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20/23

20.いよいよ

 僕は早めに起きた。

 今日は青の団がハーピー掃討戦に参加する日だ。

 出発前に激励しようと思い、少し早いが食堂へ向かった。


 食堂へ降りるとマリーさん以外みんな揃っていた。

 今日の作戦なんかを再確認しているようだ。


「おはようございます。いよいよですね」

「そうだな、合同の討伐戦自体は初めてなんだ。周りに迷惑をかけないように気を付けていかないとな」

「ヴァンも来なよ。もうDランクで参加資格もあるんだし」

「ラビィ……無茶言わないの。自由の風はこの依頼受諾してないんだから頑張っても報酬も出ないよ」

「ハーピー戦ならラビィさんの魔法が主力になりますね。ここ数日ですがゴーレム維持の為に魔力を練っていたから魔力が上がっていると思いますよ」

「そう!実感出来るぐらい上がってるの!ウチのゴーレムちゃんのおかげ!」

「ゴーレムは連れて行かずに一度素材に戻しておいた方が良いですよ。まだ実戦に投入出来る強度じゃないので」

「そうだね、私たちもそうしようと思ってたんだ。僅かでも想定外に魔力が取られると命に関わるからね」


 リースさんがそう答えた。


「帰ったらまたゴーレムちゃん復活させてね」

「実は家の物置にゴーレムの核が沢山あったので、青の団にもいくつかお分けしますよ」


 そう言ってパーンさんに赤、青、銀、金を二個づつ渡した。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ。これはヤバいやつだ。さすがに貰えない。金の核まであるじゃないか……」

「自由の風と青の団は運命共同体なので遠慮は無用です。すぐに自分でも手に入るようになるので」

「ヴァン。金の核私が持ってて良い?」


 ラビィさんが目をキラキラさせながら聞いてきた。


「良いと思います。金核は強い目に魔力を込める必要があるので、現状はラビィさんしかゴーレム化出来ないと思います。ただラビィさんマジックバッグ持ってないから落とさないか心配……」

「落とさないよ。ヴァンから貰った大切な物だもの……」


 ラビィさんが金核に頬ずりしている……。


「わかった……一旦預かっておくよ。使い方は学校で習ったから大丈夫だ。さぁみんな、そろそろ行くか」


 そう言って青の団は出発した。

 僕は食堂で朝食を食べながらマリーさんが降りてくるのを待った。

 この朝食を食べられるのも今日までだ。

 しっかり味わっておこう……。





 夜になり、自由の風と青の団がギルドの食堂に集まっていた。


「お疲れ様でした。討伐戦はどうでした?」

「あぁ、ハーピー自体は初めてじゃなかったが、あれだけの数を相手にするのは初めてだったので苦労したよ。後、他のパーティがすぐ近くで戦闘しているのも初めての経験だった。やっぱり気を使うね」

