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7.旅立ち

「ただいま!」


 家の中からマリーさんの声がしたので僕は家に入った。

 マリーさんは興奮気味だった。

 良い返事が貰えたんだろう。


「スタンが家にいなかったからギルドへ行ってみたの。そしたら食堂にみんな集まってて。明日私もヴァン君と一緒に行くと話したらみんな歓迎してくれてたよ。いよいよ冒険者デビューだねって!ヴァン君、明日からよろしくね!」

「こちらこそよろしくお願いします!」


 ザックさんがカバンを持って部屋に入ってきた。


「マリー、これを持っていけ。野宿の用意と食料は入れてある。容量は馬車半分。ヴァンに持たせた物よりだいぶ小さいが一人分の荷物には必要十分な容量のはずだ」


 そう言ってマリーさんにマジックバッグを渡していた。受け取ったマリーさんは感激していた。


「お父さん……大事にするよ。ありがとう!防具と剣は学校で使ってたのがあるからとりあえず大丈夫……案外あっさり用意が出来ちゃった……」

「冒険者証を常に首にかけておけよ。とても大切な事だからな」

「うん、わかってる……お父さん、行く事を許してくれてありがとう……必ず帰ってくるからね」

「当たり前だ。ヴァン、頼んだぞ」

「はい、絶対無事に連れて帰ります!」


 その後僕達はザックさんから冒険者の心得をしっかりと聞かされた。

 とにかく一番大切なのは初めての事を自分達だけでやらない。

 初めての事は報酬など度外視して経験者から学ぶ事。

 魔獣の情報などはしっかりギルドで確認してよく予習してから挑む事。


 その時マリーさんがパーティ名をどうするか聞いてきた。パーティ名なんてすぐには思いつかない……。


「イグニスさんもザックさんも僕は自由だと言いました。自由という言葉を使いたいなと思うんですが」

「良いと思うよ!私も自由って言葉大好き!自由の風なんてどう?自由にどこまででも行けそう!」

「良いですね!でも何々の団ってしなくても良いんですか?」

「パーティ名に特に決まりはない。個人の好きな名前で名乗れば良いんだ。今日聞いた閃光も蛇も本来は閃光の討伐者、双頭の蛇というパーティ名だ。閃光は総勢15名いるからパーティというよりクランに近い。逆に双頭の蛇は二人だけのパーティだ。人数もパーティ名もこれといって決まりはない」

