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5.青の団

 そう言って僕をずいっと前に出した。


「ほう、冒険者になりてぇのか?ザックが連れてきたって事は……訳ありか?」

「大きな声じゃ言えねぇが……」


 そう言ってザックさんが強そうなおじさんに耳打ちをした……途端におじさんの顔が強張った。


「そうか……斬られたか……」


 父さんの事を伝えたんだとすぐわかった。


「よし、すぐ登録してやる。だが……名前はそのままで良いのか?スタリオンで登録すると……色々とつらい思いをするかも知れねぇが……」


 ザックさんとおじさんが僕を見てくる。

 でも答えは決まっている!


「はい、ヴァン・スタリオンでお願いします」

「覚悟は出来てるって目をしてるな。よし、ちょっと待ってろ。すぐに登録してやる」

「ヴァン、待ってる間にクエストを見に行くか。この街では受けねぇと思うが見方ぐらいは覚えておいて損はねぇ」

「はい、お願いします」


 僕たちは掲示板が立ち並ぶ場所へ戻ってきた。


 ザックさんがクエストを見ながら説明してくれた。

 つまりこうだ。

 クエストには種類がある。

 採取クエスト。捜索クエスト。討伐クエスト。

 大きく分けるとこの三つだ。

 採取は素材を取ってくるクエスト。素材に関する知識が要求される。

 

 捜索は行方不明者の捜索。

 捜索中に救援、救護に切り替わる事もある。

 アイテムなどの捜索もこのクエストに分類される。

 

 討伐は魔物の討伐だ。

 何を討伐せよ、何匹討伐せよという種類や討伐数の指定があったり、指定の場所に巣食う魔物を一掃せよというザックリした物もある。


 それらのクエストは難易度分けがされていて、冒険者ランクがそのクエストの難易度に合っていないと受ける事が出来ないという。

 冒険者ランクは皆一律Fランクからのスタートだという。


「ザックさんは冒険者なんですか?」

「一応な。若い頃は俺も冒険者として活動していた。今は身分証明代わりだけどな。当時のランクはCだ」

「父さんはどのランクだったんでしょう?」

「エドワードはAランクだったと聞いている。ある意味バケモンさ」

「Aランクってそんなに凄いんですか?」

「俺らみたいな普通の奴はCランクまで行ければ上出来。一部の突き抜けた奴がBまで。Aランクなんざ稀に見る超人だ。ちなみに今リステンにAランクはいない。Bまでだな」

「Aランクの上はないんですか?」

「無い。制度としてはAランクが最高ランクだ。だがある特殊な条件を満たせばSランクという称号を受ける事が出来るらしい。ただそれはあくまで称号で、ギルドのランクとは少し違うけどな」


 そうこうしているとさっきの強そうなおじさんに呼ばれたので受付に戻った。


「ほら、これが冒険者の身分証明だ。常に首に下げておくんだ。色んな所で提示を求められるから失くすなよ」


 チェーンにネームタグの様な物が付いていた。

 僕の名前と登録地、登録番号、ランクが表記されている。


「万が一、旅先で亡くなったとしても、その冒険者証を首に下げていればすぐに身元がわかり、登録地の支部へ連絡が入る様になっている。支部に死亡連絡が入ると、冒険者登録時に申告した住所へ死亡通知が届けられる」

「通知先の住所を申告するんですか?」

「あぁ、お前のはザックの住所を登録してある。それで良いんだな?ザック」

「あぁ、その為に来た様なもんだ」

「すみません、ご迷惑がかからない様に頑張ります」

「水くせぇ事言うな。俺はお前がこんなちぃせぇガキンチョの頃から知ってんだ」


 また親指と人差し指で丸を作っていた。

 そんなに小さくないと思うけど……。


 ギルドのおじさんが真剣な表情で僕に言った。


「ヴァン、もし旅先で死亡している者を発見した場合には、可能であれば冒険者証を回収してギルドへ届けてやって欲しい。どんな奴にも家族がいる。無事を祈る身内がいるもんだからな」

「なるほど……わかりました」


 ギルドのおじさんから聞いた話では、こう言った話はこれから冒険者を志す全ての者に話して聞かせているらしい。

 やはり冒険者とは危険と隣り合わせ、いつ死ぬかわからない。

 いつ遺体と対面するかわからない。

 死を初めに意識させる事で死なない様に行動する為の一助になると考えられているそうだ。


 ひとしきり説明が終わってからギルドのおじさんがこれからの事を聞いてきた。

 僕は手記を頼りに父さんがどう言う人だったのかを知る度に出る事を伝えた。


「そうか……オメェの親父の事で俺から言う事は何もない。それほど深く付き合いがあった訳じゃねぇからな。ただ、この先大変な道のりになる事は覚悟しておけ。お前の親父は悪名を轟かせてたんだ。その息子に食ってかかる奴もいるだろう。くれぐれも慎重にな」


 怖そうなおじさんだけどいい人だ……。


「で、最初の目的地はどこだ?」

「目的地はスーラです」

「いや、スーラは最終目的地だろう?どのルートで行くんだ?」

「ガストン、そこはまだ詰めてねぇんだ。俺が来た理由はその辺りを含めてお前に相談しようと思ってたんだ。上手く目的地が被る遠征組がいりゃ末席に加えて貰えねぇかと思ってよ。野宿の仕方や旅の基本が学べるだろ?」

「なるほど、そういう魂胆か……オメェらしい抜け目のねぇプランだな……」

「だろ?」

「だが……ヴァン、オメェ剣は使えるのか?」

「エドワードの仕込みだ。手合わせはしてねぇが剣どころか付与魔術まで使えるそうだ。剣自体の見立ても悪くねぇ。ラングんとこからこましな剣を選んできやがったからな。自分の身ぐらいは自分で守れるだろ。な?ヴァン」

