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4-10 a さいきんの学園もの

 怪我人たちが搬送され、アリスが血まみれの状態から綺麗になるのを待ってから、中庭に決闘の場が設けられた。

 体育着に着替えたアリスが校庭の一角にやってきてジュリアスと対峙した。

 クラスメイトだけでなく別のクラスの生徒たちも集まってきて二人を囲んだ。前のクラスで見かけた連中もいる。先生たちが青ざめて右往左往している。この人たちはアリスが王女だと知っているからなおさらパニックだ。しかも相手も公爵の息子だ。さらに王位継承権のある二人だ。

 「ジュリアス君、さすがにちょっと・・・」

 「先生がた。止めないでください。」ジュリアスは大げさに言った。「これは決闘です。私は女性に手を上げるのは本意ではありませんが、リデル君に彼らがどのような思いをしたかを思い知ってもらわないと気がすまない。リデル君にはきっちりこの場で自分のおこないを恥じてもらう。」

 「心配いらないわ。アリ、デル=ドッヂソンは売られた喧嘩は買いますの。」あっぶねぇ。いま、一瞬アリスって言うところだったろ。

 「しかし・・・」

 「「だまらっしゃい」」

 次世代の権力者候補TOP3のうち二人からすごまれ、先生はすごすごと引き下がった。

 グラディスが体育教師から渡された訓練用の剣をアリスに渡した。

 アリスは渡された剣をまじまじと眺めた。

 まっすぐに長い剣だが先は丸められ、刃はつぶされている。

 「剣の使い方は解っているんだろうね?」体育教師から剣を受け取ったジュリアスがアリスに尋ねた。

 「当然よ。」と、言いながらも剣を試し振りしているアリスの動向が若干おかしい。

 「どういう手を使ったか解らないが、君は何かしらで僕の仲間たちをあんな目に会わせた。だから、僕はきちんと正規の方法で君を倒させてもらう。君が女性であろうと、剣の使い方に自信が無かろうと。」

 この件に関しては、ジュリアスは一切悪くない・・・悪いのはシェリアにちょっかいを出した少年たちと、やりすぎたアリスだ。

 女性に対して決闘なんかしかけやがってと思わなくもないのだが、正直、アリスが負けるビジョンが見えない。逆に、仲間思いのジュリアスが痛めつけられるのが忍びないくらいだ。これ以上アリスに悪者になってほしくない。かといって、万一、ジュリアスがアリスよりも強くてアリスが痛い思いをするのも嫌だ。どうしたらいいんだ。

 「女性に痛い思いをさせるつもりは無い。君にはとっとと負けを認めてもらい、僕の仲間たちに謝罪していただく。」

よかった。

 ジュリアスにアリスを決闘で痛めつけるという意思は無いようだ。さすが王位継承権を持つような人間は考え方も高貴だ。

 「嫌よ。」

 「もし僕が負けたら・・・えっ?」

 うぉい!

 予想外のアリスの拒絶にジュリアスが本気で狼狽している。

 「だって、私、悪いことしてないもん。」

 ふっざけんな。子供かっ。

 いや、子供だけれど。幼児か?

 それにお前、いくらなんでもやりすぎてんだよ!

 今解った。

 オリヴァがアリスを学校に行かせたかった本当の理由。

 アリスのこういうところだ。

 「あなたは仲間の仕返しに私をボコボコにすればいいわ。私はあいつらの親玉のあなたをボコボコにする。」

 考え方が何一つ高貴じゃないっ!!

 「や、野蛮な。」ジュリアスが本気で呆れた顔をする。「良い。ならば君が謝りたくなるまで続けよう。」

 ウィンゼル卿をヘラクレスのところに移動させる。ヘラクレスはウィンゼル卿が寄って来たのに気づくと肩に乗せて、決闘の見やすいところまで移動した。

 「んー。なんか面白いことになってますねぇ。」

 おま、護衛、止めろし!それとお前今までどこ行ってたの???

 ジュリアスがフェンシングの時にやるようなポーズでアリスに向けて剣を向け、準備が整ったことをアピールした。

 アリスもジュリアスが構えたのを見て、見よう見まねで同じように構えた。

 ・・・アリス、剣使ったことないだろ。

 ジュリアスも気づいたらしく、右の口角がすこし上がった。

 二人が構え、場が静まり返った。

 この段になって先生たちが号令をかけるのをためらい始めた。目線を飛ばし合って「お前が始めろよ。」と号令係を押し付け合っているようだ。いや、決めとけよ。

 「はじめっ!!」日和始めた先生たちを差し置いて、ヘラクレスが大声で号令をかけた。ウィンゼルがびっくりしてヘラクレスの肩のあたりを行ったり来たりする。

 「さあ、君か・・・」

 ジュリアスがにやりと笑ってなんか言いかけたのを無視して、アリスがしょっぱなから動いた、剣を大きく振りかぶるとジュリアスにめがけて突進した。

 その動きだとさっきのフェンシングの構えが台無しだよ?