「自由の風でいこうよ!私気に入っちゃった!」

「わかりました。じゃ自由の風でいきましょう!」

「じゃ明日俺がガストンに連絡しといてやる。リザリアに着いたらギルドへ移動の報告をしとくようにな」


 そんな事を話している間にいい時間になってきた。


「明日は早い。もう寝ろ」


 とザックさんが言ったので僕は寝床に入った。



 翌朝僕はまだ暗いうちに目が覚めた。

 いつも朝は早く起きていたけど、今日はいつもよりだいぶ早く目が覚めた。

 緊張しているんだと思う。

 布団を畳んで僕は裏庭に出た。

 今日から旅に出る。

 少しでも剣を振っておかないと不安だ。

 特に昨日買った剣はまだ振っていないので軽く振っておこうと思いマジックバッグから昨日買った剣を取り出した。

 木剣より少し重いけど違和感はない。

 振った感じもしっかりしていて何も問題なさそうだ。

 むしろ木剣より振り心地は良い!僕は夢中になって剣を振った。


 周りが明るくなって来たので僕は家に入った。

 ザックさんがもう起きていて声をかけてきた。


「ヴァン、早いな。もう剣を振っていたのか?」

「はい、今日から旅に出るとなると少し不安があって……じっとしてられなかったんです」

「ヴァン、昨日2階からお前の剣を見たが、よく振れている。なんの心配もない。自信を持って行け」

「はい!ありがとうございます!」

「だがマリーはまだ中途半端だ。駆け出しの冒険者そのものだ。お前ほど出来ると思わず、出来ない物として気にかけてやって欲しい」

「わかりました。精一杯頑張ります」


 その時、一瞬父さんの顔が頭に浮かんだ。

 父さんもパーティメンバーを守る為に精一杯やったに違いない。

 僕も精一杯やるつもりだ。

 その結果、父さんと同じ結果を踏んでしまったとしたら……。


「精一杯やったのか?」


 の問いに対して僕はなんと答えるのだろう……。


 その時マリーさんが起きてきた。


「お父さん、ヴァン君おはよ。いよいよだね!すぐご飯用意するから!」

「マリー、今日は父さんが用意しておいた。これからは自分で作らないといかんからな。早速食べよう」

「……お父さんのご飯久しぶりだね。お母さん亡くなった時私もルカ姉もまだ料理出来なくてずっとお父さん料理してくれてたね。懐かしいなぁ」

「さぁ、ヴァンも座れ」


 ザックさんとマリーさんはこの食事でしばらく一緒に食べる事はなくなる。

 一瞬一瞬を大切に食事の時間を過ごした。


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、出発の準備をしている時だった。

 外からスタンさんの声がした。


「おはようございます。用意出来ていますか?」

「スタン、迎えに来てくれたの?これから二人とも出る所だったんだ。ヴァン君ももう出れるよね?」

「はい、いつでも行けます!」

「じゃお父さん、行ってくるね」

「あぁ、気を付けてな。決して無理をせず、慎重に行動するんだぞ」

「うん、わかってる」

「ヴァン、頼んだぞ」

「はい、行ってきます!」


 僕とマリーさんはスタンさんと合流して集合場所へ向かった。

 集合場所にはすでにパーンさんともう一人女性が来ていた。

 僕はパーンさんと女性に声をかけた。


「おはようございます。今日からよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼む。こっちは白魔術士のリースだ。回復魔術を担当している」


 僕はリースさんに自己紹介をした。


「ヴァンです。今日からよろしくお願いします」

「リースです。私たち歳も近いんだからそんな畏まらなくても良いよ」

「ありがとうございます。そう言って貰えると助かります」


 そうしていたらもう一人が合流してきた。


「黒魔術師のラビィよ。攻撃魔術は私に任せて!」

「ヴァンです。今日からよろしくお願いします」

「よし、じゃみんな、ヴァン君に持ってもらう荷物を出してくれ」


 パーンさんがそう言うと、みんなが背中に背負っている大きなリュックや手に下げている大きな袋を出してきたので僕はマジックバッグに仕舞っていった。


「良いなぁマジックバッグ……私も欲しい……」


 リースさんが羨ましそうにこちらを見ている。

 やっぱりマジックバッグは貴重品なんだ。

 ラビィさんも僕のマジックバッグを見ながら言った。


「でも高いんだよねー。私も安いのないか知り合いに探してもらってるんだけど、安いのでも金貨50枚ぐらいはするみたい。Dランクの依頼やってる内はなかなか買えないよ」

「実は私もお父さんから貰ってきたんだ」


 マリーさんが自慢げに見せていた。


「えぇ!マリーも??親父さん二つもマジックバッグ持ってたんだ。親父さんって確か元Cランクだった?さすがだなぁ」


 スタンさんが驚いている。


「俺たちも早いとこ皆の荷物が収納出来るマジックバッグを買わないとな。当面の目標だな。開門したようだし、ヴァン君が収納し終わったら出発しよう」


 パーンさんの言葉で僕たちは出発する事にした。


 門で冒険者証を見せて何事もなく街を出る事が出来た。

 とりあえず僕の家がある方向へ向かう事になる。

 川沿いの道を歩きながらパーンさんが話しかけてきた。


「ヴァン君はどの程度剣が使えるんだい?」

「どの程度と聞かれてもなんて答えたらいいか……一通り出来るといった所でしょうか」

「すまない、聞き方がザックリし過ぎていたから回答もザックリした物になってしまったね。聞き方を変えるよ。魔獣と一対一でやり合った経験はあるかい?」

「あります。食料として良く狩っていたんで」

「なるほど、ホーンラビットとかかい?」

「ホーンラビットも狩りますし、ワーボアは美味しいので良く狩ってました」

「なるほど、ワーボアを一人で狩れるんだね。戦闘に関してはあまり心配なさそうだね」


 そう言ってパーンさんは先頭を歩くスタンさんの元へ行ってしまった。


 僕は街を出てから剣を腰に下げ、気配探知魔法を発動させている。

 臨戦態勢だ。

 出てから2時間程歩いた頃だろうか。

 マリーさんと雑談をしながら大きな湖がある辺りで気配探知に反応があった。


「パーンさん、湖の方に何かいます。たぶんゴブリンだと思います。こちらに気付いた素振りはないですが、このまま通り過ぎますか?」

「湖の方に?どうしてゴブリンがいる事がわかったんだい?」

「気配探知に知ってる反応があったので。この反応はゴブリンです」

「ちょっと、それ本当なの?湖まで500mは離れてるよ。それに気配探知で魔獣の種類を判別するなんて聞いた事ないんだけど」


 ラビィさんが食ってかかってきた……。


「よし、数は?ヴァン君の気配探知が正しいか近づいて確認してみよう」


 パーンさんがそう言ってゴブリンのいる方角を確認してきた。僕は気配のある方へ移動を開始した。


「数は三体です。もうすぐ見えてくると思います……ほら、あそこです」


 そう言って指差して見せた。

 パーンさんが目を細めて確認して言った。


「確かにゴブリンだ。三体いる……ヴァン君の剣が見たい。あれを討伐してみてもらえないか?」

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