻きつけてある。

 解体に使っていたんだろうか、

 刀身には血糊がベトベトに付いていて、持ち上げた途端強烈な匂いがしたけど、何か引き込まれる魅力を感じる剣だった。

 たぶんこの金属は父さんの剣と同じ物だ。


「ヴァン君、どうしたんだい?ゴブリンのドロップ品なんかろくな物は無いよ。武器なんてガラクタしか持ってないさ」


 その時リースさんが言った。


「いや、パーン。ちょっと待って。ヴァン君が持ってるの……ミスリルじゃない?異常に汚れてるけど、うっすら光ってる。ミスリルだよ」

「僕もそうだと思います。これは割と価値があると父さんから教えてもらいました」


 ラビィさんがすごく嬉しそうに飛び上がった。


「ミスリルなんてすごいじゃん!これでマジックバッグ買えるよ!!すごい!ゴブリンからドロップするなんて運良過ぎだよ!」


 パーンさんがラビィさんに向かって言い聞かせるように言った。


「ラビィ、ヴァン君は俺たちとパーティを組んでいない。彼が討伐して彼がそれを拾った。あのミスリルの剣は彼の物だ。俺たちには1ギルも入らない」

「は?何言ってんの?一緒に行動してるんだからみんなで山分けでしょ?」

「ラビィ、それは違う。さっき聞いたけどヴァン君はマリーとパーティを組んでる。あれはヴァン君とマリーで山分け」


 リースさんが補足してくれた。


「ふふふ、悪いね、ラビィ」


 マリーさんがラビィさんの肩に手を掛け顔を綻ばせている。

 マリーさんが嬉しそうにしてるのは僕も嬉しい。


「じゃぁさ、今からでもパーティ組もうよ!青の団に入りなよ!」


 ラビィさんが食い下がった。


「ふっふっふー。ダメだよ、私たちもう自由の風って言う名前でパーティ結成してるから。もうお父さんがギルドに申告してくれてると思う」

「くっ……私のミスリルが……」

「あなたのミスリルじゃないから……」


 悔しがるラビィさんにリースさんが呆れて言った。

 その時スタンさんが思い付いたように言った。


「ここにミスリルの剣を持ったゴブリンがいるって事は、たぶんミスリルの剣を持った冒険者がこの辺りで亡くなったって事じゃないかな。ゴブリンはほぼ例外なく死んだ冒険者から装備品を奪う。つまりこの辺りにミスリルの剣を持てる程の冒険者の遺体がある」

「剣以外の装備品もこの辺りのゴブリンが持っている可能性がある……って事か……」


 パーンさんが付け加えた。


「ミスリルの剣を持つ冒険者が命を落とす程の危険がこの辺りに潜んでいるって事でもあるよ」


 マリーさんがさらに補足した。


「確かに……」


 パーンさんが考え込んでいる。


「それならおそらくあそこだと思います。」


 僕は湖の対岸を指さした。


「どう言う事?」


 ラビィさんが聞いてきた。


「対岸のあの辺りに多数のゴブリンの反応があります。予想ですがダンジョンがあります。覆い隠されたような反応が多数あるので、地下にもまだ沢山いると思います」

「待ちなさいよ。対岸って1キロぐらい離れてない?わかる訳無いじゃん!」

「ラビィ、自分の物差しで人を測っちゃダメ。ヴァン君のお父さんは元Aランク冒険者のエドワード・スタリオンだよ。それぐらい出来ても不思議じゃない」


 リースさんがラビィさんをたしなめた。


「あんな位置にダンジョンがあるなんて聞いた事がない。そもそもこの辺りはただの通過点だ。街道からだいぶ離れているから誰もやって来ない。未踏のダンジョンの可能性がある……」