 ジュリアスは余裕の表情、素早い反応で剣を突き出した。

 が、それを身をよじっただけでアリスがかわす。

 二人とも前に出たので、一瞬にしてアリスの届く間合いになった。むしろ近すぎるか。

 アリスが剣というよりは斧を振るうかのようにジュリアスに剣をたたき込んだ。

 「うぉっと!」先ほどの攻撃で突き出されていたはずの剣が、ジュリアスの身体寸前でアリスの剣を阻んだ。

 ジュリアスがその瞬間手首をひねり返してアリスの剣を弾き飛ばそうとする。

 「あぁい。」剣を持って行かれそうになったアリスが、野獣のような吠え声を上げながら、左手を添えて大リーグスラッガーのフルスイングのごとく力任せに剣を振り切った。

 「な!?」ジュリアスの剣が跳ね上がる。剣を持ったままで万歳をしているジュリアスだったが、アリスのほうもフルスイング終わりで攻撃が少し遅れた。

 アリスはバックハンドでジュリアスに思いっきり剣をたたき込んだ。

 しかしジュリアスすんでのところで、後ろに飛びのきながら剣で防御する。アリスの全力の一撃が大きな音を立ててジュリアスの剣をはじく。

 再び、体勢を崩されるジュリアス。

 今度はアリスは体勢を崩していない。すかさずコンパクトな連撃がアリスから飛ぶ。

 ジュリアスは再びバックステップしながらかろうじて剣で受けた。

 が、アリスの攻撃は終わらない。ジュリアスに間合いをとることをゆるさない。二、三、四撃とジュリアスを追いつめていく。

 「ちょっちょっ!」かろうじて後ろに飛びのきながらアリスの攻撃をぎりぎり受け止めているジュリアス。

 二人が観客のところまでものすごい勢いで突っ込んできたので、その場の生徒たちが悲鳴を上げながら逃げ出した。

 「!」

 突然、アリスがのけぞって後ろに下がった。

 しりもちをつく寸前だったジュリアスが鋭い突きを繰り出していたのだ。

 大きく後ろに飛びのいたアリスが体勢を立て直す。

 二人の間に間合いが生まれた。

 「双方、中へ!」ヘラクレスが叫んだ。

 予想外のハイレベルな応酬に、ギャラリーからどよめきが起こった。

 「嘘だろ?」「あの子なんなの?」驚きの声が各所から聞こえた。

 二人が中央に歩み寄る。

 「あれをかわすのか・・・。」ジュリアスがつぶやく。

 「剣が長すぎる。」アリスも苛立った様子でつぶやく。

 二人は元の位置に戻ると再び剣を構えた。

 「はじめっ!」

 合図とともに、攻撃が繰り出された。今度は二人ともだ。二人の間で白刃がぶつかり合い火花を散らす。

 火花ってほんとに散るんだ。

 これ、頭に当たったら死なんか?

 今度はジュリアスも防戦一方ではない。アリスの攻撃を受け、返す刀でアリスを攻撃する。アリスもジュリアスの攻撃をいなし、鋭い攻撃を仕掛ける。

 アリスとジュリアスの一進一退の攻防が始まった。

 「へえ、やるもんだねぇ、」ヘラクレスが面白そうに呟いた。「彼。」

 ヘラクレスの言葉通り、アリスが押され始めた。しばらく応酬が続いたせいで疲れてきたのか、アリスが剣をかわす動作が大きくなってきた気がする。一度などはアリスは地面を転がって避けなければならなかった。

 ジュリアス→アリス→ジュリアス→アリスと交互に進んでいた攻撃のターンも、ジュリアス→ジュリアス→アリス→ジュリアスと、ジュリアスが連続で仕掛ける回数が増えてきている。

 ジュリアスの攻撃は突きばかりだ。ずっとフェンシングのようにアリスを突いている。

 最初こそ、アリスはかわしていたが、今は剣ではじくのがほとんどだ。結果、アリスが間合いを詰められない。

 一方でアリスの攻撃は精彩を欠いていた。

 それともジュリアスが見切っているのだろうか。ジュリアスはアリスとは逆に、最初こそ剣で受けていたのが、アリスの攻撃をかわし始めた。

 ジュリアスの剣技がアリスを追いつめだした。いまやジュリアスの攻撃ばかりが続きアリスにはほとんど手番が回ってこない。

 「どうだっ。」ジュリアスのほうも完全に余裕という訳ではないようだ。オールバックの彼のおでこから大量の汗が垂れてきている。

 一方のアリスも汗で髪が服が濡れて張り付いてしまっている。

 「ぐぬぬ。」アリスが少しずつ後ろに下がり始めた。

 とアリスがジュリアスの攻撃を強くはじくと、無理やりに前に踏み出して剣を横に薙いだ。

 ジュリアスが華麗に後ろにかわす。・・・と、アリスが剣戟そのままの勢いでジュリアスの顔に剣を投げつけた

 間合いの外に回避したつもりのジュリアスは急に顔面目掛けて剣が飛んできたので、慌てて自分の剣で防御した。

 その瞬間、間合いを詰めたアリスが、防御のために上がった彼の肘を下から掌底のアッパーではじき上げた。剣を持った右手が跳ね上げられ、がら空きになったジュリアスの顔面目掛けてパンチを繰り出そうとするアリス。

 驚愕の表情のジュリアスが慌てて身をよじりながら、剣を持っていない左手で顔をガードする。

 その瞬間、アリスの膝蹴りがジュリアスの金的に決まった。

 「おほう!」悶絶するジュリアス。

 観衆が突然のアリスの反則攻撃に水を打ったように沈黙した。

 「どうだ!!」散々攻められてうっぷんがたまっていたアリスが勝利の雄たけびを上げ、うずくまるジュリアスを見下ろした。

 「ちょ、ダメです。ダメです。王j・・・リデルさん。剣で。剣で。反則です。」先生が慌てて飛んできた。

 「何でよ?」

 「決闘で金的はNGです。」

 「そうなの?じゃあ、やり直しましょう。」アリスが構えなおした。

 「いあ、ぢょっど・・むり・・・」ジュアリアスが股間を押さえてうずくまったまま答えた。

 結局、決闘はジュリアスの回復と、アリスが剣の勝負のルールを憶えるのを待つということで、次週に持ち越しとなった。

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