「あのガラクタ屋から使える剣を自分で選んできたのか……やるじゃねぇか……俺の息子があそこで何本ゴミを掴まされたか……まぁそれならいい。自分の身が守れるなら同席するぐらい問題ねぇ。ちょっと待ってろ。明日出発組の様子を見てきてやる」


 そう言ってガストンさんは奥へはいっていった。

 ザックさんがこちらに向き直り真剣な表情を作った。


「いいか、ヴァン。明日ここを出発したらお前は一人だ。俺は一緒に行ってやれねぇからな。だけど良く覚えておけ。初めての事は決して一人でやろうとするな。必ず経験のある者と一緒に行動して、やり方を学ぶんだ」


 ザックさんが真剣な表情で続けた。


「この世には知らなければ食らっちまう魔獣の攻撃やダンジョンの罠が多くある。そういうのは初見殺しと言われ、駆け出し冒険者の命を多く奪っている。ある程度経験を積めば初見殺しを看破出来る様になってくるが、ひよっこのうちはそうはいかない」

「初見殺し……」


 思い当たる事が沢山ある。

 父さんと潜ったダンジョンでそう言う罠は沢山経験していた。


「いいか、同じ事を繰り返すがソロで冒険者をやろうとするな。いかに身体能力が優れていようと、いかに剣の腕が確かだろうと、簡単に命を持っていかれちまう瞬間があるんだ」


 命を持っていかれてしまう瞬間……父さんが斬られた瞬間が頭をよぎった。


「息の長い冒険者はそういう所を間違わねぇ。一人でやれると自分を過信しねぇ。明日お前は他の冒険者と一緒にここを旅立つ。先輩冒険者を良く観察してしっかり学ぶんだ」

「はい、ありがとうございます……全部一人でやろうと思っていました……ザックさんがいてくれて本当に良かったです」


 ザックさんがにっこり笑ってくれた。


「ザック、オメェもたまにはいい事言うじゃねぇか」


 途中からガストンさんも聞いてたみたいだ。


「ザックの言った通り、初めは必ず経験豊かなパーティに加えてもらうようにしろ。報酬は少ねぇし荷物持ちみたいな雑用をやらされるだろうが、得られる物も大きい。良い冒険者に当たると色々と教えてくれるだろう」


 そういうとガストンさんは話を切り替えた。


「話は変わるがスーラまでの道のりを考えると、真っ直ぐ突っ切る山越えルート、東へ大きく迂回する平地ルートがある。ザックはどっちを考えていた?」

「迂回ルートだ。山越えは魔物も強く危険も多い」

「俺も同意見だ。そう考えて迂回ルートを取る場合の最初の目的地、リザリアへ向かう遠征組がいないか調べた。結果……三組あった」


 ガストンさんはメモを見ながら続けた。


「ランクの高い順に……閃光、蛇、青だ」


 全然わからない……パーティの識別名だろうか?

 ザックさんがガストンさんに追加情報を求めた。


「閃光は論外だ。リステンの最高戦力じゃねぇか。ランクが高すぎる。蛇も確かCだろ?青はしらねぇな。どんな奴らだ?」

「青のランクはD、まだ若いが着実に成果を上げている。パーティメンバーの欠員も出ずに結成当初から同メンバーでやっている。周りの評判もいい。明日青が遠征組にいたのは神のお導きじゃないかと思った程だ」

「Dか。名は?」

「青の団、盗賊パーンがリーダー、戦士スタン、黒魔術士ラビィ、白魔術士リースの四人。スタンはオメェも知ってるだろ?」

「あぁ、近所のガキだ。確か娘の連れだった。そいつらにヴァンが同席してもいいか聞いてみるか」

「さっきパーンは食堂の方で見たからまだいるかも知れねぇ」

「よし、善は急げだ。ヴァン、行くぞ」

「はい、お願いします」


 僕達は食堂の方へ移動した。

 ザックさんがすぐに見つけたようで声を掛けてくれた。


「スタン!俺を知ってるか?」

「はい、マリーの親父さんですよね?」

「実はお前らに頼みがあるんだが……話を聞いて貰えるか?」

「聞くだけなら問題ないですよ」


 もう一人の男の人が答えた。

 この人がパーンさんだろう。


「すまない、実はここにいる……ヴァンって言うんだが、こいつが訳あってスーラまで旅に出る事になったんだ。だがこいつは旅に出た事がない。野宿の仕方もしらねぇんだ。お前らリザリアへ行くんだろ?そこまでの移動に同席させてやって貰えないか?何も世話をする必要はねぇ。こいつがお前らについて行く。お前らがやっている事を見て旅の仕方を覚えろと言ってある。寝る時だけは見張り番に組み込んで寝かせてやって欲しいんだが」

「なるほど。ヴァン君、君いくつだい?」

「はい、18です」

「18まで旅に出た経験がないのか?」

「ずっと家で父さんと暮らしていたから旅に出る機会がなかったんです」

「なるほど……わかりました。報酬はどうなりますか?」

「荷物持ちが出来る。マジックバッグを持たせる予定でいるからな」

「なるほど……どれぐらい持てますか?」

「馬車半分って所か。充分だと思うがどうだ?」

「わかりました。護衛はしませんよ、あくまで同行するだけです。それで良いんですね」

「あぁ、それで良い。ヴァン、話がまとまった。ちゃんと自己紹介しろ」

「はい、ヴァン・スタリオンと言います。明日からリザリアまでよろしくお願いします」

「スタリオン……?家名はスタリオンなんですか?あのスタリオン……?」


 青の四人が固まっている……。


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