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4-9 b さいきんの学園もの

 ・・・・アレ?

 ウィンゼル??

 なんで居るの??



 慌ててアリスに視点を移す。

 はたして、アリスは学校の校舎裏に居た。

 そして、目の前には血まみれでうずくまる少年たちがいた。

 その前で仁王立ちするアリス。こぶしに何かべっとりとしたものを感じた。視界に入らなくても分かる。

 血だ。

 彼らの。

 そこかしこに血が飛び散っている。

 エドワルドとクリスティンはしゃくりあげ、座ったままずるずると後ずさりをしている。立てないのだ。

 アリスはそうはさせるものかと後ずさって逃げようとする少年たちに歩み寄っていく。

 アリスの横でうつぶせに倒れていたゲオルグがフラフラと立ち上がった。顔中が血まみれだ。鼻血を出してからも執拗に殴り続けられたのだろうか。顔中が青黒く腫れ、顎から地面に赤いものがしたたり落ちている。

 ゲオルグはフラフラとした足取りでアリスに近寄っていく。

 「ああああ」叫び声だかうなり声だかわからない声をあげてゲオルグがアリスに殴り掛かった。完全なテレフォンパンチだ。アリスがそんな大振りのパンチを避けられないはずがない。ましてや、ゲオルグはダメージでフラフラだ。

 アリスは彼のパンチの軌道の左側に身体をひねってかわすと、右こぶしを腰よりも下に大きく振りかぶり、捻転した力を解放してゲオルグの顎をスマッシュした。

 パンと、小気味の良い渇いた音がしてゲオルグの口から大量の血があふれ出し、ゲオルグが顎を抑えてのたうち回った。大量の血がゲオルグの口から吐き出された。

 「あが、、あががが。」ゲオルグ口から洩れるのはもはや悲鳴ですらない。

 やばい。やばい。やばい。やばい!!

 このままじゃ殺してしまう!!


 慌ててウィンゼル卿に戻る。

 アリスの元へ向かうんだ!

 ウィンゼル卿を慌てて走らせる。

 待て、ダメだ。ウィンゼルじゃ止められない。

 誰かを連れて行かないとダメだ!

 突然走り出したウィンゼル卿に驚く生徒たちは無視して、ウィンゼル卿をシェリアのもとに戻す。

 ウィンゼル卿はシェリアの前に戻ってくると、ピョンピョン、ぐるぐると慌ただしく動き回った。

 「・・・どうしたの?」シェリアがウィンゼルのただならぬ様子に顔を上げた。

 頼む、お願いだ、通じてくれ!ついてきてくれ!!

 「リデルちゃんに何かあったの?」

 そう!そうだ!!

 ウィンゼル卿を教室の外へ走らせ、教室の入り口でシェリアを振り返る。

 頼む!

 シェリアはどうしたものかと一瞬迷ったようだったが、破れた服のままでウィンゼル卿の後を追ってきた。

 よし!

 ウィンゼル卿をアリスのもとへ走らせる。

 「ちょっと、シェリアさん!?」突如ウィンゼル卿を追いかけて走り出したシェリアにアピスが驚いて声をあげた。


 アピスの声を背中に、ウィンゼル卿を追いかけてきたシェリアが見たのは凄惨な現場だった。

 さっきまで、のたうち回っていたゲオルグはもう動いていない。うつ伏せに倒れた顔の下に大きな血だまりができている。アルベルトと、さっきまでは動いていたエドワルドとクリスティンも済んでしまった。4人ともピクリともしない。

 死んで、無い、よな・・・。

 アリスは意識がほとんどないアンドリューの胸倉をつかんで今まさに殴りかかろうとしているところだった。

 「助けてください・・・助けてください・・・」アンドリューが小さな声で呟いている。

 ウィンゼル目線でアリスを見て分かった。アリスは完全に我を忘れている。目が完全にイってしまっていて、正気かどうかも怪しい。

 「リデルちゃん、それ以上いけない!」シェリアがアリスの異様な様子に叫んだ。

 アリスがピクリと反応した。

 「ダメよ、シェリア。シェリアを傷つけるような奴を私は許してはおけない。」

 「止めて!」シェリアが叫びぼろぼろと泣き出した。「私大丈夫だから。大丈夫だから…」

 シェリアを追いかけてきた他の生徒たちと、生徒たちの大移動に異常を察した先生たちが遅れて駆けつけてきた。

 誰かが目の前の凄惨な光景に悲鳴を上げた。

 アリスはぐったりとしたアンドリューの胸倉をつかみながら、血まみれのこぶしを握り締めた。

 「助けてください・・・助けてください・・・助けてください・・・」アンドリューはもはや謝っているのではない。ただ、繰り返しているのだ。

 「リデルちゃん!」

 アリスが一瞬シェリアを見て、そしてアンドリューに向き直った。アリスが握り込んだこぶしをゆっくりと振りかぶった。

 ダメだ!アリス!!

 もう十分だろ!

 「そこまでです。」落ち着いた声が後ろから響いた。ウィンゼル卿が振り返ると、グラディスが居た。

 アリスがハッとして振り返った。

 「そこまでです。」

 「でも、でも、、」

 「大丈夫です。シェリア様は大丈夫です。」グラディスがアリスに近づいて行く。

 「私、また、守れなかった。」

 「シェリア様は元気です。そこまでひどいことをされたわけでもないんですよ。ね?」

 アリスがじっとグラディスを見つめた。

 グラディスはアリスに近づいていき、ぎゅっと抱きしめた

 「大丈夫です。シェリア様も。私も。ね?」

 アリスが握っていたこぶしをようやく緩めた。

 そうか。

 もしかして、グラディスのことと重なったのか。

 襟首を解放されたアンドリューが前のめりに崩れ落ちた。

 血まみれで倒れている少年たちの元に先生や生徒たちが慌てて駆け寄る。

 アリスは脱力したままでグラディスに抱きしめられていた。

 が、しばらくしてからグラディスの手を振りほどくと、「帰る。」と言ってシェリアやほかのみんなを突っ切るようにして校舎の入り口のほうに歩きだした。

 「リデルちゃん・・・」シェリアがおびえたような目でアリスを見た。

 「ごめん。びっくりさせちゃって。」すれ違いざまにアリスが言った。

 「・・・・」シェリアは言葉を返さない。返す言葉が見つからないのだろう。

 血みどろのアリスは少し悲しそうに微笑むと、怯えてアリスから距離を取った生徒たちの間を、とぼとぼと、いままで見たことのない寂しそうな足取りで進んで行った。


 「ちょっと、待て!!」


 アリスの後ろから声が上げられた。

 「大事な仲間たちにこんなことをされて黙って帰すわけにはいかない!」

 ジュリアスだった。

 「先に私の友人にひどいことをしたのはそっちでしょう。」アリスが低い声で抑揚無く言った。まだ、アリスの腹の中では治まりきれないほどの怒りが渦巻いているに違いない。

 「そうだとしても、これはやりすぎだ。やるにしてもこんな下品なやり方ではなくきちんとしたやり方があったはずだ!」

 「じゃあ、どうすればよかったってのよ。」アリスはジュリアスを冷ややかに睨みつけた。

 「決闘だ!」ジュリアスが叫んだ。「ジュリアス=ベルマリアはリデル=ドッヂソンに決闘を申し込む!」

 「ちょっと、あなた女性に・・・」アピスが制止しようとジュリアスに手を伸ばした。

 「いいわよ。」

 「リデルさんっ!?」アピスが驚いた顔でアリスを振り返った。


 ああ、ますますたいへんなことに・・・

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