「ラビィが開幕で金核をゴーレム化させたもんだから妙に周りから注目されちゃったしね」

「金核のゴーレムちゃんとんでもなく強かったよ。スタンやパーンより強いんじゃない?」

「私も見たよ。金核のゴーレムとんでもなく強いよね!」


 マリーさんが激しく同意した。


「ヴァン君のうちに行くのはいつにする?私達は正直もう行けるけど」


 リースさんが聞いてきた。


「うちには食材がないので、食事が終わったら少し買い出しをしてから帰りましょう」


 その後食事を済ませて、買い出しも済ませた。


「準備が出来たのでテレポートします。みんな僕に触れて下さい……テレポート」


 僕たちは家の前にテレポートした。


「すごい!本当に一瞬で移動出来た!すご過ぎる!」


 ラビィさんがはしゃいでいるが気にせず、僕は家の鍵を隠し場所から取り、鍵を開けてみんなを家に案内した。


 六人でテーブルに座ろうとして椅子が足りない事に気づいた。

 テーブルには椅子が四脚しかなかったんだ。

 玄関出てすぐのウッドデッキから椅子を持ってきて六人が着席した。


 そこで僕はみんなに秘密厳守をお願いして父さんが管理していたダンジョンの事を話した。

 そこへ入って修行をして、来る竜討伐に備えたい事を話した。


「竜討伐ってどういう事だい?どこかで竜を討伐するのを目標にするのかい?」


 僕は今際の鏡の存在。その使い方、それを使って最終的にはリヴさんを救いに行きたい事を話した。


「私は行く!ヴァンのお母さんを救いに行く!」

「相手は竜。俺で役に立てるかわからないが、竜討伐に向けてダンジョンで修行をするのはとても良いプランだと思う」

「そんな魔道具があったなんて……私も役に立てるかどうかわからないけど、頑張ってみるよ」

「僕もダンジョンでの修行はすごく興味がある。力になれるかわからないけど、やれる所まではやってみるよ」


「みんな……ありがとうございます。さっきも言いましたが、過去に戻れるのは生涯で一度きり。その一度を僕の為に使わせてしまう事になってすみません……」

「俺たちみんなそんな魔道具がある事も知らなかったんだ。その事は気にしないでくれ」

「この家で生活しながら時々クエストをやって実力を確かめれば良いかなと思います。どうでしょうか?」

「良いと思うよ。クエストをやれば成長が確認できるもんね」


 リースさんが同意してくれた。


「そうと決まればこの家で生活出来るように準備を始めるか」

「とりあえずしばらくは寝袋で休んで下さい。順次人数分の生活用品を増やしていくので」

「そうだな、しばらくベッドはお預けだな」

「部屋はいくつあるの?」

「二階に四部屋、一階に父さんの書斎とダイニングキッチンと客間ですね」

「よし、とりあえず探検してみるか!」


 結果的に父さんの書斎が僕の部屋、一階の客間がマリーさん、二階の四部屋を青の団。

 一人一部屋割り振りが完了した。


「明日は朝からダンジョンを案内します。とりあえずは日帰りで行ってみましょう」

「あぁ、わかった。みんなも明日に備えて今日はもう休もう」


 そして夜は更けていった。



 翌日、僕は早く目が覚めた。

 父さんの書斎で眠ったのは初めてだった。

 父さんはここでどんな事を考えていたんだろう。


 家を出るとパーンさんとスタンさんが剣を振っていた。


「二人とも早いですね」

「ダンジョンへ入るのはやっぱり緊張してしまうよ。リステンにはダンジョンが無かったからあまり入った経験がないんだ」

「そうだよね。僕たちは基本リステンで活動していたからダンジョンの経験が少ない。緊張するよ」


「ダンジョンに入る前に、お二人の剣を見て良いですか?」


パーンさんとスタンさんが顔を見合わせた。


「俺からいこう。ヴァンと手合わせ……緊張するな」


僕は木剣をパーンさんに渡した。

パーンさんが打ち込んできた。

コンパクトで無駄のない振りだ。隙が少ない。時々トリッキーな動きが混ざり、上手く揺さぶってくる。

だが、トリッキーな動きの裏に垣間見える隙に木剣を滑り込ませた。


「さすがだな……俺ではまだまだ及ばない……」

「よし!次は僕だ!」


スタンさんが気合を入れて打ち込んできた。

すごく素直な剣だった。スタンさんの人となりを表しているような真っ直ぐな太刀筋だが、現状少し単調過ぎる気がする。ただ魔獣相手なら真っ直ぐであっても強い打ち込みが出来れば通用する。僕は強くスタンさんの剣を打ち返し、更なる強い打ち込みを促した。

ガツンガツンと幾度となく木剣が交差する。


「ヴァン君、すごい力だね!手が痺れてきたよ」


ガツンと最後に木剣が交差して、スタンさんの木剣が折れた。


「参った……こんなに強く何度も打ち込んだのは初めてだよ」


スタンさんが肩で息をしている。

二人の力は大体わかった。

ダンジョンでいうと五階ぐらいまでだろうか。

とりあえず今日は五階を目処に折り返そう。


その後女子達も起きてきたので皆で食事を作って食べた。


そして僕たちはダンジョンに向けて出発した。


「いよいよだね。ダンジョンまではどれぐらいあるの?」


ラビィさんがすぐ隣で話しかけてくる。


「すぐですよ。一時間もかかりません」

「リステンに行くのと同じぐらい?」

「そうですね。リステンより少し近いと思います」


話しているうちにダンジョンに到着した。

大木が立っている以外に見るべきものはない。


「ここ?」

「そうです。ここです」


そう言って僕は周囲に人の気配がない事を確認して隠蔽魔法を看破してみせた。

大木が消え、地面に木の蓋が現れた。


「意外と質素な入り口だね……」

「そうですか?僕は他のダンジョンを知らないので……」


僕は蓋を開け、梯子を降りた。

僕に続いて順に降りてくる。

全員が降りてきた所で僕は再度隠蔽魔法を施した。


「入ってすぐに隠蔽するの?」

「そうです。じゃないと間違えて入ってしまう人がいたら困るので」

「ここに私たちが入ってる事は誰も知らないんだね……救援は100%来ない。気を引き締めないと」


マリーさんが頬をピシャリと叩いた。



「さぁ、行きましょうか」


僕たちはダンジョンへ入っていった。


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