 パーンさんが呟いた。


「それに気付いたミスリルの剣を持てる程の冒険者が挑み、返り討ちにあった……」


 マリーさんが分析した。


「私たちで行ってみない?」


 ラビィさんが発言した。


「ダメだ!」

「ダメだよ!」

「ダメ!」


 青の団の三人の声が揃った。

 ラビィさんが悔しそうにしている。


「俺たちは討伐依頼を受けてリザリアへ向かっている。そんなに時間に余裕がある訳じゃない。それにこのまま挑むにしては準備不足だ。ラビィ、わかるだろ?」


 パーンさんがラビィさんをたしなめている。

 マリーさんも僕の方を見ている。

 マリーさんはちょっと行きたいみたいだ。


「マリーさん。行きませんよ。僕たちの目的はリザリアへ移動しながら青の団から旅の仕方を学ぶ事。ゴブリン退治じゃないです」

「だよね。でも誰かに発見されちゃうだろうな」


 残念そうだが納得してくれたようだ。


「ヴァン、この近くにゴブリンの反応はない?私の気配探知には色んな生き物が引っかかってゴブリンだけを探知出来ないから」


 ラビィさんがすがるような顔で僕に迫ってきた。


「ゴブリンはいますが、それより少し大きな魔獣の反応もあります。それほど危険な魔獣じゃないですが、今はもうここを離れてリザリアへ向かった方が良いと思います」

「何がいるの?その大きな魔獣が手に負える魔獣ならそのゴブリンだけ退治していかない?」


 ラビィさんが周りの賛同を得ようとしている。


「いるのはグリフォンです。それほど危険じゃないけど手数は多いので。あと、グリフォンは取れる物が多いので持って帰れない今討伐するのは勿体ないと思います」

「は??グリフォン?それはそれは……グリフォンに勝てるみたいな言い方だけど、勝てるつもりでいるの?」


 ラビィさんが妙な事を言い出した。


「グリフォンに勝てる……と言うか、普通に退治出来ると思いますが……」

「もういい、ラビィ、つまらない事を言ってないで街道に戻るぞ」


 僕たちはパーンさんを先頭に街道まで戻った。

 街道を少し進んでお昼を取る事になった。

 お昼休憩ポイントとしてよく利用される場所なのか他にも一組いた。


 僕は預かっていた荷物を取り出してみんなに渡した。

 みんな各々食事を取り始めた。

 僕とマリーさんも食事の用意を始めた。

 僕が火を起して、干し肉や乾燥野菜でスープを作った。

 それをマリーさんと分けて食べ始めた頃にマリーさんが聞いてきた。


「さっきグリフォンを退治出来るって言ってたけど……ホントなの?」

「グリフォン……そんな危険な魔獣のイメージがないので、もしかしたら僕の知ってるグリフォンは皆さんの考えてるグリフォンと違うのかも知れません」

「そうだね……グリフォンは普通の冒険者では倒せないよ。Cランク以上のパーティが何組か集まって合同の討伐戦をやるイメージ。グリフォンってそう言う魔獣だよ。次から私に先に教えて。じゃないとヴァン君が嘘つきみたいに見られちゃうから」

「すみません、軽率でした。次からそうしますね」


 その後、出発まで時間があったので剣を川で洗い流した。

 さすがにミスリル、ゴブリンの雑な使用に耐え刃こぼれも少ない。

 少し手入れをすれば申し分ない剣になるだろう。


 剣を洗っているともう一組の休憩中のグループの一人が声をかけてきた。


「やぁ、君、それミスリルじゃないか?どこで見つけたんだい?」

「これはさっきゴブリンが持ってたのを回収したんです」

「ゴブリン……?」


 その人は険しい顔になった。


「あなたは……?」

「すまない、名乗るのが遅れた。僕は閃光の討伐者でサブリーダーをやっているルード・ストラインだ。君は?」

「ヴァン・スタリオンと言います。パーティ名は自由の風と言います」

「自由の風は聞かないけど……スタリオン?エドワード・スタリオンの親族かい?」

「エドワード・スタリオンは父です。」

「そうなのか……スタリオンの名はあまり名乗らない方がいいかも知れないよ」

「お気遣いありがとうございます」

「それはそうと……ゴブリンから回収したと言ったね。もう少し詳しく聞かせてもらえないか?」


 その時パーンさんが声をかけてきた。


「ヴァン君、どうしたんだい?」


 僕が川から戻らないのを不審に思ってパーンさんが様子を見に来てくれたみたいだ。


「あなたは……ルードさん。そうか、向こうで休憩していたのは閃光の皆さんでしたか」

「パーンじゃないか。この彼と知り合いなのか?いや、彼がゴブリンからそのミスリルの剣を回収したと言っていたので、少し詳しく聞かせてもらえないかと思ってね」


 耳元でパーンさんが提案してきた。


「この情報はタダでやるには惜しい。取引を俺に任せてくれないか?」


 僕はよろしくお願いしますとお願いした。


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